胃腸にやさしい食べ物とは?胃の調子が悪い、食欲不振時におすすめの食べ物を紹介

胃腸にやさしい食べ物とは?胃の調子が悪い、食欲不振時におすすめの食べ物を紹介

胃腸の調子があまり良くないとき、胃腸にやさしい食べ物を摂りたいですよね。胃は食べた物を消化してくれる最初の内臓。胃液を混ぜてやわらかくしてから、十二指腸へと送り出しています。また、胃液の主成分である胃酸を分泌して食べ物と一緒に入ってくるウイルスや細菌の増殖を抑えたり、殺菌したりします。そのような胃の働きのどこかがスムーズにいかないと、胃痛や胃もたれ、胸やけ、食欲不振などが生じたり、消化不良となってしまうことも...。


ここでは、胃腸にやさしい食べ物はもちろん、胃腸にやさしい食事の方法や生活習慣をご紹介します。なるべく胃腸の負担を軽くして、健康的な生活を取り戻しましょう。

桒原 晶子 先生

監修

桒原 晶子 先生 (大阪公立大学大学院 生活科学研究科 食栄養学分野 教授、管理栄養士、日本ビタミン学会 トピックス等担当委員、「日本人の食事摂取基準(2025 年版)」策定検討会 ワーキンググループ 構成員)

胃腸にやさしい食べ物とは?

胃腸にやさしい食べ物とは、胃腸の消化活動を妨げたり、負担を増やしにくい食べ物のことです。

胃腸の調子があまり良くないときには、胃の中にとどまる時間が短く、効率良く消化ができて、胃壁(胃の粘膜)をあまり刺激しない「胃にやさしい食事」を心がけたいですよね。そのためには、どんな物を食べるかということとともに、どのように食べるかも大切なポイント。食べ物(食材)に気をつけるだけでなく調理方法や食事を取る時間帯、食べる量にも気を配りたいものです。

まずは、どのような食べ物を食べたら良いのか、みていきましょう。

胃への刺激が少ない食べ物

食品の中では、アルコールやコーヒー、炭酸飲料、香辛料、味の濃い(辛い、甘い、塩辛い、酸っぱい)食べ物などは刺激が強い食べ物として知られていて、これらに該当しない物は、基本的には胃にやさしい食べ物と言えます。

一方、食品ではなく栄養素の面からみた場合、胃に長時間滞留しやすい脂質やたんぱく質を多く含む食品は、胃への負担が大きいと言われています。この他、同じ食品でも、冷たすぎる場合や熱すぎる場合も、胃への刺激が強くなりやすいようです。
なお、「胃の調子が悪いというわけではないが、なんとなく食欲が出ない」というときには、精神的な要素も考えられ、リラックス効果や胃酸分泌刺激作用のあるアルコールを少量、食前に飲んだり、香辛料などを使って“味変”したりすることで、食欲が高まることがあります。

脂質が少ない食べ物

脂質が少ない食べ物は、比較的消化がしやすいため、胃にやさしい食べ物と言えるでしょう。

エネルギー源となり得る栄養素として、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素(エネルギー産生栄養素、または主要栄養素)があります。これらは消化にかかる時間が異なります。最も消化が速いのは炭水化物で、次いでたんぱく質、そして最も消化に時間がかかるのが脂質です。そのため、脂質の多い食品は胃に長時間とどまりやすく、胃に負担をかけやすいと言えます。脂質の多い食品とは、例えば脂身の多い肉類や油脂類などです。

反対に、脂質が少ない食べ物は消化が良く、胃へかける負担を軽くすることができると考えられます。なお、パンは小麦を主原料とした炭水化物食品のため、基本的には胃にやさしい食べ物と言えるのですが、クロワッサンや菓子パンは油脂が多く含まれているので、注意が必要です。

脂質の中でもマヨネーズやバターなどの乳化された油脂は消化・吸収されやすいため、胃腸の調子が悪い場合でも少量の使用であれば問題ありません。

食物繊維が少ない、または調理法を工夫した食べ物

食物繊維とは、「ヒトの消化酵素で分解されない食物中の難消化性成分の総体」のことを指します。すなわち消化・吸収がされない栄養素であるため、この食物繊維が少ない食べ物は、胃腸にやさしい食べ物と言えます。

食物繊維は、水溶性と不溶性の大きく2つに分けられ、水溶性食物繊維は、糖の消化吸収を緩やかにして、血糖値の急な上昇を抑えたり、胆汁酸の再吸収を抑えてコレステロールの産生を低下させます。また、胃腸粘膜の保護や空腹感を抑える作用もあります。不溶性食物繊維は、保水性が高いため、便量の増加や腸のぜん動運動(腸の内容物を先へ先へと運ぶための運動)の促進、脂肪や胆汁酸等の吸着・排出作用があります。

胃腸の調子が悪いときには、腸管に刺激を与えやすい不溶性食物繊維を控えるようにします。
水溶性食物繊維の多い食品の特徴は、煮崩れしやすくスジの少ない物です(例:人参、大根、白菜、ホウレンソウ、ジャガイモ、りんご、ももなど)。一方、不溶性食物繊維の多い食品は、スジが残りやすい食品(にら、レンコン、たけのこ、きのこ、海藻類、パイナップル等)であり、なかでもこんにゃくは、特に消化されにくいため、胃の調子によっては避けたほうが無難です。

野菜などを生で食べる場合、食物繊維がそのままの形で残っているために、胃に負担がかかりやすいという点に注意が必要です。対策として、茹でるなど熱を加える調理の他、生で食べる場合は細かく切り刻んだりして食べると良いでしょう。

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胃腸の調子が悪いときに避けるべき食べ物

「胃腸の調子が悪いときに避けるべき食べ物」とは、先ほど解説した「胃腸にやさしい食べ物」とは反対の特徴がある食べ物です。
栄養素としては
・脂質や食物繊維の多い食べ物
食品としては
・味が濃くて刺激の強い物やアルコール、香辛料
などが該当します。

なお、口どけの良いアイスクリームは食欲がないときにも食べやすい物ですが、脂質が多かったり冷たかったりするために胃腸の負担を強めてしまうこともあるので、注意しましょう。

胃にやさしい食材の具体例

ここでは、胃にやさしい食材の中で、コンビニエンスストアなどでも入手しやすい物を中心に、主食、主菜、副菜に分けていくつか紹介します。

主食

主食には、白米やうどん、白いパンなどが良いでしょう。これらは主に炭水化物を含む食品で、たんぱく質も適度に含まれています。特に白米を使ったおかゆはやわらかく消化に良いためおすすめです。
ただし、食物繊維を多く含んでいる精製度の低い米(例えば玄米)やパン(全粒パン)は、弱った胃にはあまり積極的に摂らないほうが良いでしょう。また、米や麺であっても、油脂類を多く含んでいるラーメン、チャーハンなどは、控えることをおすすめします。

主菜

主菜に肉を使うときには、脂肪分が少ない部位を選びましょう。鶏であればささみや鶏むね肉、または皮以外、牛や豚ならヒレやモモなどです。
魚は脂肪分の少ない白身魚のほうが、消化には良いと言えます。胃の症状に影響がないのなら、赤身の魚や青魚も食べて構いません。一方、イカやタコは消化に負担がかかるので、胃のためには避けたい食材です。
卵は生より半熟のほうが、消化が良くなります。一方、しっかり火を通したゆで卵、煮卵は、生よりもかえって消化に時間がかかってしまうため、注意してください。

副菜

大豆製品は良質なたんぱく源となります。ただし、豆類には食物繊維が多く含まれるため、豆腐や納豆など加工され食物繊維が少なめの食材を摂取できると良いでしょう。また、油揚げは脂質が含まれるため、摂りすぎると消化に負担がかかってしまいます。
乳製品は胃酸を中和するように働くと考えられています。また、脂肪分が多いものの、他の食品の脂肪ほどには消化の負担にならないためおすすめです。

食欲不振時にはビタミンやミネラルの不足に注意

胃の不調のために食事ができなかったり、食欲がなく食べる量が少ない場合、微量栄養素の不足に注意が必要になります。また、煮炊きすると特に微量栄養素の水溶性ビタミンが流出しやすく、脂質摂取が少ないと脂溶性ビタミンの吸収も低下しやすくなります。微量栄養素とは、ビタミンやミネラルのことです。これらの栄養素は、「胃にやさしい食べ物とは?」の項目で解説した三大栄養素とは異なり、エネルギー源として利用はされないのですが、体の調子を整えたり、三大栄養素(特に炭水化物)からのエネルギー産生効率を維持したり、骨などを構成する材料として使われたりする、欠かせない栄養素です。ビタミンEやビタミンCなど、胃粘膜の修復や潰瘍の予防にもビタミンは役立ちます。

胃の調子が悪くて食べる量を減らしたときや、食欲がないときには、微量栄養素が不足しないように、栄養ドリンクやビタミン剤、健康食品などで栄養補給するのも一手となり得ます。

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胃腸にやさしい調理方法のポイント

調理法の工夫

野菜は細かく切り、肉は叩いてから調理する

食物繊維の多い野菜は、細かく切ってから調理しましょう。包丁を入れる際には、繊維の方向に対して直角に入れるようにすると良いでしょう。
また、脂身が少なくて硬い肉は、包丁の背や肉叩きを使って叩いてから調理することで、やわらかくすることができます。

生でなく火を通す

多くの食材は、煮る、茹でるなど、水分を加えて火を通すことで、やわらかくなり消化しやすくなります。胃が弱っているときには食あたりにも注意が必要ですが、火を通すことは、食あたり防止にもつながります。
ただし、肉や魚は、火を加えすぎると硬くなるので、適度に加減してください。また、水分を加えないで火を加える、焼き物や炒め物などの料理も、硬くなってしまうことが多いです。その点でも煮物のほうが良く、さらに圧力鍋を使って煮ると、よりやわらかくすることも可能です。

酢や果物、塩麹などを利用する

肉は酸性にするとやわらかくなるので、煮物や漬けだれに酢や炭酸水を加えると良いでしょう。また、パイナップルやりんご、なし、キウイ、たまねぎ、大根などは、そのままの状態でたくさん食べると食物繊維が胃の負担となりますが、これらに含まれている酵素は、肉のたんぱく質を分解してやわらかくする働きがあります。そのため、これらの野菜や果物をすり下ろした物に、肉をくぐらせてから調理すると、やわらかく仕上げるのに役立ちます。

その他にも塩麹を使うことで、塩麹に含まれている酵素が肉や魚のたんぱく質を分解して、食材をやわらかくしてくれます。この方法には、うま味をアップさせ、料理にこくや深みも生まれるというメリットもあります。食品の重量の10%を目安に、塗ったり漬けだれに加えたりすると良いと言われています。

胃腸の不調を起こさないために!心がけたい生活習慣

健康的で胃にやさしい食生活

腹八分。よく噛んで、ゆっくりと味わう

食べすぎ飲みすぎは、当然のように胃の負担が大きくなります。腹八分目を心がけましょう。
また、食べ始めてから満腹感が生じるには一定の時間がかかるため、急いで食べると満腹を感じる前に、食べすぎてしまいやすいものです。一口ごとに箸をおくくらいの感覚で、よく噛んで味わいながらゆっくり食べる習慣を心がけましょう。ゆっくり食べることで胃粘膜の血流が良くなり、消化にも良い影響が期待できます。

夕食は早めの時間帯に食べる

食べた物が胃の中に長時間残っていると、胃の負担が増えることは既に解説した通りです。通常、食べ物の消化には2~3時間が必要です。夕食を取る時間帯が遅いと、食後まだ胃に食べた物が残っている状態で寝ることになるため、食べた物が消化できず滞った状態が、睡眠中、長く続くことになってしまいます。

食欲がない場合は分割食を試す

食欲がなく、十分食べられないというときは、1回に食べる量を減らし、その分、食べる回数を増やすようにしましょう。

食事に適した雰囲気を演出する

料理をおいしくいただくには、食事の雰囲気も大切。落ち着いた音楽をかけたり、明るい色のテーブルクロスを敷いたり、おしゃれな食器を使ってみたりしてはいかがでしょうか。
なお、飲みすぎるのは良くないものの、少量であれば食前にアルコールを飲むことで、胃の働きが刺激されて食欲が増すことがあり、また食事の雰囲気も楽しくなると考えられます。

運動、快眠

運動は適切な食事と並んで、健康維持のためのベースと言うべき生活習慣です。さまざまな病気のリスクを押し下げるように働き、また病気を発病後の治療にも役立ち、さらにストレス解消にもなります。健康のための運動は、長く続けられることがポイント。あまり負荷が強くなく、いつでもどこでも1人でもできる運動がおすすめで、例えばウォーキングなどが良いでしょう。
また睡眠も、食事、運動と並ぶ健康維持のためのベースとなる要素で、ストレス解消のためにも重要です。毎日、気持ち良く朝を迎えられるように、睡眠環境を整えましょう。

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ストレス解消

「ストレスで胃が痛む」とよく言われるように、そのような経験をされた方も少なくないことでしょう。実際には、胃痛はさまざまな原因が相互に作用して起こるものですから、安易に「ストレスのせい」と決めつけてしまうのは要注意。とはいえ、ストレスの影響で自律神経が乱れて胃の働きや血流が悪くなったりして、胃痛に関係してくる可能性のあることが知られています。
現代社会で全くストレスを感じずに生きていくことは、難しいかもしれません。それでも、できるだけストレスをためこまないためのテクニックを探して身に付け、胃にやさしい生活を目指しましょう。

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禁煙

タバコは胃の粘膜の血流を低下させるとともに、胃酸の分泌を増やすような作用もあるため、胃の調子が良くないときに吸うと、ますます調子が悪くなってしまいます。胃のためのみならず、全身の健康のためにも、ふだんから禁煙を心がけましょう。

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胃にやさしい食べ物を意識して、健康でおいしい食生活を続けましょう

食べた物を最初に消化してくれる胃は、食生活の影響を直接的に受ける内臓と言えます。食べすぎたり飲みすぎたりしたら、当然、胃の仕事量は増えて負担も高まります。かといって、「胃のために」と単に食べる量を減らしたのでは、健康維持に必要な栄養素が不足してしまう場合も。本記事で紹介した内容を参考にぜひ、胃をいたわりながら、おいしく健康的な食生活を続けてください。胃の不調が食事のケアだけでは良くならない場合、市販薬の活用も検討してみるのも良いでしょう。
それでも胃の不調が続くような場合、ひょっとしたら何かしらの病気が隠れているのかもしれません。一度しっかり診察を受けるようにしましょう。

参考文献

  • 文光堂「臨床病態栄養学 第4版
  • 女子栄養大学出版部「栄養素の通になる 第5版」
  • 女子栄養大学出版部「おかずレパートリー 胃・十二指腸潰瘍」