胃が正常な位置より垂れ下がった状態が胃下垂です。胃下垂は、やせ型で腹筋の少ない人に多くみられます。自覚症状がなければ胃下垂そのものは疾患ではありません。しかし、あまり垂れ下がりすぎると胃のぜん動運動が正常に行われなくなり、胃や腸の働きが低下します。これが胃アトニーで、消化不良を原因とする食欲不振、膨満感、胃もたれ、吐き気、胸やけなどさまざまな症状があらわれます。
吸収不良症候群
消化・吸収が障害され、栄養素不足が生じ、症状としては慢性的な下痢、体重減少、全身のむくみ、貧血、口内炎などを引き起こします。また、脂肪が多く含まれる脂肪便(浮くのが特徴)が排出されます。
機能性ディスペプシア(FD)
症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないのに、みぞおちを中心とした上腹部にあらわれる胃もたれや痛み、食後膨満感、早期満腹感などの症状が慢性的に続くのが、機能性ディスペプシア(FD)です。「ディスペプシア」という言葉は、元々は「消化不良」を意味するギリシャ語が語源です。
遺伝や家族歴、喫煙、アルコールなどの生活習慣、食生活、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)感染など、多様な要因が関連し合い、胃酸分泌や胃の運動機能などに異常が生じます。また、症状の現れ方が不安定なこともあり、心理的要因も大きいと考えられています。
逆流性食道炎(びらん性胃食道逆流症:びらん性GERD)
胃内容物が食道に逆流し、胃酸による炎症(粘膜傷害)を起こし、胸やけや胃もたれ、消化不良などの症状を呈する病態をいいます。「びらん性胃食道逆流症(びらん性GERD)※」ともいいます。大食や高脂肪食、背骨の変形(亀背:背中が丸まった状態)などで下部食道括約筋(LES)が弛緩することなどが原因です。内視鏡検査を行い、粘膜傷害の有無から鑑別することができますが、内視鏡を実施せずに、症状から判断されることもあります。
※びらんとは、組織の欠損が粘膜上皮にとどまるものをいいます。びらんや潰瘍などの粘膜傷害がみられないものは「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」といいます。
ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に感染して胃炎を引き起こす細菌です。感染は生涯にわたって持続することが多く、萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍などのさまざまな上部消化管疾患を引き起こします。ピロリ菌感染は、胃酸分泌能など胃の機能面にも影響を与えます。また、萎縮性胃炎になると、胃酸が十分に分泌されないため、食べ物が消化されにくく、胃もたれや食欲不振などの症状があらわれることがあります。
日本では、衛生環境が整ったことによってピロリ菌に感染している割合は年々減少しており、若い世代では低くなっています。
胃・十二指腸潰瘍
潰瘍とは、消化管壁の組織が欠損した病態のことです。胃と十二指腸における消化管壁の組織欠損の総称が、胃・十二指腸潰瘍です。原因の多くは、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が胃や十二指腸に棲みつくことです。ピロリ菌の感染により慢性的な炎症が続き、粘膜が萎縮し、びらん・潰瘍が形成されます。みぞおち周辺の痛み(心窩部痛)や腹部膨満感、悪心・嘔吐、胸やけ、食欲不振、消化不良などの症状のほか、消化管出血を合併することもあり、吐血や肛門からの血液の排出(下血)などがみられることがあります。
日本人の消化性潰瘍の有病率は、年々減少しているとされています。ピロリ菌の除菌が、胃潰瘍の治癒速度を促進するとされています。
胃がん
胃がんは、胃の壁の内側をおおう粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序に増えていくことにより発生します。がんが大きくなるに従い、外側に深く進行していきます。初期の段階では自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合があります。主な症状は、胃痛、不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。胃がんの99%はピロリ菌感染が関与していて、感染者のなかで喫煙、塩分摂取過多などが危険因子として重要です。胃がん検診の普及により、症状のない早期に発見される機会も増えています。
急性冠症候群 (ACS)
冠動脈のプラーク破綻を起因として、急速に血栓形成・閉塞が進行する疾患の総称で、急性心筋梗塞と不安定狭心症が含まれます。胸痛以外の症状として、呼吸困難、腹部心窩部痛、倦怠感、悪心・嘔吐、焼けるような痛み、消化不良などがあります。胸痛を伴う場合、直ちに医師の診察を受けましょう。
※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。