監修
宇井 千穂 先生 (やさしい美容皮膚科・皮フ科 秋葉原院/東京浅草院 総院長)

おでこニキビは、年代・性別によって特徴が異なります。
ここでは「思春期のおでこニキビ」「大人のおでこニキビ」「男性のおでこニキビ」の3つに分けて、その原因を解説します。
ニキビは特に思春期(小学校の高学年頃から、高校生くらいにかけて)できることが多く、その後症状は次第に落ち着いていきます。思春期にニキビができる原因は、性ホルモンの分泌が増加することで皮脂腺が刺激され、皮脂の分泌が過剰になるからと考えられています。
顔は皮脂腺が多く集まっている部位で、なかでもおでこ、鼻といったTゾーンと呼ばれる部位は皮脂の分泌が活発で、ニキビが発生しやすいです。
大人のニキビは、医学用語では思春期後痤瘡(ししゅんきござそう)といいます。発症のメカニズムは思春期のニキビと同じで、皮脂の分泌や毛穴詰まりが関係していますが、大人ニキビは特に女性に多く、治りにくいのが特徴です。
大人のおでこニキビができる/悪化する要因としては、ストレスや睡眠不足、生活リズムの乱れ、不適切なスキンケアなどが考えられます。
皮脂の分泌量は男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受けています。男性は、一般的に女性よりも皮脂の分泌量が多い傾向があります。なかでも、おでこは皮脂腺が多く集まっている部位のため、毛穴が詰まりやすく、ニキビができやすいです。
最近は、スキンケアに関心がある男性も多くなってきていますが、洗顔や保湿などのスキンケアが不十分な場合、皮脂が酸化して毛穴を塞ぎ、ニキビができやすくなってしまいます。
おでこのニキビは、皮脂や毛穴の汚れだけが原因ではありません。前髪がおでこにかかる髪型や整髪料、洗い残し、汗、生活習慣など、さまざまな要因が重なることで、ニキビが悪化することがあります。
ここでは、おでこにニキビができやすくなる主な要因と、注意すべきポイントを以下の5つに分けて紹介します。
あわせて、ニキビの原因や悪化させない生活習慣を確認するセルフチェックも活用しながら、ご自身の生活習慣を振り返ってみてください。
前髪を下ろす髪型をしている場合、毛先がおでこに常に触れていると、その刺激がニキビの原因になる場合があります。また、整髪料や化粧品の成分も、肌への刺激となり、ニキビの原因になることもあるでしょう。

洗顔によって汚れや余分な皮脂をきちんと除去できていないと、ニキビができやすくなります。また、洗浄力の強い洗顔料で顔を洗っていたり、1日に何度も洗顔したり、洗顔後の保湿を怠ったりすると、かえって肌が乾燥して炎症が起き、ニキビの原因となることがあります。
ストレスや睡眠不足も、ニキビができる原因となります。
皮膚は「ターンオーバー」と呼ばれるメカニズムによって、一定の周期で生まれ変わっており、外の刺激から皮膚を守り内部の水分蒸発を防ぐ「バリア機能※」は、正常なターンオーバーにより保たれています。
※バリア機能:ホコリや細菌などの外部からの刺激を防ぎ(外からのバリア)、体内の水分喪失を抑える(内からのバリア)機能。乾燥や加齢、ストレスや疲労で免疫力が低下しているときなどにバリア機能も低下しやすいといわれている
睡眠時に分泌される成長ホルモンは、肌のターンオーバーを促す働きがありますが、睡眠不足や昼夜逆転生活などで成長ホルモンが十分に分泌されないと、毛穴が詰まりやすくなり、ニキビの発生につながることがあります。
また、ストレスがかかったときや、睡眠不足のときに放出される「コルチゾール」というホルモンが、皮脂の分泌を促進して毛穴が詰まると、ニキビができることもあります。
ニキビの発生は、性ホルモンの影響を受けています。特に、女性の場合は生理周期にあわせて、排卵前にエストロゲン(卵胞ホルモン)が増加します。排卵から生理までの黄体期には、プロゲステロン(黄体ホルモン)の量が増え、ホルモンのバランスが急激に変動します。プロゲステロンは、妊娠に備えて体を整える働きがありますが、同時に皮脂の分泌を促進する作用があるため、生理前にニキビができる人が多いのです。

食生活をはじめとした生活習慣の乱れも、ニキビができる要因の一つです。偏った食生活により、皮膚の健康維持に必要な栄養素が不足したり、脂質や糖質を摂りすぎると、ターンオーバーが乱れたり、肌のトラブルにつながります。また、運動不足によって血行が悪くなると、肌のターンオーバーが乱れたり、毛穴の詰まりや炎症が起こることもあります。
加えて、喫煙もニキビに影響するとされています。抗酸化作用があるビタミンCの体内での利用率が増加したり、皮膚表面の血流を滞らせることによって、皮膚のターンオーバーが乱れ、非喫煙者と比べて喫煙者のほうがニキビができやすい傾向にあります。
【プチメモ】ニキビができるメカニズム

ニキビは、皮脂がたくさん分泌され、毛穴の出口が詰まってしまうことで発生します。
毛穴の中に皮脂が溜まった状態は、「面皰(めんぽう)」と呼ばれています。面皰の中は酸素が少なく、アクネ菌というニキビの原因となる菌が増えやすい環境です。アクネ菌が増えると、毛穴の中で炎症が起こり、赤く腫れたり、膿が溜まったりするニキビになり、さらに炎症が進むと、しこりのような状態になることもあります。
炎症が強くなると、まわりの皮膚にもダメージを与えてしまい、炎症が治まった後も、しばらく赤みや色素沈着が残ったり、ニキビ跡として皮膚が盛り上がったりへこんだりする「瘢痕(はんこん)」が残ることもあります。
おでこにできるブツブツは、すべてがニキビとは限らず、他の皮膚トラブルが原因で似たような症状が出ている可能性も考えられます。ここでは、ニキビ以外でおでこにブツブツができる原因として、以下の3つを紹介します。
あせもは汗腺が詰まって汗が排出されないことにより、皮膚周辺の組織に小さな水疱(すいほう)が多発する症状のことです。汗をかきやすい夏に多くなりますが、最近は暖房の影響で冬場にもみられることがあります。
毛嚢炎(毛包炎)は、毛嚢(もうのう)や毛包(もうほう)と呼ばれる、毛穴の奥にある毛根を包む部分が、細菌感染によって炎症を起こしている状態のことです。表面にとどまる炎症を毛包炎、下部まで炎症が及んでいるものを毛嚢炎といいます。毛穴が腫れて赤くなり、軽い痛みやかゆみをともないます。
おでこ以外にも、首の後ろ、胸、わきの下、陰部、太もも、お尻など、皮脂の分泌が盛んな部位や、こすれやすい部位にできやすいです。
かぶれは、皮膚に直接触れたものが原因で起こる、炎症や湿疹のことです。原因となる物質は、洗剤などの化学物質や、ゴム、金属アレルギーなど多岐に渡り、皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、水ぶくれができたりすることがあります。
ここでは、すぐに取り組めるニキビ対策の方法を以下の7つに分けて具体的に紹介します。
おでこのニキビを改善するためには、適切なスキンケアを行うことが重要です。ただし、肌の状態やタイプなどには個人差があり、それぞれ適切なスキンケアは異なるため、自分に合った方法をみつけられると良いでしょう。
ここでは、肌に負担をかけないクレンジング・洗顔の方法の1例を紹介します。洗顔は1日2回程度、洗顔料をよく泡立てて、手で優しく洗い、十分な水で洗顔料を洗い流すといった流れで行います。洗い残しには十分注意しましょう。
洗顔料は毛穴が詰まりにくいものを使用するのがおすすめです。洗顔後に乾燥が気になる場合には、保湿剤(化粧水や乳液、クリームなど)や保湿成分が入った化粧品などを併用しましょう。メイクをしている場合には、最初にクレンジングでメイクを落としてから洗顔してください。クレンジングもオイルやジェル、ミルクなどさまざまな種類があるため、自分の肌に合ったものをみつけられると良いでしょう。

乾燥肌の場合や、ニキビの治療によって乾燥が生じる場合には、保湿が大切になります。保湿剤を選ぶ際には、毛穴が詰まりにくい(コメドが発生しにくい)とされる、「ノンコメドジェニック」あるいは「ハイポコメドジェニック」と表示してあるものがおすすめです。
また、きちんと日焼け対策を行うことも大切です。日焼け止めを使用する際には、屋外の活動が長いときや夏場は「SPF」の数値や「PA」の「+」表示の高いものを選ぶ、海やプールに行くときはウォータープルーフタイプのものを選ぶなど、シーンごとに使い分けられると良いでしょう。
その他、日焼け止めに関する詳しい内容は以下の関連記事をご確認ください。
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おでこは、前髪や整髪料の刺激が加わりやすい部分です。そのため、できるだけ髪がおでこに触れないようにし、整髪料は控えめに使うなど、物理的な刺激を減らすことが大切です。例えば、自宅にいるときは髪を結んだり、ヘアバンドやカチューシャで前髪を上げるなどして、おでこへの刺激を極力なくしてみてください。
メイクをしても問題ありませんが、ニキビの上にファンデーションやコンシーラーを何層も塗り重ねることは避け、薄めに塗るのが望ましいでしょう。
また、ニキビを触ると、治りにくくなるだけでなく、新しいニキビができる原因にもなりかねないため、できるだけ触らないようにすることも大切です。自分でニキビを潰すと、炎症が悪化し、ニキビ跡が残ったり、治りにくくなったりするので、注意してください。
栄養バランスの良い食事は、健康な肌をつくる基礎となります。
主食・主菜・副菜を基本に、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルを含めた五大栄養素をバランス良く摂取しましょう。
肌の新陳代謝に関与するビタミンとして、主に脂質の代謝にかかわるビタミンB2や、主にたんぱく質の代謝にかかわるビタミンB6が挙げられます。ビタミンB2を多く含む食品は、鶏卵や牛レバーなど、ビタミンB6を多く含む食品はさんまやバナナなどです。
また、ビタミンCは、皮膚や血管を形づくるコラーゲンの生成に欠かせない成分で、肌荒れやニキビに悩む方におすすめです。食品では、じゃがいもやレモンなどに多く含まれていますが、忙しくて食生活が乱れがちな人は、市販のビタミン剤などを活用するのもおすすめです。
睡眠不足やストレスも、ニキビの原因となるため、注意が必要です。
適切な睡眠時間は年齢や季節、個人差によって異なりますが、6~8時間程度は必要だといわれています。日頃から質・量ともに十分な睡眠時間を確保し、できるだけ決まった時間に就寝・起床するようにして、生活リズムを整えましょう。
必要に応じて、睡眠の質や肌荒れの改善のための栄養ドリンクなどを、活用するのも良いでしょう。
また、喫煙は肌の状態に悪影響を与え、ニキビの要因にもなるので、控えることが望ましいです。
ニキビは、ホルモンバランスが変化したときに発生しやすくなります。
特に思春期は、性ホルモンの分泌が活発になり、皮脂の分泌が増える時期。適切なスキンケアを、根気よく続けることが大切です。多くの場合、大人になるにつれて症状は落ち着いてくるため、過度に心配する必要はありませんが、炎症が強い場合やなかなか治らない場合は、瘢痕(はんこん)が残ることもあるため、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
女性の場合は、生理周期によるホルモンバランスの変化の影響を受け、ニキビができることが多いです。生理前にニキビができても、難しいかもしれませんが短期間の状態に一喜一憂せずに、しっかりとケアを続けていきましょう。
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おでこのニキビがなかなか治らないときや、繰り返しできる場合は、市販の内服薬を活用するのも一つの方法です。その場合は、内側から肌の調子を整える成分を配合したビタミン剤を活用するのも良いでしょう。
セルフケアを行っても、おでこのニキビが良くならない場合や、何度も繰り返しできる場合は、皮膚科を受診するようにしましょう。皮膚科での保険診療は、症状にあわせて外用薬が処方されることが多く、場合によっては内服薬の処方が行われることもあります。
また、ニキビの治療の際に使用される塗り薬は、角質をはがすピーリング作用があるものもあります。肌が乾燥しやすくなるため、スキンケアや日焼け対策をしっかりしましょう。また、紫外線によって薬の副作用が出てしまう場合があるため、普段以上に日焼けに気をつける必要があります。
自由診療では、化学薬品を塗り、皮膚をはがすことで治療を行う「ケミカルピーリング」や、ニキビ跡については、レーザー・光治療などが行われる場合があります。まずは、保険が適用される一般的治療から始め、選択肢の一つとして自由診療で治療を受ける場合は、担当医と相談し、どのような効果や副作用があるのか、治療に必要な期間や費用はどのくらいかなど、十分な説明を受けましょう。

おでこのニキビは、思春期だけでなく、大人にも起こりやすい肌トラブルの一つ。前髪や整髪料・化粧品による刺激の他、睡眠不足や食生活の乱れ、ホルモンバランスなど、さまざまな要因が関係しています。ニキビができにくい肌の環境を整えるために、適切なスキンケアを行い、生活習慣を整えるようにしましょう。
また、ニキビを治すためには、栄養バランスの取れた食事が非常に重要です。食生活が乱れがちな人は、市販のビタミン剤を活用してみるようにしましょう。
セルフケアを続けても、ニキビが改善しない場合は、ぜひ皮膚科の受診も検討してみてください。普段の生活を見直して、ニキビができにくい肌を目指しましょう。
参考文献
・林伸和「尋常性痤瘡の標準治療とスキンケア」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/koshohin/47/3/47_470308/_pdf/-char/ja