監修
堀 美智子 先生 (医薬情報研究所 株式会社エス・アイ・シー)
まずは、痛めたのどをいたわるおすすめの食べ物を紹介します。栄養をしっかり摂って、睡眠・休養し、早く治しましょう。
<のどが痛いときにおすすめの食べ物と食べ方の一例 一覧>
おすすめの食べ物 | おすすめの食べ方の一例 |
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はちみつ ※1歳未満の乳児では、乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、食べさせないようにしましょう。 |
はちみつ梅干し湯、梨のはちみつ蒸し、カリンのはちみつ漬け |
大根 | 大根おろし湯、おろしそば、大根飴 |
ネギ | 雑炊(梅干しと刻みネギ) お味噌汁 |
ショウガ | ショウガ湯 |
リンゴ | リンゴのすりおろし |
レンコン | レンコンのすりおろし 大根飴に加えたレンコン湯 |
のど飴の成分としてもよく使われている“はちみつ”には、殺菌作用やのどの炎症による症状を軽くする作用があるという報告があります。また、はちみつの主成分であるブドウ糖や果糖などは、消化吸収が早くて吸収後にエネルギーに変わりやすいため、風邪で体が弱っているときの栄養補給におすすめです。
また、はちみつの“とろみ”は、のどが痛いときにも、食べ物がのどを通りやすくしてくれます。
はちみつは、そのままで何かのドリンクに溶かして飲んでも良く、使い勝手の良い食材といえます。ただし、1歳未満の乳児では、乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、食べさせないようにしましょう。
お湯で溶かして飲んだり、ヨーグルトにかけて食べたりすると良いでしょう。はちみつ梅干し湯、梨のはちみつ蒸し、カリンのはちみつ漬けなどの食べ方もあります。
大根は白菜、豆腐とともに精進料理の「養生三宝」の一つ。別名「すずしろ」といい、正月明けに弱った体をいやすために食べる「七草がゆ」にも含まれています。
大根は水分が豊富なうえに、葉の部分には、抗酸化作用とともに皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きをもつ、ビタミンCが豊富です。さらに、大根に含まれているイソチオシアネートという成分には、抗炎症作用、殺菌作用があるとされています。
大根おろし湯、おろしそば、大根飴などが、大根を使った食べ物として挙げられます。大根飴は大根をはちみつ漬けし、大根のエキスが出た残り汁をそのままなめたり、お湯で割って飲んだりするものです。他には、大根おろしにはちみつを入れるといった食べ方ものどに良いとされています。
ネギは生薬としても使用されます(生薬名:葱白)。ネギの緑の部分は、ビタミンCが豊富。ビタミンCは、粘膜の健康維持を助ける働きや、抗菌・殺菌作用もあるとされる栄養素です。また、ネギに含まれているアリシンという成分にも殺菌作用があり、ネギオールという成分には抗炎症作用があります。
ショウガ湯にネギを刻んで加えて飲んだり、雑炊に梅干しとネギを加えて食べたりするのがおすすめです。またみじん切りにして、お味噌汁に入れて飲むのも良いでしょう。
また、昔からの知恵としてネギを首に巻くというものがあります。SNS上では古臭く効果がないと否定するものもありますが、実証実験の結果から、首に巻き付けることで、鼻の粘膜からアリシンが吸収され続けることで、殺菌作用が働くと同時に副交感神経の機能を向上させ、免疫力を高める効果があるのではないかといわれています。実際に首に巻く際には、ネギを蛇腹切りにして巻きやすいようにし、直接肌に触れないようガーゼにくるんで巻くと良いでしょう。古くから受け継がれてきた知恵は、それなりに理由があり、セルフケアとして大切にしたいですね。
ショウガは食用としても薬用としても使われている食材です。ショウガに含まれている、ジンゲロールやショウガオールという成分には、殺菌作用や血行を良くする作用があります。
雑炊やスープ、うどんなどを食べるときにショウガを加えると、体がより温まります。また、せきやたん、のどの痛みを鎮める作用があるとされていて、風邪の諸症状全般に良い影響が期待できます。
ショウガ湯として飲んだり、ショウガのおろし汁にお湯を注ぎ、はちみつを加えて飲んだりするのも良いでしょう。
リンゴもビタミンCが豊富で、抗酸化作用などによって粘膜の健康維持を助けてくれます。また、カテキン(エピカテキン)が豊富で、抗ウイルス作用・殺菌作用・抗菌作用があるとされています。すりおろして食べやすくしたりするのも良いでしょう。
レンコンはハス(蓮)の根茎です。きれいな花を咲かせるハスは薬用植物でもあり、部位毎に異なる名前がついた生薬でもあります。薬膳食材としても使用されます。
レンコンには、抗炎症作用のあるタンニンという成分が含まれていて、ビタミンCも豊富です。またレンコンのぬめりの成分には、のどを潤して炎症を鎮める働きが期待できます。すりおろした方が、ぬめりの成分が出やすいので、のどのためにはすりおろして料理に使った方が良いかもしれません。皮つきのまますりおろす場合は、皮についている泥をきれいに洗い流してください。
レンコンのすりおろしと、それを大根飴に加えたレンコン湯がおすすめです。
卵はさまざまな栄養素が豊富に含まれているうえに、さまざまな料理に使える便利な食材です。豊富な栄養素のなかでも、例えばビタミンAは、皮膚や粘膜を健康に保ち、抵抗力を強めてくれるように働きます。
一方、牛乳も多くの栄養素がバランス良く含まれていて、さまざまな料理に使えます。また、そのまま飲んだ場合にものどに潤いが与えられ、ウイルスが粘膜につきやすくなってしまうのを防いでくれます。
また、卵や牛乳には、亜鉛も豊富に含まれています。亜鉛は細胞の新陳代謝や免疫機能の維持、味覚を正常にしたりする働きや、抗酸化作用など、多彩な作用が知られていて、のどの痛みの原因として多い感染症対策に、大切な栄養素です。
のどが痛いときにおすすめのレシピをご紹介します。今回ご紹介するのは亜鉛やビタミンAなどが含まれている卵や、ビタミンCが含まれるネギを使用したのど越しの良いレシピです。
包丁を使わず、お鍋一つあれば5分でできる簡単なレシピとなっているので、ぜひ作ってみてください。
のどが痛いときでも食べやすい、温かいにゅうめんで体をいたわりましょう。
レシピ協力:沓澤 佐紀さん(フードコーディネーター)
のどが痛くて思うように食事ができなかったり、夜も十分に眠れなかったりすると、体力や免疫力が下がってしまうため、症状を長引かせてしまいかねません。「のどの痛みぐらい」などと軽視せずに、きちんと対処することが大切です。
ここではのどが痛いときの食事のポイントをご紹介します。
のどの痛みの原因となる感染症の場合、ダメージを受けるのはのどの粘膜だけではなく、胃腸にも影響が及ぶことがあります。
食べ物としては、のど越しと消化が良いものがおすすめです。例えば、豆腐や卵、白身魚、うどん、ゼリー、プリン、ヨーグルト、茶わん蒸しなどが挙げられます。
また、料理の仕方も工夫しましょう。固い野菜や肉類は細かく刻んだり、柔らかく煮たりするなど、ひと手間加えると食べやすくなります。ごはんはお粥に変えると良いでしょう。
なお、加齢とともに飲み込む力(嚥下機能・えんげきのう)が落ちている方に、ミキサーを使って食材を砕いたり、とろみづけをしたりした食事を提供することがあります。そのような調理上のテクニックをのどが痛いときに応用しても良いかもしれません。
また、嚥下に問題がある方向けの食品として、スマイルケア食、ユニバーサルフードなども販売されています。保存食として用意されておいてもいいでしょう。
農林水産省のサイト「スマイルケア食」などが参考になります。
免疫力をきちんと維持するためには、栄養バランスの良い食事を摂ることが一番です。のどの粘膜の健康維持に良い栄養素としては、ビタミンAやビタミンB群、ビタミンCなどが挙げられます。とくにビタミンB群は、糖質をエネルギーに変えるのに必要で、疲労回復にも効果があり、奪われた体力を取り戻すように働いてくれます。この他、亜鉛などのミネラルも重要です。
また、水分補給も大切です。空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下し、ウイルスに感染しやすくなります。水分を十分に摂ることで、のどの粘膜の乾燥が改善されて、ウイルスなどが付着するのを防いでくれますし、痛みの軽減にもつながります。さらに、熱がある場合は、脱水予防のためにも水分補給がより重要です。スポーツドリンクや経口補水液などで水分を摂る他、食事としてスープなどを取り入れるのも良いでしょう。
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のどが痛くて食べるのにもひと苦労というときや、熱などの症状のために食欲がないようなときには、のど越しの良い液体やゼリー状の飲料を利用するのも良いでしょう。また、コンビニエンスストアでも売っていて手軽に入手可能な、はちみつが入っている飲料やハーブティーなどもおすすめです。
アルコールの刺激が直接的にのどの粘膜にダメージを与えるだけでなく、アルコールの利尿作用が粘膜などの乾燥を引き起こし、状態をより悪化させてしまいます。
その他、刺激の強い食べ物や飲み物も控えた方が良いでしょう。例えば、炭酸水、香辛料、冷たすぎたり熱すぎたりするもの、酸味の強いもの、固いものなどです。
のどの痛みの原因の一つにウイルスや細菌による感染が挙げられます。
のどは空気中に含まれるさまざまな細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入する入り口にあたります。入り口(のど)から病原体が体内に侵入すると、細胞が傷つけられ、体はそれに対抗しようとして炎症反応を起こし、炎症物質や痛みを促す物質を産生します。炎症物質が神経を刺激すると同時に、血管を広げて血流を増加させることで、のどが腫れ、痛みが生じるのです。
のどには元々防御機構が備わっていますが、体が疲れていたり、乾燥した空気によって線毛運動※の働きが低下したりすると、病原体などの異物が排出されにくくなり、体内に侵入しやすくなるため、注意が必要です。
のどの痛みに加えて発熱や悪寒などもある場合は、風邪などの感染症による咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎、扁桃周囲炎などが考えられます。もちろん、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの可能性もあります。
※のどの粘膜には短い毛(線毛)があり、その線毛が動くことによって異物を移動させ、排除する働きのこと。
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発熱がなくてのどの痛みだけの場合は、冷気や乾燥などによって引き起こされる可能性や、アレルギーや神経系の疾患の可能性があり、ときにはうつの一症状として現れていることもあります。また、食後に痛みが生じた場合には、魚の骨などが原因かもしれません。薬を服用する機会の多い高齢者の方では、PTP包装シート(薬の包装)※を誤って一緒に飲み込んでしまうことも少なくないようです。高齢の方のいるご家庭では、日頃からPTP包装シートを1錠ずつに切り離さないなど注意をしましょう。
※「PTP包装シート」とは「Press Through Package」の略で、医薬品等をアルミなどの薄いシートとプラスチックで1錠ずつ分けて包装したもの
のどの痛みのために食事をしっかり摂れなかったり、睡眠不足になると、体力が低下し病気の状態が悪化したりすることもあります。痛みがつらく食事が進まない場合は、食べられる食材を選んだり、食べやすいように工夫をしたりして、しっかりと栄養を摂りましょう。記事内でご紹介したレシピを活用してみるのもおすすめです。
のどの痛みがつらく、十分な食事ができないときには、不足しがちな栄養素をサプリメントや市販薬で補うのも良いでしょう。風邪によるのどの痛みの場合、総合感冒薬で対処することもできます。
のどの痛みが長引いたり、のど以外にも症状があったりするのであれば、早めに医療機関を受診しましょう。
主婦と生活社「食べて治す医学大事典」,2018
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法研「薬草療法ハンドブック」,2000
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