監修
永武 毅 先生 (桜みちクリニック 院長)
喉の痛みは、喉が炎症を起こして神経が刺激されることによって生じます。 喉の炎症を引き起こす原因について知っておきましょう。
喉の痛みは、一般的な風邪などの症状(かぜ症候群)のひとつです。かぜ症候群の病原体は、80~90%がウイルスと言われており、喉の粘膜にこの病原体(ウイルス/細菌など)が侵入すると、咽頭や扁桃に炎症を起こします。さらに、鼻腔から喉頭までの気道(上気道)に炎症を起こすと、喉の痛みが発生します。これらの病原体は、乾燥により喉の粘膜に付着しやすくなると言われています。
花粉症などのアレルギー疾患も同様です。空気中に浮遊する花粉やハウスダストなどの原因物質「アレルゲン」を吸い込み、その成分が鼻の粘膜から体内に入るとくしゃみや、鼻水・鼻づまりなどを引き起こします。鼻づまりにより口呼吸になると、乾燥した喉にウイルスが付着し炎症を起こす原因となります。
その他、声帯に過度の負担がかかるような大声を出すことや、アルコール、タバコも喉の粘膜を傷つけ、炎症を引き起こす原因となります。
栄養バランスのとれた食事を摂り免疫力を高めることも早く回復する上で大切です。喉の痛みに有効な栄養素としては、ビタミンA・Cが挙げられます。どちらも粘膜の健康維持を助ける働きがあるため、喉や鼻の症状にも効果が期待できる栄養素です。さらにビタミンCには、風邪などの病気に対する抵抗力を強める働きもあります。
ビタミンに関する記事はこちら。 ビタミンA(レチノール) ビタミンC(アスコルビン酸)
喉が痛い際は、コンビニなどで手軽に手に入るのど飴も活用してみましょう。のど飴は、喉の乾燥を防ぎ、喉の痛みを緩和する効果が見込めます。のど飴には「医薬品」「指定医薬部外品」「食品」の3種類があります。なかでも医薬品・指定医薬部外品ののど飴は、喉の湿度を保ち、喉に潤いを与えてくれる他、抗炎症作用や殺菌作用を有するものがあります。
この他、喉が痛いときにおすすめの食べ物もいくつかご紹介します。
▼喉の痛みにおすすめの食べ物 含まれる成分とその働き
食べ物 | 含まれている成分とその働き |
---|---|
はちみつ | ・ブドウ糖、果糖など:殺菌作用や喉の炎症の症状軽減など |
大根 | ・ビタミンC:抗酸化作用、皮膚や粘膜の健康維持を助ける ・イソチオシアネート:抗菌作用 |
レモン | ・ビタミンC:抗酸化作用、粘膜の健康維持を助ける ・クエン酸:疲労回復 |
ネギ | ・ビタミンC:粘膜の健康維持を助ける |
りんご | ・ビタミンC:抗酸化作用、粘膜の健康維持を助ける ・カテキン:抗ウイルス作用、殺菌作用、抗菌作用 |
卵 | ・ビタミンA:皮膚や粘膜を健康に保つ、抵抗力を強める |
牛乳 | ・ビタミンA:成長促進、生殖・免疫機能の維持、皮膚や粘膜を正常に保つ |
のど飴にもよく含まれているはちみつは、殺菌作用や喉の炎症の症状軽減などについて研究が行われています。
また、ブドウ糖や果糖などの糖質を主成分としているうえ、消化吸収も早いので、風邪などで体が弱っているときの栄養補給におすすめです。
ただし、ボツリヌス菌を原因とする乳児ボツリヌス症の発生を防止するため、1歳未満の乳児には食べさせないでください。
大根は水分が豊富なうえ、葉の部分には抗酸化作用や皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きがあるビタミンCが豊富に含まれています。さらに、大根に含まれるイソチオシアネートという成分には、抗菌作用があるとされています。
レモンは抗酸化作用や粘膜の健康維持を助けるビタミンCが豊富な他、疲労回復に役立つクエン酸も多く含んでいます。
ネギの緑の部分には、粘膜の健康維持を助ける働きのあるビタミンCが豊富に含まれているうえ、抗菌・殺菌作用もあります。
りんごは抗酸化作用や粘膜の健康維持を助けるビタミンCが含まれている他、カテキン(エピカテキン)が豊富で、抗ウイルス作用・殺菌作用・抗菌作用があります。
卵は、皮膚や粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあるビタミンAが豊富です。さまざまな調理法で楽しめますので、上手に取り入れましょう。
牛乳に多く含まれる、ビタミンAには、成長促進や生殖・免疫機能の維持、皮膚や粘膜を正常に保つ働きがあります。また水分により喉が潤うため、ウイルスが粘膜に付着しやすくなる喉の乾燥予防にもつながります。
喉の痛みが強く、飲み込みづらい場合は、形状や調理法を工夫してみましょう。ご飯はおかゆに変えたり、かたい野菜や肉類は細かく刻んだり柔らかく煮るなど 食べやすくするのがおすすめです。その他、茶碗蒸しや卵豆腐なども食べやすいでしょう。また、香辛料は痛みを助長させることがあるので控え、薄めの味付けにしましょう。
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つらい喉の痛みは一刻も早く治したいもの。とはいえ、一瞬で効く方法はありません。そこで、手軽にできる喉の痛みを緩和する方法を紹介します。
先述の通り、喉が乾燥するとウイルスや細菌が粘膜に付着しやすくなります。また、鼻づまりが起こると口呼吸になりやすくなるため、さらに喉を乾燥させる原因に。喉の痛みを軽減するには、水分補給をこまめに行って喉を潤すことが大切です。
ただし、アルコールやカフェインを含む飲料は、逆に脱水を起こす可能性があるため控えましょう。水やノンカフェイン飲料がおすすめです。
空気の乾燥は、ウイルスが増殖する原因となります。室内の湿度が50~60%になるように、加湿器などを活用して調整しましょう。お風呂にお湯をためて扉をあけておくのも、室内の湿度を上げるのに効果的です。
ウイルス感染の防止のために、外出時はマスクを着用しましょう。また、室内でも就寝中にマスクをすることで、喉の乾燥を防ぐことができます。
うがいは、喉に付着したウイルスを洗い流してくれます。帰宅時や食事前など、こまめに行うようにしましょう。
喉を酷使すると粘膜が傷つくため、長時間声を出して喉を乾燥させないようにしましょう。カラオケなどはもちろん控えるのが好ましいですが、どうしても声を出す必要がある際はこまめに水分を取ることで痛みの予防につながります。
喉が痛いときは、直接喉の粘膜を傷つけてしまうアルコールなどの刺激物に注意が必要です。さらに、アルコールの分解には大量の水を必要とするため、細胞から水分が奪われ、喉が乾燥して炎症を引き起こし、炎症がさらに悪化してしまいます。喉が痛いときはアルコールを控えましょう。
タバコもアルコールと同じく刺激物です。タバコの煙には有害物質(ニコチン、タールなど)が含まれ、喉の粘膜を傷つけます。さらに副流煙で周りの人にも影響を及ぼすため、控えるようにしましょう。
喉の痛みに効く市販薬には、内服薬・外用薬の2種類があります。
薬効分類としては総合かぜ薬、口腔咽喉薬、解熱鎮痛薬のほか漢方製剤があり、剤形にはドロップ剤、トローチ剤、うがい薬、のどスプレーなどがあります。
とはいえ風邪や喉の痛みからの回復には、まずは体を温めて安静にすることが基本です。そのうえで、今回ご紹介した対処法を試してみてはいかがでしょうか。
参考文献
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
(http://www.jibika.or.jp/)
・日本呼吸器学会
(https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=2)
・厚生労働省 インフルエンザQ&A
(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html)
・文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
(https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html)