監修
伊藤 剛 先生 (北里大学北里研究所病院漢方鍼灸治療センター、北里大学客員教授)
そもそも「むくみ」とは、皮膚の下に水分が溜まっている状態のことをいいます。その水分の多くは、血液中から血管(毛細動脈)の壁を通ってしみ出してきたものです。
正常な状態では、この水分の量は動脈と静脈の毛細血管、毛細リンパ管の間で一定のバランスに保たれています。しかし、何らかの原因で回収されるべき毛細静脈やリンパ液の流れが滞り、毛細静脈から染み出た水分がそのまま溜まってしまうと、むくみが生じてしまうのです。
そのようなことが起こる要因としては、生活習慣の影響や、女性ではホルモンのバランスの変化、そして何かしらの病気の症状という3つが主に挙げられます。ここではまず、病気以外の理由から詳しくみていきましょう。
全身の隅々へ血液を送り出している臓器は心臓です。心臓の筋肉は規則正しく収縮と拡張を繰り返し、そのポンプ機能によって全身へ動脈血を送り出しています。全身を巡って酸素や栄養を届け終えた血液は静脈血となり、再び心臓へ戻ってきます。しかし、重力の影響により、下半身の静脈血流はどうしても滞りがちになります。その滞りがちな下半身の静脈血流の維持に欠かせないのが、「第二の心臓」といわれる脚、特にふくらはぎの筋肉です。
静脈とリンパ管にはともに弁という逆流を防ぐ装置があるため、脚を動かしたとき、特にふくらはぎの筋肉はあたかも心臓の筋肉のように、血液やリンパ液を押し出すようなポンプ機能を発揮します。それによって、脚に溜まりがちになっている静脈血やリンパ液が上へ押し上げられます。ふくらはぎの筋肉が極端に少なかったり運動不足で筋肉を使わなかったりすると、このポンプ機能が十分に働かないために静脈血やリンパ液の巡りが悪くなって、むくみが生じやすくなります。
筋肉が少ないと、基礎代謝(生命維持のために必要な最小限のエネルギー消費量)が低下して、体温が低くなりがちです。その影響で、いわゆる「冷え」と呼ばれる症状が起きやすくなります。
体の冷えはむくみと深い関係があることを、次項で詳しく解説します。

長い時間、椅子に座りっぱなしだったり、立ち続けていたりすると、重力の影響で血液は脚に溜まって血行不良となり、むくみが生じやすいことが知られています。さらに、このような状態に冬季の寒さ、あるいは夏季であってもエアコンの影響などによって「冷え」が加わると、より血行が悪くなってしまいます。
そして、体の熱量が少ない場合、体が冷えると体温が低下するのを防ぐために自律神経の交感神経が緊張して血管を収縮させ、余計に血液の巡りを悪化させてしまいかねません。加えて、むくみが生じている場合は、それによって血管が圧迫されるために、さらに血行が悪くなるという悪循環が生じてしまう場合があると考えられます。
食べ物の中の塩(ナトリウム)は、体内で水を引き付けて溜め込むように働きます。そのため塩分の多い食事を摂っていると、高血圧の原因になったり、腎機能が低下して塩分の排泄が十分でなかったりした場合は、むくみが起こりやすくなります。
むくみの予防や改善のためには、まず塩分を摂り過ぎていないかどうかをチェックしてみると良いでしょう。
血液循環に関わるビタミンE:
ビタミンEには血行促進作用があり、この作用はむくみの一因である血行不良を改善するように働いてくれます。また、血行不良の改善は冷えの改善にもつながり、冷えの改善を通してむくみを改善するという作用も期待できます。
<関連記事>
・ビタミンEの働きとは?摂取量の目安や含まれる食品、不足による影響も解説
エネルギー代謝を助けるビタミンB1:
ビタミンB1は糖質の代謝を助けて、エネルギーの産生に欠かせない栄養素です。
ビタミンB1が長期間、重度に欠乏※1していると、脚気(かっけ)※2と呼ばれる病気になることがあります。脚気が進行すると心不全(脚気心)になることがあり、その場合は心不全の症状として、全身や下肢にむくみが現れることがあります。
また最近では、ビタミンB1の重度の欠乏(脚気)まではいかない、軽度の不足であっても、心不全のリスクにつながることがわかってきました1)。
このように、ビタミンB1が不足すると疲れやすくなる他に、心臓や血管の機能が低下して血液循環が悪くなることがあり、その影響でむくみが起きやすくなることも考えられます。
健康維持のために必要最低限の量を摂取できていたとしても、将来の病気予防の観点では不足しているかもしれないため、ビタミンB1は積極的に摂取することが大切といえるでしょう。
※1 欠乏:必要な栄養素が不足することによって、何らかの症状が現れている状態。
※2 脚気(かっけ):ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって引き起こされる疾患。末梢神経の障害や心不全(心臓に異常が生じてポンプの役割を果たさなくなること)を伴う。
1) Ao M, et al.: J Clin Biochem Nutr. 64(3), 239-242, 2019
<関連記事>
・ビタミンB1はなぜ必要?ビタミンB1の働きや効果的な摂り方も紹介
カリウムは、体内のナトリウムの排泄を促す働きがあります。カリウムが不足するとナトリウムが体に溜まりやすくなり、水分も保持されやすくなるため、むくみの原因になることがあります。
一方、血液中のタンパク質、特に「アルブミン」は水分を血管内にとどめる役割を担っています。このアルブミンが不足すると血液の浸透圧(水分を血管の中に保持する力)が低下して、血液中の水分が血管の外へしみ出しやすくなったり、腎臓の尿細管からの水分やナトリウムなどの排泄機能が低下するため、むくみが生じやすくなります。
これらのことから、むくみ予防のためにはカリウムやアルブミンを含むタンパク質の不足にも注意した方が良いでしょう。
女性の場合は、ホルモン分泌のバランスの変化もむくみの一因となります。例えば、月経前の黄体期には、妊娠に備えるために分泌が増える黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で、体内に水分を溜め込みやすい状態になります。その結果、むくみや便秘などが起こりやすくなります。
また、女性ホルモンのバランスが大きく変動しがちな更年期には、自律神経が乱れやすくなる影響で血流やリンパの流れが滞りがちになり、むくみが起こりやすくなるといわれています。
<セルフチェック>
・更年期障害

ここまでは、目立った病気のない人に起こるむくみの原因を解説してきました。一方、以下に挙げるような病気がある場合には、その症状としてむくみが現れることがあります。ここでは主に、長引くむくみの原因を取り上げます。ここで取り上げる病気以外にも、感染症やアレルギー(アナフィラキシー)などでもむくみが現れることがありますが、それらによるむくみの現れ方は急激で、また、むくみ以外の症状で発症に気付くことが多い傾向があります。
※以下の疾患は、医師の診断が必要です。心配な場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
体の中の余分な水分や老廃物は、腎臓の働きによって尿として排泄されていきます。腎臓病ではこの働きが低下するため、血液中に老廃物が溜まったり、水分が十分に排泄されなくなったりします。
また、老廃物が排泄されにくくなるのとは反対に、老廃物ではなく、体に必要なタンパク質(アルブミン)が排泄されてしまうということも起こりえます。腎臓病の一つである「ネフローゼ症候群」はそれが顕著になっている状態です。このような状態では血液の浸透圧が低下するため、それもまた全身の強いむくみを引き起こします。
血液は心臓のポンプ機能によって全身に送り届けられています。このポンプ機能が低下した状態が心不全です。心不全では血液の巡りが悪くなり、体の末梢(脚や顔など)に血液が滞りがちになるため、むくみが起きてきます。
また、心臓からはナトリウム(塩分)の排泄を促すように働くホルモンBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)が分泌されていますが、心不全ではBNPの分泌が増加するにもかかわらず、その働きが低下しているため、ナトリウムが十分に排泄されなくなります。これもまた、むくみに関係してくるのです。
肝硬変とは、肝炎が進行して肝臓の組織の「繊維化」という現象が起こり、肝臓が硬く変化した状態のことです。肝硬変では、肝臓の働きが大きく低下してしまっていることが少なくありません。
肝臓には、タンパク質を作り出すという働きがあります。肝硬変のためにタンパク質を十分作れなくなると、血液中のタンパク質(アルブミン)が少なくなって血液の浸透圧が低下し、むくみが起こりやすくなります。
また肝硬変では、肝臓が硬いために、肝臓に流れ込む「門脈(もんみゃく)」という静脈の血流が悪くなります。すると、門脈からしみ出した血液中の水分がお腹の中に溜まって、「腹水(ふくすい)」と呼ばれる腹部(腹腔内)のむくみも起こってしまいます。
食べる量が少ない、あるいは偏食が続いているといった理由から栄養を十分に摂れていないと、血液中のタンパク質が少なくなります。血液中のタンパク質が少なくなるとアルブミン量も低下するため浸透圧が低下し、むくみにつながります。
むくみ予防のためにも、バランスの良い適量の食事を心がけましょう。
脚のむくみの原因として、血管(静脈)の構造自体に問題(異常)が起きていることも挙げられます。
例えば、静脈の中に血の塊ができる「静脈血栓」、静脈の血管壁にコブができる「静脈瘤」、静脈に炎症が起こる「静脈炎」、血液の逆流を防ぐためにある弁が機能しなくなる「静脈弁不全」などの病気がむくみの原因となり得ます。
なお、脚の静脈血栓の一因として、飛行機や災害避難場所などの狭い場所で長時間同じ座位姿勢でいることが挙げられ、これは「エコノミークラス症候群」とも呼ばれています。
心臓から全身に送り届けられた血液の多くは、静脈を通って心臓に戻っていきます。ただし、静脈では回収できない物質や異物などに対しては、静脈以外の経路として「リンパ管」という通り道もあります。リンパ管は、リンパ液の循環を担っているだけでなく、途中にリンパ節という免疫機能に重要な役割を持つ部位があります。
例えば、がんの治療のための手術や放射線治療、外傷などのためにリンパ管が傷ついたりすると、このリンパ液の流れが悪くなってしまうことがあり、リンパ管からしみ出した液体の成分がむくみを引き起こすことがあります。
ここからはセルフケアとして取り入れやすいむくみの解消法、予防法についてお話ししていきます。なお、上述のような病気によるむくみが考えられる場合は、医療機関を受診し、診療・治療を受けてください。

むくみの原因の多くは、静脈の血液やリンパ液の流れが悪くなることにあります。血液の流れを作り出すポンプ機能を担っているのは、第一に心臓の筋肉ですが、第二が脚(特にふくらはぎ)の筋肉です。そのため、脚の筋肉量が極端に少なかったり、筋肉を使わないでいたりすると血液の巡りが悪くなってしまいます。また、むくみの大敵である「冷え」の予防・改善のためにも、脚に限らず、全身にある程度の筋肉をつけることも大切です。
ウォーキングやつま先立ちなど下肢の脚に負荷のかかる運動と、全身を使う運動を習慣的に続けてみましょう。それらによって、筋力アップとむくみ予防が期待できます。
なお、筋力アップという点での効果は限られますが、長時間の立ちっぱなしや座りっぱなしが続く状態では、途中で脚を動かす運動を挟むと、血行が保たれてむくみを抑えられるでしょう。
冷えは必ずしもむくみの原因ではありません。ただし冷えのためにむくみが起きやすくなり、むくみのために冷えやすくなるという相互の関連性があります。
冬季の寒さはもちろんのこと、夏季のエアコンの効きすぎにもしっかりと対策を行いましょう。例えば、オフィスではひざ掛けを活用したり、上着を1枚羽織ったりして、こまめに調節しましょう。
また、入浴で体を温めて血行を良くしてから睡眠につくこともおすすめです。お湯に浸かると、水深が深いほど体に水圧がかかります。その水圧によって皮膚や筋肉など体表の血管が圧迫されることで、体表に滞っていた血液は体の中心に押し戻され、マッサージを受けたかのように全身の血行が良くなるのです。これは「静水圧作用」と呼ばれています。また、一部では、お湯は40℃前後が好ましいといわれていますが、高齢者や循環器疾患のない健康な人では、通常夏は40~41℃、春秋冬は42℃の全身浴が好ましく、さらに浸かるのは10分以内とした方が、血圧低下や発汗過多になりにくいとされています。むくみや冷えのある方は、夏の暑い日はともかく、夏季でもシャワーで汗を流すだけで済ませずに、湯船に浸かるようにしてみましょう。
塩分は水分を引き付けるだけでなく、摂り過ぎは腎機能を悪化させむくみの大きな原因となります。減塩のためには、塩や醤油の代わりに酢や柑橘類の酸味を活かした香辛料を使う、麺類の汁やスープは飲むのを控える、漬物や加工食品を控える、減塩タイプの調味料を使う、醤油やソースなどはおかずにかけず小皿に付けて食べる…など、さまざまな工夫が考えられます。塩分の過剰摂取に心当たりがある場合は、一つ一つ積み重ねて、摂取量を減らしていきましょう。
ビタミンE:
ビタミンEは抗酸化作用を持つだけでなく、末梢血管の血流を改善し、血液循環をサポートする働きがあるとされています。血流が滞ると水分が血管外に漏れやすくなり、むくみの原因となるため、ビタミンEを摂取することを意識するのも良いでしょう。ビタミンEの豊富な食品として、ナッツ類(特にアーモンド)、植物油、小麦胚芽などが挙げられます。これらのうち、小麦胚芽そのものはおかずになりにくいですが、混ぜご飯やシチューの具として使ったり、ヨーグルトにかけたりして使うと良いでしょう。
なお、ビタミンEは脂溶性ビタミンのために油との相性が良く、油と一緒に摂ると吸収されやすいといわれています。
ビタミンB1:
ビタミンB1は糖質の代謝を助ける働きがあり、エネルギー産生に欠かせない栄養素です。不足すると疲れやすくなるほか、重度の欠乏では「脚気」と呼ばれる病気を引き起こし、末梢神経障害や体重減少に加えて、心不全(脚気心)による全身のむくみが現れることがあります。食糧事情の良い現代では命にかかわるような脚気はごくまれですが、ビタミンB1不足がむくみの一因になる可能性はあります。
ビタミンB1の豊富な食材として、豚肉や豆類、ほうれん草やブロッコリーなどが挙げられます。ただし、ビタミンB1は水溶性ビタミンのため、調理の際に水を使うと溶けてしまい、含有量が減ってしまいます。そのため、溶け出した汁をスープとして使うと、食材に含まれているビタミンB1を大きく減らすことなく摂取できます。
さらに、にんにくやたまねぎ、ニラなどに多く含まれている「アリシン」という成分と一緒に摂ると、ビタミンB1の吸収が良くなることが知られています。このアリシンとビタミンB1が結合した化合物を「アリチアミン」といい、さらにその安定性を高めた化合物を「フルスルチアミン」といいます。このフルスルチアミンは、医薬品の成分としても使われています。
ビタミンB1の欠乏と考えられる症状が気になる場合や、栄養バランスが心配な場合などは、フルスルチアミンが含まれている栄養ドリンクやビタミン剤などを試すのも良いかもしれません。
マッサージやストレッチには、血流やリンパの流れを良くする効果があり、むくみの予防や改善につながることが期待できます。ここでは2種類の方法を紹介します。血行改善効果を高めるために、これらを入浴後に行うのもおすすめです。

1. 仰向けに寝て左ひざを立て、右足のふくらはぎを左ひざの上にのせる。
2. 足首からひざ裏までゆっくりと下方向に動かし、うっ滞している静脈やリンパ液をしごくように押し出す。このとき、ふくらはぎの内・外・裏側をまんべんなく行う。
3. 血流の悪い筋肉は固く強ばり圧迫により痛みを生じやすいため、この押すと痛みのある場所を探しながら、こすって痛む筋肉のある部位については各10回程度行う。足は左右を入れ替えて行う。
凝り固まったふくらはぎの筋肉を緩めることで血行が改善され、むくみの解消が期待できます。

1. 椅子に座って右足を左足の太ももの上にのせ、右足の甲を左手で持ち、右ひじを右ひざの上にのせる。
2. 右足の甲を体側に引きながら上半身を前に傾け、右ひじで右ひざをゆっくり押し下げた状態で5秒間キープ。これを左右2回ずつ行う。
坐骨神経を圧迫しているお尻の梨状筋に加え、太ももの外側、股関節まわりの筋肉が伸び、坐骨神経の緊張がゆるんで脚全体の血流が改善され、冷えやむくみの解消につながることが期待できます。

踝下は、内くるぶしの真下で、土踏まずのへりにあるツボです。顔や全身のむくみに有効とされています。他にも、足関節の痛みや立ちっぱなしの足の疲れにもおすすめといわれています。
大鐘は、内くるぶしの後ろで、アキレス腱の前にあるツボです。脚のむくみに加え、冷えや月経不順など、さまざまな症状に効果が期待できるといわれています。
築賓は、ふくらはぎの内側で、内くるぶしからひざの折れ曲がるところまでの長さの下から3分の1程度の位置で、脛骨から指幅2本分離れたあたりにあるツボです。ふくらはぎの血流を促進し、脚のむくみや冷えの改善を期待できるといわれています。
弾性の強い着圧ストッキングは、普通のストッキングに比べてむくみ解消を期待できるといわれています。ただし、弾性が強すぎるとかえって血流が悪くなったり、冷えやすくなってしまったりすることがあるため、適した強さのものを選びましょう。
むくみの対策として、減塩や栄養バランスを意識した食事を摂ること、体を動かしてなるべく筋肉がつくような習慣を続けること、そして冷えを避けることなど、ご自身でできることがいろいろとあります。一方で、腎臓や肝臓、心臓、血管の病気など、ご自身では何ともしがたい病気が隠れていることもあります。セルフケアを続けていても効果が感じられない場合は、早目に医師の診察を受けてください。
■参考文献
・伊藤 剛,家の光協会,2025「むくみ解消BOOK(余分な水を追い出して身軽なわたしに)」
・伊藤 剛,学研,2024「改訂版 いちばんわかる!東洋医学のきほん帳」
・伊藤 剛,朝日新聞出版,2018「カラダを考える東洋医学」
・伊藤 剛,高橋書店,2012「東洋医学の専門医がやさしく教える 即効100ツボ」
・ネオメディカル,2022「セルフケアとOTC医薬品 : 改訂コアカリ対応 改訂2版」
・医学書院,2000「図解生理学 第2版」