精神的ストレスや情緒不安定などが原因で、腸のぜん動運動に異常が起こり、腹痛を伴う慢性的な下痢や、ときに下痢と便秘が交互に起こることもあります。何週間も下痢が続いたり、一時的に治まり、その後再発するという現象を繰り返すこともあります。
人に会う前に急にお腹が痛くなる、通勤・通学で電車に乗ったときにトイレに行きたくなる、検査をしても大腸に腫瘍や炎症が見つからない、下痢気味なのに「私は胃腸が弱いから」とあきらめているなどの場合、この疾患を疑ってもよいかもしれません。成人のおよそ1割に上る人がこの病気だといわれています。
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潰瘍性大腸炎
何らかの原因で大腸の粘膜に慢性的な炎症を起こし、粘膜がただれたり、潰瘍が多発します。下痢と腹痛が長期間続き、粘液や血液の混じった便が出たり、発熱などの症状があらわれます。ストレスで症状が悪化します。
現在のところ原因は明らかにされていませんが、腸内細菌の関与、自己免疫反応の異常(免疫機構が正常に機能しない)、食生活の変化などが考えられています。最も多い発症年齢は20代ですが、高齢者も発症します。
大腸ポリープ
大腸の内側からイボのように突き出た球状の腫瘍です。初期の段階では自覚症状はなく、ポリープが大きくなったり、肛門の近くに発生したりすると、血の混じった便が出ることがあります。また、下痢、便秘といった症状が見られることがあります。
多くは良性ポリープですが、放置すると大腸がんに進行することもあります。高年齢になると増え、動物性たんぱく質や脂肪の過剰摂取、食物繊維の不足などが原因ではないかと考えられています。
食中毒や風邪、感染症
O-157、ノロウイルス、サルモネラ菌など、細菌やウイルスが原因となる食中毒、ウイルス感染による風邪、コレラや細菌性赤痢などによる感染症に急性の下痢の症状が見られます。新型コロナウイルスによる感染症でも下痢の症状が見られる可能性があるとされています。
細菌やウイルスの種類によっては、嘔吐や吐き気、発熱、血便、腹痛、脱水などのうち緊急性を伴う症状が出現し、治療を急ぐ必要があります。
この疾患・症状に関連する情報はこちら。 食中毒 風邪(かぜ)
乳糖不耐症、消化管アレルギー
乳糖不耐症は、牛乳などに含まれる乳糖を分解する消化酵素(ラクターゼ)が少ないために、牛乳などを飲んだとき下痢を起こす疾患です。下痢のほか、腹痛や嘔吐などの症状を起こします。日本人は遺伝的に乳糖を分解する力が弱く、牛乳で便が軟らかくなることが多いとされています。
消化管アレルギーは、食物アレルギーのうち、主に消化器に症状があらわれるものをいいます。アレルギー体質の人が特定の食品(たんぱく質を含む食品が多い)を摂取すると、下痢のほか、吐き気、嘔吐、腹痛などが起こります。主に粉ミルクの摂取により新生児や乳児に多く発症しますが、最近では若年者の消化管アレルギーが増加しています。
そのほか注意したいこと:脱水症状
下痢は体の防御反応ですが、下痢による脱水には気をつけなくてはいけません。のどの渇きはすでに脱水が始まっており、めまい、微熱、ふらつきなどの症状が現れます。
軽度の場合は、水分補給で回復することが多く、尿の色が濃くなって、量が減ってくるようなら腎不全にも至り、重症となります。さらにこの状態が進む場合は、脈拍も速くなり血圧が低下し、ショック状態も起こしかねません。下痢といえども軽く見るのは危険です。症状を的確に訴えられないことが多い小児や高齢者では特に気を付けましょう。
脱水症状に陥らないためには、水分だけでなく塩分など電解質の補給が重要です。スポーツ飲料などを摂取したり、消化の良い炭水化物を摂ったりするとよいでしょう。また、脱水症状になりかけていると感じたら、迷わず医療機関を受診し、点滴による水分補給などの治療を行ってください。