寒暖差疲労とは?症状や原因、対策を知って季節に負けない健康な体を目指そう!

寒暖差疲労とは?症状や原因、対策を知って季節に負けない健康な体を目指そう!

季節の変わり目に起こりやすい「寒暖差疲労」。特に春や秋のように昼夜の気温差が激しい時期には、身体が温度調節に追いつかず、不調を感じる方も多いのではないでしょうか。この不調、実は気温の変動が原因となる寒暖差疲労かもしれません。この記事では、最近ニュースでも耳にすることが増えている寒暖差疲労の症状や原因、対処法に加え、セルフチェックの方法もご紹介します。季節の変化に負けない健康な身体を保つために、寒暖差疲労への理解を深めて快適に過ごしましょう。
久手堅 司 先生

監修

久手堅 司 先生 (くでけんつかさ) (せたがや内科・神経内科クリニック 院長)

寒暖差疲労とは?気象病の一つ

寒暖差疲労とは、季節の変わり目や急激な温度変化によって自律神経が乱れ、心身に疲労感が生じる状態を指します。これは「気象病」の一つで、特に気温差7℃以上を目安に、不調が現れやすい傾向があります。急激な気温変化が起こると、寒暖差に体が適応しようとして、体温調整を担う自律神経が過剰に反応し続けます。結果、体に大きな負担がかかり、寒暖差疲労を引き起こすのです。特に、温度変化に慣れていない方や体温調整がうまくできない方、そしてご高齢の方などに多く見られる症状です。

そもそも寒暖差とは、以下の3つのパターンをいいます。

  • 当日の最低気温、最高気温の差
  • 前日と当日の寒暖差、週単位での寒暖差
  • (冷房の効き過ぎによる)室内外の寒暖差

    寒暖差疲労によって起こる症状 ―体の不調、心の不調―

    気温差が大きくなると、体が気温差に適応しようとして自律神経が過剰反応し乱れ、体内の温度調整がうまくいかなくなります。適切な体温が保ちにくくなるため、心身ともに不調を感じやすくなるのです。しかし、症状は人によって異なるため、寒暖差による不調だと気づきにくい場合もあります。ここでは、寒暖差疲労による典型的な症状を「体の不調」と「心の不調」に分けて解説します。

    体の不調

    寒暖差による体の不調としてよく見られるのが、気温変化に対応しようと自律神経が働く際に、エネルギーが消耗されることによる全身のだるさや疲労感、倦怠感です。また、肩こり、頭痛、耳鳴り、めまい、ふらつき、手足の冷え、便秘や下痢、不眠などの症状も現れることがあります。

    心の不調

    さらに、体の不調に加えて、イライラや不安感、ストレスの増加による精神的な不調が生じることもあります。情緒不安定と感じる場合は、寒暖差疲労の可能性が考えられます。

    寒暖差疲労が慢性化すると、わずかな気温差でも不調を感じやすくなるため、寒暖差疲労が慢性化しないよう、まずは寒暖差疲労を起こさないような注意が必要です。

    寒暖差疲労が起こる主な原因は、体温調整に使うエネルギー消費の増大

    続いて寒暖差疲労が起こる原因について解説します。
    人間の体は外気温が高いときには発汗によって体温を下げ、逆に外気温が低いときには体内の熱が逃げないように熱放散を抑制したり熱を産生して、体温を3637度前後に保とうとします。これらの働きは自律神経によってコントロールされています。しかし、寒暖差が大きいと、自律神経が絶えず気温変化に対応する必要があり、通常以上に負荷がかかってしまいます。その結果、体温の調整にかかるエネルギー消費量が大きくなり、心身の不調が起こりやすくなるのです。

    特に、1日の気温差が目安7℃以上も上下する日や、例えば冬に、暖かい室内と冷たい外気の室外を頻繁に行き来するような状況が挙げられます。このような状況では、私たちの体に大きなストレスがかかっている他、交感神経と副交感神経が絶えず気温に適応するように働かなければならないため、疲労が蓄積しやすくなります。

    寒暖差疲労が起こりやすいのはいつ?

    寒暖差疲労は、特に春や秋の季節の変わり目に起こりやすいとされています。暖かさと寒さの両方を感じるような気温差が生じると、体は寒暖差の影響を受けやすくなります。春や秋は日中と朝晩の温度差が大きいため、寒暖差疲労が起きやすい状況が自然と増えるのです。

    また、冷房の使用で屋内外の気温差が大きくなる夏や、暖房が効いた室内と冷え込む外気との差が生まれる冬も、寒暖差疲労が発生しやすい季節です。特に温暖化の影響もあり、夏は冷房をつけている時間が長く、一日中冷房の中にいることも多くなっています。このような季節の変わり目や温度管理が難しい環境では、普段以上に体調管理が重要です。

    寒暖差疲労と寒暖差アレルギーの違いは?

    寒暖差疲労と寒暖差アレルギーは、どちらも気温の変化によって体に不調が現れる点で共通していますが、そのメカニズムや症状には違いがあります。

    寒暖差疲労は、気温の変化に適応しようとする自律神経が過剰に働き、エネルギーを消耗することで生じます。このため、体がだるく感じたり、頭痛や肩こり、眠気、不安感など、全身に疲労や不調が現れるのが特徴です。

    一方、寒暖差アレルギーは、正式には「血管運動性鼻炎」と同義です。温度差によって鼻の粘膜の知覚神経が刺激されることでくしゃみや鼻水が起き、鼻の粘膜の血管が拡張することで鼻水・鼻づまりといったアレルギー症状が出る状態を指します。これはアレルギー物質が関与しているわけではなく、温度差そのものによって神経調節のバランスを失うことで、アレルギー性鼻炎に似た症状を引き起こすとされています。

    つまり、寒暖差疲労は全身に広がる疲労感や倦怠感が主な症状であるのに対し、寒暖差アレルギーは鼻を中心とした呼吸器系の症状というのが主な違いです。どちらも自律神経の乱れが関係していますが、寒暖差アレルギーは鼻粘膜の反応が原因であり、それぞれに応じた対応や予防法が求められます。

    <寒暖差アレルギーについて知りたい方はこちらをチェック>
    寒暖差アレルギーは本当のアレルギーではない!?風邪や花粉症でもない鼻症状

    寒暖差疲労チェック

    寒暖差疲労のセルフチェックは、季節の変わり目や急激な気温変化に体がうまく対応できず、さまざまな不調を引き起こしているかを見極めるための指標です。以下の項目に当てはまるか確認してみましょう。

    <寒暖差チェックシート>

    • 暑さ、寒さが苦手
    • エアコン(冷房・暖房)が苦手
    • 周りの人が暑いのに、自分だけ寒い。長袖が常に手放せない。
    • 顔がほてりやすい、全身がほてりやすい
    • 温度差が強いと、頭痛や肩こり、めまい、だるさ、関節痛、喘息、下痢などのさまざまな症状が現れる。
    • 熱中症になったことがある、近い状態になったことがある
    • 季節の変わり目に、体調不良になる
    • 冷え症がある
    • 温度が一定の環境にいる時間が長い(オフィス、自宅でも一日中エアコンをつけている)
    • 代謝が悪い、体がむくみやすい。

    監修:久手堅 先生(せたがや内科・神経内科クリニック 院長)

    チェックが13個の場合は軽症の可能性、46個であれば中等症の可能性7個以上は重症の可能性が考えられ、注意が必要です。ただし、このチェックシートはあくまで目安であり、「当てはまる=即治療が必要」というわけではありません。

    寒暖差疲労や気象病といわれる症状は自律神経が深く関係していますが、気象病を起こす78割は女性であり、更年期障害の症状と重なる部分も多くあります。更年期障害も自律神経の乱れが原因となるため、連動して同じ時期に不調になりやすい特徴も。チェックの数が多い場合、以下の対処法を参考に一度医療機関の受診を検討してみるのも良いかもしれません。

    寒暖差疲労への対処法

    頭痛、めまい、肩こり、関節痛、喘息、下痢などが続く場合は、自己判断せず専門家の診断を仰ぐことが重要です。まずは内科を受診し、必要に応じてさらに専門的な治療が必要かを確認しましょう。専門外来として寒暖差疲労外来を設けている医療機関もあります。寒暖差疲労は放置すると体調が悪化する可能性があるため、早めに医療機関を受診するなどの対応が大切です。

    寒暖差疲労への対策

    寒暖差疲労対策には、自律神経を整えることが重要です。急激な温度変化に体が対応できるよう、日常的に自律神経を整えることで、体が寒暖差に強くなり、症状の発症を和らげることができます。自律神経が乱れると、体温調節が難しくなり、さまざまな不調が現れるため、意識的に整える習慣を取り入れることが効果的です。 以下では、自律神経を整える方法を基盤として寒暖差疲労対策をご紹介します。

    規則正しい生活を送る

    規則正しい生活を送ることは、寒暖差疲労を予防し、体のバランスを整えるために非常に重要です。規則正しい生活の具体例について解説します。

    質の良い睡眠・生活リズムを心がける

    質の良い睡眠は、脳の疲労回復をサポートします。夜は照明を控え、スマートフォンなどのデジタル機器の使用を避けることで、リラックスしてぐっすりと眠れる環境を整えることができます。さらに、朝は太陽の光を浴びることで、自然な生活リズムの促進も可能です。

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    シャワーのみで済まさず、湯船に浸かる

    少しぬるいと感じる温度のお風呂に首までしっかり浸かり、体の芯まで温めることも、自律神経を整えるのに効果的。寒暖差疲労の症状の一つである冷え症対策として、保温・保湿効果のある入浴剤を使用するのもおすすめです。

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    適度な運動を取り入れる

    定期的な運動は、体力の向上、血行改善、そしてストレスの軽減に効果があります。ウォーキングやストレッチなど、無理なく続けられる運動を日常生活に取り入れることが大切です。また、デスクワークを行っている方は、定期的に立ち上がるなどして、座りっぱなしの時間を避けるよう心がけましょう。

    食生活を整える

    食生活は、体の調子を整えるためにも、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。エネルギーの産生が適切に行われ、必要な栄養素の摂取や疲労回復にもつながります。食事をする際には、以下のポイントを意識してみてください。

    体を温めるバランスの良い食事

    人参や大根などの根菜類、さらにタンパク質など、体を温める食材を意識して摂取することがおすすめ。一方で、冷たい飲み物や体を冷やす食べ物の取りすぎには注意が必要です。

    近年、若い世代では栄養バランスの整った食事を毎食行う人の割合が減少し、主食のみの食事が増えている傾向があります。この結果、エネルギーの基となる栄養素に比べて、ビタミンやミネラルが不足しがちです。特にビタミンB1は、糖質からエネルギーを生成する過程に不可欠な栄養素です。ビタミンB1を十分に摂取することで、エネルギーを効率よく得られ、抗疲労効果も期待できます。日常的にビタミンやミネラルが不足している方は、栄養機能食品や医薬部外品の栄養ドリンクを利用するのも一つの方法です。

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    脳腸相関を意識した食事

    脳と腸は互いに影響しあっていて、この関係を「脳腸相関」と呼びます。腸の調子が良いと、身体や心の調子も良くなることがわかっています。ヨーグルトや味噌、納豆などの発酵食品を積極的に取り入れる習慣を身につけることが大切です。

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    脱水対策

    脱水症状は疲労感を増すため、こまめに水分を摂取することを忘れないようにしましょう。

    首や肩のストレッチ

    首や肩のストレッチは、自律神経を整えるための重要な対策として、寒暖差疲労の改善に役立ちます。ストレッチを行うことで筋肉の緊張が緩和され、血流が改善されるため、自律神経のバランスが整いやすくなります。特に、首や肩の筋肉が凝り固まると、自律神経の乱れにつながりやすいため、定期的なストレッチはその乱れを予防する手段として非常に効果的です。リラックスした状態を保つことで、寒暖差に対する体の機能をサポートすることが可能になります。

    以下の首のストレッチは、タオルを1本用意するだけで簡単にできます。1323セットほど行うのが効果的です。

    <首のストレッチ>

    1. 折りたたんだタオルの両端を持ち、後頭部と首の境目に引っ掛ける。
    2. 斜め上を向き、タオルを引っ張る。タオルと首が押し合うように首は下へ力を込める。このまま30秒キープ。このとき、勢いをつけたり無理に伸ばしたりしないようにする。
    3. 斜め下を向き、タオルを引っ張る。首はタオルの圧に逆らって後ろに引っ張る。これも30秒キープ。

    監修:久手堅 司 先生(せたがや内科・神経内科クリニック 院長)

    自律神経を整えるツボを押す

    自律神経を整えるためにツボを押すことは、効果的な対策の一つとして広く知られています。特に、精神的な緊張を緩和する効果があります。以下に、具体的なツボとその効果をご紹介します。

    【眠れないときにおすすめのツボ】

    ■三陰交(さんいんこう)
    足の内くるぶしから親指の幅3本上のあたり 左右同様
    ■神門(しんもん)
    手首の小指側、手首のシワのやや内側にあるくぼみ 左右同様

    【便秘におすすめのツボ】

    ■足三里(あしさんり)
    ひざのお皿の下から指の幅4本分下にあたる、すねの骨の外側にあるくぼみ 左右同様

    【眼精疲労におすすめのツボ】

    ■合谷(ごうこく)
    手の甲、親指と人差し指の間のくぼみ 左右同様

    【肩こりにおすすめのツボ】

    ■曲池(きょくち)
    肘を曲げたときにできるシワの外側のくぼみ ※左右同様
    ■手三里(てさんり)
    肘を曲げたときにできるシワから指3本分下がった前腕の外側 ※左右同様

    左右合計で12箇所のツボを、深呼吸をしながらリラックスした状態で押します。まず3秒間力を加え、その後3秒かけて力を緩めることで、自律神経を整えることができます。

    自律神経を整えて寒暖差疲労を乗り越えよう

    気温の変化が激しい現代では、適応しようと知らず知らずのうちに体に負担がかかり、自律神経の乱れから来る不調を感じる人は多いです。この不調を引き起こす寒暖差疲労を防ぐためには、日常生活での自律神経を整えるケアがますます重要になっています。日頃から適度な温度差を意識しつつ、規則正しい生活や食生活を整えてみてください。日常生活の中で小さなケアを積み重ね、寒暖差に強い体を作っていきましょう!

    参考文献

    • 誠文堂新光社「気象病ハンドブック: 低気圧不調が和らぐヒントとセルフケア」久手堅司(著)