監修
福渡 努 先生 (滋賀県立大学 人間文化学研究院 教授/日本ビタミン学会 理事/ビタミンB研究委員会 副委員長)
「スタミナ」の語源は、ラテン語で「糸」を意味する「stamen(スタメン)」です。これが「生命をつなぐ糸」という比喩的な意味を持つようになり、やがて、生命力や活力、持久力を表す言葉として定着したと考えられています。
日本では戦後、マラソンやボクシングなどのスポーツの普及とともに、「持久力がある」ことを「スタミナがある」というようになり、現在では体力や精力などが長続きすることを「スタミナがある」と表現するようになってきました。
体力が長続きしない「スタミナ切れ」は、なぜ起こるのでしょうか。主な原因を6つに整理して解説します。
呼吸や心臓の鼓動といった生命維持活動から、仕事やスポーツなどの身体活動まで、人は常にエネルギーを消費しています。そのエネルギーの源は、食べ物や飲み物。食が細い場合や、活動量に対して食事の摂取量が少ない場合、エネルギー不足となってスタミナを発揮できなくなります。
エネルギー源となるのは、「糖質(炭水化物)・タンパク質・脂質」の三大栄養素ですが、これらだけではエネルギーを作り出して利用するエネルギー代謝ができません。栄養素のエネルギー源をエネルギーへと、効率よく変換するためには、ビタミンなどの「微量栄養素」が不可欠です。偏食などで、ビタミンが不足すると、食べているのにエネルギーが作られずに、スタミナ切れが起こることも。
若いうちは体力が充実していて余裕もあり、多少疲れを感じても一晩眠れば回復します。しかし加齢とともに筋肉量や筋力の低下、心肺機能の低下などが進み、回復に時間がかかるようになります。疲れが蓄積しやすくなり、同じ動作をするにも以前より大きな努力を必要とするため、「スタミナがなくなった」と感じる場面が増えやすくなります。

自律神経は、脈拍や血圧、発汗、体温調節、胃腸の運動など、生命活動に重要な働きを、無意識のうちにコントロールする神経です。身体を活発に動かすためのアクセルのような働きをする交感神経と、心身をリラックスさせるブレーキのように働く副交感神経から構成されています。ストレスなどからこのバランスが崩れると、体調不良とともに気力や体力が持続しにくくなります。これもスタミナ不足を感じる原因の一つとして考えられます。
<関連記事>
・自律神経を整えるには?健康に過ごすためにすぐ実践できるセルフケアを紹介
・【セルフチェック】自律神経が乱れる原因を理解して、健康的な生活を目指しましょう
不規則な生活は生体リズムを乱してしまい、食欲不振や体調不良、睡眠不足などを招きます。また、体に疲れがたまっているのに休養が不十分なまま活動を続けると、常に疲れが蓄積した状態になり、スタミナ切れが起こりやすい状態になります。
ゆっくり休んでも疲れがとれない、体重減少や発熱などの疲れ以外の症状もある、過去に経験したことがないほどの疲労感がする――。このような場合は注意が必要です。B型肝炎、結核などの慢性感染症や甲状腺疾患、がんなどの病気が隠れているケースもあります。異常を感じる場合は早めに医療機関を受診しましょう。
以下の項目で当てはまるものはありませんか?自分の状態を確認してみましょう。
・階段の上り下りですぐに息が切れる
・しっかり寝たはずなのに、朝から体が重だるい
・電車に乗ると空席を探し回る
・集中力や根気が途切れたり、ミスが増えたと感じる
・週末に寝溜めをすることが増えた
・ちょっとした運動でも翌日以降まで疲れが残る
・何をするにも面倒と感じたり、イライラしやすい
※これは医療診断ではなく、日常の疲労や体力低下の目安としてご利用いただくものです。
スタミナ切れの対策には、食事や栄養の見直しが有効です。スタミナ切れ対策として特に意識して摂取したい栄養素をご紹介します。
糖質は、主食として食べる食品、具体的には米や小麦粉などの穀類から作られるご飯やパン、麺などに多く含まれています。
体のエネルギー源となる栄養素は、糖質・タンパク質・脂質の3つ。これらのうち、タンパク質や脂質は、摂取してからエネルギーに変わるまで、複雑な経路を経るのですが、糖質は比較的簡単にエネルギーに変換されます。スタミナ切れを感じた時に、手っ取り早くエネルギーを補給するのに適した栄養素といえます。
最近、ダイエットやメタボ対策などのために「糖質制限」がブームのように広がっていますが、極端な糖質制限はスタミナ不足を招く恐れがあるため、適切な量の糖質を摂取するようにしましょう。
脂質は主に、調理に用いる油脂や肉の脂身に含まれている栄養素です。1g当たりのエネルギー量が9kcalあって、これは糖質(4kcal)の2倍以上。そのためエネルギー源を確保するという点では優れた栄養素と言えます。
ただし、脂質より糖質が優先してエネルギー変換に使われるため、糖質と異なり、摂取後すぐのスタミナ回復はあまり期待できません。また、脂質の中でも特に動物性食品の脂質の取りすぎは、動脈硬化を進みやすくしてしまう懸念があるので注意が必要です。
エネルギー源となる糖質などの栄養素は、体内で酵素の働きによってエネルギーに変換されています。糖質に関しては、ビタミンB1が補酵素として働きます。ですからビタミンB1が不足すると、どれだけ糖質を摂っても効率よくエネルギーに変換することができず、スタミナ切れが起きやすくなる可能性があります。
ビタミンB1は、豚肉や豆類、穀類などに豊富に含まれています。なお、ビタミンB1を体内へ吸収されやすいように改良した「ビタミンB1誘導体」として、フルスルチアミンという成分があり、医薬品のビタミン剤に用いられています。
ビタミンB2やB6も上記のB1と同様に、エネルギーの代謝に補酵素として働きます。特に、ビタミンB2は脂質、B6はタンパク質をエネルギーに変えるサポートをします。これらが不足すると、摂取した栄養を活用しにくくなり、スタミナに影響してきます。
ビタミンB2が豊富な食品としては、魚やレバー、牛乳・乳製品、卵などが挙げられ、ビタミンB6は、魚や肉などの動物性食品の他、野菜や穀物などに広く含まれています。
<関連記事>
・ビタミンB2の働きとは?多く含まれる食べ物や1日に必要な摂取量も解説
・ビタミンB6の働きとは?摂取量の目安やビタミンB6を多く含む食品も紹介
これらは、骨髄で正常な赤血球を作ったり、神経細胞の働きを維持したりするために必要な栄養素です。
また、ビタミンB12と葉酸が少ない人は、動脈硬化との関連が示されていて“悪玉アミノ酸”と呼ばれることもある「ホモシステイン」というアミノ酸の血中濃度が高いことがわかってきています。そして、最近国内で行われた研究※からは、ホモシステインが高い男性は体の疲労、女性は意欲低下を感じていることが分かってきました。
※Nutrients 2026, 18(6), 941
ビタミンB12は植物性食品にはほぼ含まれておらず、特に魚介類,レバーに多く、乳製品、卵などにも含まれています。葉酸はレバーや緑黄色野菜に多く含まれています。
<関連記事>
・葉酸の働きとは?摂取量の目安や葉酸が豊富な食べ物も紹介
・ビタミンB12の働きとは? 1日の摂取量の目標や過不足の影響を解説
ビタミンCは、副腎の働きに関連していることが知られています。副腎とは、腎臓の上にある内分泌器官(ホルモンを作る臓器)で、ストレスが加わった時、それに対応して体の状態を調節するホルモンを分泌しています。
またビタミンCは、抗酸化作用があることも大きな特徴です。体内で栄養素をエネルギーとして利用する過程では活性酸素が発生して、この活性酸素が細胞にダメージを与えてしまうのですが、ビタミンCの抗酸化作用はそのダメージを抑制してくれます。
ビタミンCは、野菜や果物、とくに柑橘類に豊富です。
全身の細胞は常に「栄養」と「酸素」を必要としています。スタミナの維持には、これら両者が全身の細胞に行きわたることが欠かせません。
前者の栄養については、ここまでに解説したように、エネルギーの源である糖質などの主要栄養素が不足しておらず、かつ、主要栄養素からエネルギーを作り出す時に必要なビタミン類が不足していないことがポイントとなります。それに対して後者の酸素については、肺を中心とする呼吸機能がきちんと働いていること、そしてヘモグロビン(血色素)が不足していないことがポイントです。
ヘモグロビンは赤血球の中の成分で、酸素と結合して全身を巡り、体の隅々に酸素を送り届けています。
このヘモグロビンは、食品中に含まれている鉄を利用して作られます。そのため、鉄の摂取が不足するとヘモグロビンも不足して、いわゆる「貧血」となってしまい、スタミナがでません。特に女性は鉄欠乏性貧血になりやすいことが知られています。
鉄は、レバー、赤身肉、赤身魚、シジミ、アサリなどに豊富に含まれています。

ここでは、忙しい時でも手軽に作れるおすすめのスタミナレシピをご紹介します。
豚肉に豊富に含まれるビタミンB1は、糖質をエネルギーに変えるために不可欠な栄養素です。これにネギやにんにくに含まれる成分であるアリシンを組み合わせることで、ビタミンB1の吸収率がさらに高まり、効率的な疲労回復が期待できます。
材料(2人分)
・豚バラ肉(またはこま切れ肉):200g
・長ネギ:1本
・にんにく:1かけ(チューブでも可)
・ごま油:大さじ1
(A)醤油・酒・みりん:各大さじ1
(A)砂糖:小さじ1
作り方
・豚肉は食べやすい大きさに切り、長ネギは1cm幅の斜め切りにする。にんにくは薄切りにする。
・フライパンにごま油とにんにくを入れて弱火で熱し、香りが立ったら豚肉を加えて中火で炒める。
・肉の色が変わったら長ネギを加え、ネギがしんなりするまで炒める。
・合わせた(A)を回し入れ、全体に味が絡むまで強火でさっと炒め合わせる。
スタミナメニューの王道であるレバニラは鉄分、ビタミンB群、ビタミンAが豊富な一品です。レバーの鉄分とニラのビタミンC、ビタミンEを一緒に摂ることで、全身への酸素供給をスムーズにし、細胞の酸化を抑制する効果が期待できます。
材料(2人分)
・豚レバー(下処理済みのもの):150g
・ニラ:1束
・もやし:1/2袋
・片栗粉:適量
・(A)醤油・オイスターソース:各大さじ1
・(A)おろし生姜:小さじ1
作り方
・ニラは4cm幅に切り、レバーはキッチンペーパーで水気を拭き取って片栗粉を薄くまぶす。
・フライパンに油(分量外)を熱し、レバーを並べて両面をこんがりと焼いて火を通し、一度取り出す。
・同じフライパンでもやし、ニラの順に炒め、レバーを戻し入れる。
・合わせた(A)を加え、手早く混ぜながら全体に味を馴染ませる。
マグロの赤身は、筋肉の材料となるタンパク質や分岐鎖アミノ酸(BCAA)、ビタミンB6が豊富です。さらにそこへ合わせる山芋(とろろ)は、生薬において山薬(さんやく)と呼ばれ、古くから滋養強壮や疲労回復に優れた食材として重宝されてきました。また、火を使わず手軽に作れるのも魅力です。
材料(1人分)
・マグロ(赤身・刺身用):100g
・山芋(とろろ):60g
・ご飯:お茶碗1杯分
・刻み海苔:適量
・大葉:2枚
・(A)醤油:大さじ1
・(A)みりん:小さじ1
・(A)わさび:お好みで
作り方
・マグロを厚さ1cmほどのそぎ切りにする。
・ボウルに(A)を合わせ、マグロを入れて10分ほど漬け込む。
・山芋は皮をむいてすりおろす。
・器にご飯を盛り、刻み海苔を散らして大葉をのせる。
・漬け込んだマグロとすりおろしたとろろを盛り付ける。
ここからは、食事面以外のポイントを紹介します。

体をよく動かすことで筋肉がつき、スタミナの源であるエネルギーを筋グリコーゲンとして蓄えやすくなります。また、筋肉がつくと、身体活動の負荷に対する余裕が生まれて、疲れを感じにくくなります。
運動は、有酸素運動と筋力トレーニングに大別できますが、スタミナにはそのどちらも大切。有酸素運動とは、体内に酸素を十分に摂り入れながら行う運動のことで、ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどが該当します。これらは心肺機能や代謝を高めてスタミナアップにつながります。
特に60代~70代以降の方や、久しぶりに運動するという方におすすめなのが、自分の体力に合わせてペースを調整できる「ウォーキング」や「ジョギング」です。関節や心臓への負担も少なく、心肺機能や代謝を高め、全身の血流を良くすることができる有酸素運動です。
一方、筋トレも同様に重要です。筋肉がつくと体を動かす際に必要とされる筋力に余裕が生まれ、その結果として身体活動が楽になります。また、代謝も高まることも、スタミナアップにつながってきます。
有酸素運動と筋トレをバランスよく組み合わせながら、無理なく続けましょう。
<関連記事>
・ストレッチの効果とは?疲労回復につながる理由や行う際のポイントを紹介
・筋トレ後はどんな食事を何時間以内に食べれば良い? おすすめの食べ物や注意点を紹介
・ジョギングとランニングの違いとは? 効果や運動時の栄養補給法について紹介
疲労回復にとって最も大切な要素は睡眠です。睡眠時間を十分に確保するとともに、「質」の高い睡眠をとることが大切です。
質の高い睡眠とは、いったん眠りについたら途中で目覚めることなく、翌朝、「よく眠れた」という爽快な気分で起きられるような睡眠を指します。そのような睡眠をとるためには、騒音や照明はできるだけシャットアウトして、室温や湿度なども快適と感じる範囲に調節しましょう。また、夜間のスマホ使用は睡眠を妨げるため、就寝の少し前から手にせず、トイレに立つ時に見るのもできるだけ避けましょう。
なお、睡眠前の飲酒、いわゆる「寝酒」は、確かに入眠をしやすくすることがありますが、睡眠を浅くしたり尿意が生じたりして、睡眠の質を低下させてしまいます。
機能性表示:本品にはユーグレナグラシリス由来パラミロン(β-1, 3-グルカンとして)を含みます。ユーグレナグラシリス由来パラミロン(β-1, 3-グルカンとして)には、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を改善し、起床時の疲労感を軽減する機能、作業時の一時的なストレス(イライラ感、緊張感)を緩和する機能が報告されています。
精神的なストレスも、スタミナの減退に関係している可能性が考えられます。ですから、スタミナの維持には、ストレス解消、煮詰まった時の気分転換も忘れてはいけないポイントと言えます。
例えば、睡眠の少し前の入浴(シャワー浴ではなく湯舟につかる入浴)も、よい習慣と言えます。血行促進やリラックス効果、睡眠を誘う効果を期待できます。
また、ストレスを感じると呼吸が浅くなり、体に余計な力が入って疲れやすくなります。お腹を膨らませるように鼻からゆっくり息を吸い、吸った時間の倍くらいの時間をかけて口から細く長く吐き出す「腹式呼吸」を数回繰り返すだけでも、心身をリラックスさせるのにも役立ちます。
<関連記事>
・入浴による健康効果とは?疲労回復との関係や基本となる入浴方法も紹介
・忙しい社会人におすすめのストレス発散方法! ストレスを少しでも緩和しよう
・イライラしたときはどうする?イライラを解消・抑えるための12の対処法を紹介

日々の生活習慣の改善とともに、古くからスタミナ維持や疲労回復に用いられてきた生薬の力を借りることも、滋養強壮の一助となります。
「滋養強壮」とは、体が本来持っている基本的な機能が崩れた時に、栄養を補うことで体力をつけて体を強くし、健康に導くことを意味します。体本来の機能が充実した結果として、健康を保つだけでなく、疲労回復、体力・免疫力の向上につながると考えられます。例え話として、人の体を樹木としてみると、根を強く張り、土中の栄養をしっかりと吸収し、樹木そのものを根本から元気にすることが、滋養強壮のイメージに近いと言えます。
「しっかり食べているはずなのに疲れが抜けない」「気力が湧かない」といった時には、エネルギー代謝を助けるビタミンと、体を内側からサポートする生薬の両方が入った「ビタミン含有保健薬」などの市販薬を試してみるのもよいでしょう。

外食の「スタミナ定食」を注文すると、肉類たっぷりのおかずに大盛のライスがセットになって出てきます。エネルギー量は確かに十分すぎるほどでしょう。しかし、スタミナにとって肝心なビタミンB群などの微量栄養素が足りていない可能性があります。このように現代社会では、食が細い人だけでなく、たくさん食べている人でも意外なほどスタミナ切れを起こしやすい食習慣になりがちです。今回お話ししたことをぜひ、明日からのスタミナアップにお役立てください。
スタミナ作りで大切なことは、単にたくさん食べれば良いというものではありません。エネルギー源と、それを動かすビタミン。そして十分な休息。このバランスを整えることが、毎日を全力で楽しむための秘訣です。1日で劇的に変わるものではありませんので、ご自身のライフスタイルに合わせて無理のない範囲で、今日からできる習慣を少しずつ取り入れてみてください。
■参考文献
・金芳堂『図解 スポーツ健康科学入門 第2版』2025,北條達也/編著
・日経BP『薬局OTC販売マニュアル』2021, 鈴木伸悟/著
・建帛社『食事と健康の科学―食べること“食育”を考える (第3版)』2010, 池本 真二/稲山 貴代【編著】