監修
永武 毅 先生 (桜みちクリニック 院長)
風邪症状を改善するには、ウイルスと戦って消耗した体力を補い、免疫力を高めることが重要です。そのためには、食事が大きな役割を果たします。
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まずは、どんな症状かに関わらず風邪全般で意識したい栄養素や、具体的な食材例を下記にまとめました。
<風邪をひいたときに役立つ栄養素と食材一覧>
栄養素 | 食材例 |
---|---|
タンパク質 | 卵、豆腐、白身魚など |
ビタミンA | ほうれん草、ニンジン ※ビタミンAの前駆体であるβ-カロテンに抗酸化作用があります。 |
ビタミンC | じゃがいも、バナナ |
ビタミンB群 | 卵、豆腐、鯛 |
エネルギーの源となるタンパク質は、炭水化物、脂質とともに三大栄養素の一つ。タンパク質が欠乏すると体力や免疫機能の低下につながるとされているため、風邪で体が弱っているときにも非常に重要な栄養素です。食欲の有無にかかわらず、意識して摂取しましょう。
<消化がよく、タンパク質を豊富に含む食材例>
卵、豆腐、白身魚など
どちらも「抗酸化ビタミン」と言われ、免疫機能の低下などを引き起こす活性酸素の働きを抑える作用があります。また、粘膜の健康維持を助ける働きがあるため、鼻やのどの症状にも効果が期待できる栄養素です。
さらにビタミンCには、風邪などの病気に対する抵抗力を強める働きもあります。
<消化がよく、抗酸化ビタミンを豊富に含む食材例>
ビタミンA※1:ほうれん草、ニンジン
※1:ビタミンAの前駆体であるβ-カロテンに抗酸化作用があります。
ビタミンC:じゃがいも、バナナ
ビタミンA・ビタミンCに関連する記事はこちら ビタミンAの含まれる食べ物は? ビタミン・ミネラル事典 ビタミンCの含まれる食べ物は? ビタミン・ミネラル事典
エネルギーを生み出すために、三大栄養素を補助する働きがあるビタミンB群。風邪をひくと多くのエネルギーを消費するため、体力を回復するためにビタミンB群のこの働きが役立つのです。
さらにビタミンB2は、粘膜の健康維持に役立つ働きもあります。
<ビタミンB群を多く含む食材例>
卵、豆腐、鯛
ビタミンB群に関連する記事はこちら ビタミンB₂の含まれる食べ物は? ビタミン・ミネラル事典 疲労対処の新常識バラエティに富んだビタミンB₂の役割~ストレスによる胃粘膜障害の研究を例に~ 疲労対処の新常識ビタミンB₂の役割
風邪のときは、水分が不足しやすくなります。発熱時の発汗や鼻水、下痢・嘔吐などの症状で、水分が体外に出る機会が多いためです。水分が不足すると脱水症を引き起こす危険があるため、飲料や食事から十分に水分を補給することが大切です。
また、のどに症状がある場合、水分を多めに摂ることで痰の粘り気が少なくなって排出されやすくなり、不快感を軽減したり呼吸を楽にしたりする効果も期待できます。
風邪の原因であるウイルスなどの病原体は熱に弱い特性があり、風邪をひいたときに体温が上がるのは体内を病原体が苦手な環境にする狙いがあると考えられています。風邪を早く治すためにも下記食材などを摂ると良いでしょう。
<体を温める働きがある食材例>
ネギ、ショウガ
また風邪をひいているときは胃腸機能が低下するため、さらなる負担をかけないよう、消化に良い食材・調理法を意識することも重要です。
これらが風邪のときの食事のポイントになりますが、さらに症状やシーンによっても意識したい点があります。以下に挙げる項目をチェックして、ぜひ食事に役立ててみてください。
また食事で十分な栄養が摂れていないと不安に感じる場合は、補助としてビタミン剤や栄養ドリンクを活用するのも一つの手です。
<症状・部位別|おすすめの具体的な食べ方例の一覧>
栄養素 | 食材例 | 食材例 |
---|---|---|
せき・のど(喉)の痛みがつらい風邪 | 野菜ジュース | ビタミンA、ビタミンCなど |
フルーツがたくさん入ったゼリー | ビタミンCなど | |
レモネード・ゆず茶 | ビタミンC | |
発熱・悪寒がつらい風邪 | 卵がゆ・卵入り煮込みうどん | エネルギー、ビタミンB₂ |
湯豆腐 | ビタミンB₁、水分 | |
梨 | 水分 | |
鼻水・鼻づまりがつらい風邪 | 野菜たっぷり具沢山スープ | ビタミンA・B₂・C |
鍋料理 | ビタミンA・B₂・C | |
下痢・吐き気・お腹の調子が悪くなる風邪 | すり下ろしりんご | ペクチン |
ヨーグルト | タンパク質、ビタミンB₂、カルシウム |
せきが出たりのどが痛むときは、炎症を悪化させないために、香辛料や強い酸味・塩分といった刺激物を避けることが大切です。その上で、粘膜の健康維持を助けるビタミンA・B2・Cを積極的に摂取しましょう。せきの症状がひどいときは体力を消耗しやすいため、エネルギーをしっかり補給することも意識したいところです。
また、古くから滋養強壮に良い食材とされているハチミツも活用できるでしょう。殺菌作用などについて研究が行われていることに加え、ブドウ糖や果糖などの糖質を主成分としているため、エネルギー補給に重宝します。消化吸収も早いので体が弱っているときにもおすすめです※2。
※2:1歳未満の赤ちゃんには与えないでください。乳児ボツリヌス症を発症させる恐れがあります。
のどの痛みが強く飲み込むことがつらい場合は、喉ごしが良い食べ物を選ぶなど、形状や調理法も工夫しましょう。
・野菜ジュース
固形物が食べられないほどのどが痛いときは、野菜ジュースを飲むことでビタミンA・ビタミンCなどを補給することができます。
・フルーツがたくさん入ったゼリー
ビタミンCなどが豊富に入ったフルーツを手軽に摂ることができます。喉ごしが良いため食べやすい点でもおすすめです。
・レモネード・ゆず茶
ビタミンCとハチミツを同時に摂ることができ、水分補給にも役立ちます。
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熱が出たり、体は熱いのに寒気がしたりするときは、まず水分とエネルギーをしっかりと補給することが重要です。併せて、発熱によって消耗しやすいビタミンB1・B2などを意識的に摂取すると体力の回復を助けてくれるでしょう。
食欲がないときは、水分とエネルギーの補給ができる冷たい果物やゼリーなど、食べられる物から栄養を摂りましょう。
・卵がゆ・卵入り煮込みうどん
エネルギーとビタミンB2を効率よく補給できます。温かいおかゆやうどんは胃腸にも優しくおすすめです。
・湯豆腐
消化によく、ビタミンB1と水分を摂ることができます。豆腐は大豆からできているため、炭水化物を摂りにくいときのエネルギー補給にも良いでしょう。
・梨
水分が多いため、発熱時の体の火照り(ほてり)を冷ますのを助けてくれるでしょう。ただし、体を冷やしてしまうので悪寒(おかん)があるときには避けると良いでしょう。
粘膜の健康維持を助けるビタミンA・B2・Cを意識的に摂取しましょう。また、温かいものを食べると鼻づまりの軽減も期待できます。
<具体的な食べ物例>
・野菜たっぷり具沢山スープ
数種類の野菜を入れることで、ビタミン補給に役立ちます。味噌、コンソメ、塩などを使って、風邪などの具合が悪いときでも食べられる味に工夫すると良いでしょう。
・鍋料理
野菜の他に、魚や肉、豆腐など様々な具材を手軽に摂ることができます。具材や味付けは体調と相談して、無理せず食べられるものを選びましょう。
下痢や嘔吐で水分の排出が多くなると脱水症を引き起こしやすいため、こまめな水分補給が必要です。
吐き気で食欲がない場合は無理に食事をせず、経口補水液やスポーツドリンク、水などの飲料を飲みましょう。食欲があれば、スープやおかゆなど、消化に良く食べやすい形状の食事で水分とミネラルを補給し、回復を待ちましょう。さらに整腸作用のある食材も知っておくと、食材選びの役に立ちます。
・すり下ろしりんご
りんごに含まれる食物繊維の一種であるペクチンは、腸内で異常発酵する有害物質が体内に吸収されるのを防ぐ作用があります。さらにペクチンは、腸内の乳酸菌を増殖させる働きもあり、お腹の調子を整えるのに役立ちます。もともと胃腸への負担が少ない果物ですが、すり下ろすことによってさらに消化がよく、食べやすくなります。
・ヨーグルト
ヨーグルトに含まれる善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌には、腸内環境を整える作用があります。消化吸収がよく、タンパク質やビタミンB2、カルシウムを含んでおり栄養も豊富です。胃腸への負担を軽くするため、常温に戻してから食べるのがおすすめ。
また、下痢の症状があるときは、悪化を防ぐために下記の食べ物を避けることを心がけましょう。
風邪をひいて具合が悪いときは、手間のかかる調理をするのが難しいものです。そこで、コンビニで買える食材や冷蔵庫にあるものですぐに作れる簡単レシピをご紹介します。ここまでにご紹介したおすすめ食材が入っており、消化にも優しいものばかりですのでぜひ参考にしてみてください。
市販のフルーツヨーグルト(またはプレーンヨーグルトに果物をカットして入れたもの)に、上からハチミツを回しかけるだけのお手軽メニューです。
茹でうどんに麺つゆをかけ、さらに上から温泉玉子、刻みネギ、大根おろしをかけます。すでに調理されたうどんやカットねぎ、大根おろしのパウチが手に入れば、温めるだけで簡単にできます。
食べやすい大きさにカットした豆腐に、すり下ろしたショウガと刻みネギをたっぷりのせ、醤油をかけて完成。さっぱりした物しか食べられないときにも重宝するメニューです。軽く温めるとより胃腸に優しくなります。
レトルトのおかゆに、同じくレトルトの八宝菜をかけて温めるだけ。とろみと水分のおかげで食欲がないときにも食べやすいです。数種類の野菜や卵、肉などたくさんの具材が入っているので栄養もたっぷり。
フリーズドライやインスタントの味噌汁をお湯で戻し、その中にご飯を入れてよく混ぜます。少し待ってご飯が柔らかくなってから食べると、優しいおじや風に。体がポカポカ温まり、水分補給にもなります。
風邪は、風邪薬の力だけでは治すことができません。症状を改善するには、十分な休息とともに、食べ物・飲み物から栄養を摂ることが非常に大切です。食べ物の力を味方につけて、つらい風邪に打ち勝ちましょう。
【参考】
・文部科学省Webサイト「食品成分データベース」
https://fooddb.mext.go.jp/
・厚生労働省Webサイト「e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-044.html
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-036.html
・山川 達郎監:家庭の医学 病気がわかる事典:成美堂出版,2013.
・逸見・牧野・狩野・浅見:日本栄養・食糧学会誌.71(2):99-102,2018.