湿疹(皮膚炎)
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湿疹(皮膚炎)

かゆみをともなう皮膚の炎症をまとめて湿疹(皮膚炎)といいます。急性では、水疱や発疹などのジクジクした湿疹をはじめ、角質が白くフケのようになる鱗屑(りんせつ)、かさぶたなどがみられます。慢性の湿疹(皮膚炎)では、赤みやぶつぶつが出来たり、皮膚がカサカサになり厚く硬くなっていくことが特徴です(なお、ぶつぶつが出来るのは個人差があります)。

宇井 千穂 先生

監修

宇井 千穂 先生 (やさしい美容皮膚科・皮フ科 院長)

湿疹(皮膚炎)の原因はアレルギーやバリア機能の低下などが考えられる

洗剤や石けんなど、アレルギー物質との接触による湿疹

油、石けん、洗剤などの刺激の強いものに触れた直後や、特定のアレルギーを持つ人が原因物質に触れると、湿疹ができることがあります。アレルギーの原因物質は、化粧品やヘアケア製品の成分、貴金属、衣類、植物、洗剤など身の回りのほとんどのものが対象になります。

卵や牛乳・小麦など、食物アレルギーによる湿疹

アレルギー体質の人は、摂取する食べ物で皮膚に湿疹(皮膚炎)があらわれることがあります。代表的な食べ物では、卵、牛乳、小麦、そば、さば、貝、山芋、ピーナッツなどです。新生児期や幼児期に多くあらわれ、3歳すぎごろにアレルギーがなくなることもありますが、そのままアレルギーを持ち続ける場合もあります。

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乾燥肌や敏感肌など刺激物質の影響を受けやすい肌タイプ

皮膚のバリア機能が低下しやすい乾燥肌や、バリア機能が常に低下した状態の敏感肌は、刺激物質に影響されやすいものです。髪の毛先が顔に触れたり、下着による皮膚の圧迫などのちょっとした刺激でも湿疹(皮膚炎)ができることがあります。

汗による肌への刺激

高温多湿の環境は汗が出やすくなります。汗の量が増えていくと、皮膚にある汗の通り道や出口が詰まり、汗が体の外に排出されず周辺の組織を刺激して炎症反応が起きることがあります。

白癬菌(はくせんきん)やカンジダ菌の感染による湿疹

カンジダ菌や水虫の原因となる白癬菌に感染すると、感染した部分に湿疹ができます。カンジダ菌は肌がこすれるわきの下や太もも、白癬菌は足の指と指の間での感染が多くみられます。カンジダ菌は人の唾液や消化器に存在し、基本的には人の健康に影響を与えません。しかし、体力が落ちると必要以上に増殖して、湿疹(皮膚炎)のような不快な症状を引き起こします。

ダニやノミなど、虫さされによる湿疹

蚊(か)、ノミ、ダニ、ケムシなどの昆虫に皮膚を刺され、毒性のある物質が体の中に入ることで、湿疹(皮膚炎)ができます。刺された部分が赤く盛り上がることが多く、とくにケムシは背中の毒針で一気に刺してくるので、広い範囲に湿疹(皮膚炎)が広がります。

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湿疹(皮膚炎)のほか、かゆみや乾燥などをともなう症状があるときに考えられる疾患

※以下の疾患は、医師の診断が必要です。
下記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

<疾患一覧>

疾患 主な症状
アトピー性皮膚炎 強いかゆみを伴う湿疹(皮膚炎)のほか
乳幼児期と小児期以降では以下の特徴的な症状もあらわれることがある。

(乳幼児期)
顔や頭、耳などの皮膚がジクジクして赤く腫れる
(小児期以降)
皮膚がカサカサに乾き、硬くなる
じんましん 皮膚の赤い盛り上がり
強いかゆみ
水虫・白癬症 足裏の小さな水疱
足の指と指の間の赤みや皮がむけ白くふやける
強いかゆみ など
接触性皮膚炎(かぶれ) 皮膚が赤くなる、ブツブツや水疱ができたりする
手湿疹 肌の乾燥、小さなブツブツの発疹
ひび割れ など
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん) 皮脂の分泌が盛んな箇所の赤み(頭)
フケ、頭の強い臭い(顔)
脂ぎった顔、バサバサの赤ら顔 など
あせも 汗をかきやすい箇所の赤みを帯びた小さな発疹

アトピー性皮膚炎

ハウスダストや食べ物などの原因物質によって引き起こされるアレルギー疾患です。乳幼児期では、顔や頭、耳などの皮膚がジクジクして赤く腫れ、小児期以降では皮膚がカサカサに乾き、硬くなります。強いかゆみをともなうため、かくことで細菌に感染して悪化することがあります。思春期ごろに治まる人が多いのですが、成人以降も続くと慢性化することがあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 アトピー性皮膚炎

じんましん

特定の食べ物をはじめ、薬や植物などが原因として挙げられていますが、じんましんは明らかな原因が不明なものが多いです。大きさが不ぞろいで不均一なものが多く、出現後数十分から数時間の経過で跡形もなく消失します。多くの場合は強いかゆみを伴います。
皮膚の赤い盛り上がりは直径数ミリのものから、広範囲の地図状に広がるものまであり、しばらく時間をおいてからまたあらわれることがあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 じんましん

水虫・白癬症(はくせんしょう)

カビの一種である白癬菌が足の裏や手について感染すると水虫、体の表面や頭皮などに入りこみ感染すると白癬症と呼ばれます。足の裏では小さな水疱ができたり、指と指の間が赤くなり、皮がむけ白くふやけたりして、強いかゆみをともないます。手では手のひらの皮が厚く硬くなり、皮がむけ、ひび割れてくるので、手湿疹や手荒れと勘違いすることも少なくありません。体にも赤いブツブツや赤い輪があらわれることも多くあり、頭皮では毛穴が赤くなって腫れ、患部の毛が抜けることもあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 水虫

接触性皮膚炎(かぶれ)

特定の物質に触れたことで起こる皮膚炎のことです。赤ちゃんのいる家庭では一番身近なのが、オムツかぶれです。これは尿や便のアンモニアが原因となる刺激性接触性皮膚炎で、触れてから数時間後に炎症を起こします。その他、油や洗剤、石鹸などでも起こる場合があります。これとは別に、アレルギー物質に触れることで炎症を起こすアレルギー性皮膚炎があります。貴金属や化粧品、漆(うるし)や銀杏(ぎんなん)などに触れることで接触しなかった部位も含めて皮膚が赤くなり、ブツブツや水疱ができたりするもので、かゆみの強いものと、ないものがあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 かぶれ(接触性皮膚炎)

手湿疹

水や石けん、洗剤の刺激などによって起こる手あれのことです。主な症状は、肌の乾燥や小さなブツブツの発疹、ひび割れなどです。きき手の親指や人差し指、中指などよく使うところから症状があらわれ、手のひら全体に広がっていきます。水仕事の多い主婦に多くみられるため、主婦湿疹とも呼ばれています。

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)

皮脂の分泌異常や細菌感染などが原因で起こります。主に皮脂の分泌が盛んな頭や顔、胸、脇の下が赤くなり、粉が吹いたような状態になりますが、かゆみはそれほど強くありません。頭の場合にはカサカサになった大きなフケが頭皮に大量に発生し、頭の臭いが強くなることもあるので、洗髪不足と誤解してしまうことも少なくありません。顔の場合には、脂ぎった顔、あるいは粉を吹いたようなバサバサの赤ら顔になります。

あせも

汗腺の出口が詰まり、汗腺の出口とその周辺に汗が溜まって起きる炎症です。多くは赤みを帯びた小さな発疹ができます。汗をかきやすい額やわきの下、ひじや膝の裏側に多くみられます。汗をかきやすい夏はもちろん、暑すぎる暖房や厚着などによって、冬にもみられます。乳幼児に多い疾患ですが、大人にもできることがあります。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。 あせも

※以上の疾患は、医師の診断が必要です。
上記疾患が心配な場合には、早めに医師の診察を受けましょう。

軽い湿疹(皮膚炎)は市販薬で対処、症状が長引く場合は病院へ

かかずに冷やす

かくことによって皮膚のバリア機能が壊れ、細菌やアレルギー原因物質が入りやすくなります。かくとさらにかゆみが増すばかりか、皮膚が傷つき化膿することもありますので、かかないことが大切です。かゆみが強いときは、冷やしましょう。冷たいおしぼりか、氷を入れたビニール袋や保冷剤をハンカチなどでくるんで、かゆいところに当てると楽になります。

水虫・白癬症の治療は気長に行う

白癬菌は、皮膚の奥深くに入り込むため完治に時間がかかります。症状が改善したと思って治療を止めてしまうと、すぐに再発することがあります。そしてまた治療し、再発するということを繰り返しているうちに慢性化してしまうこともありますので、定められた期間の服薬や治療を続けましょう。

手湿疹になったら水仕事のときに手袋をする

手袋の着用で水や洗剤の刺激を緩和すると、手湿疹の悪化を防ぐことができます。ただし、ゴムやビニールの手袋を直接はめると、それ自体が刺激になってしまいますから、下に木綿の手袋を着用するなどの工夫をするようにしましょう。

市販の薬を使う

湿疹があらわれたら、かゆみを緩和する市販の軟膏やクリームを使ってみましょう。軟膏の成分としては抗炎症成分(ステロイド)や抗生剤などがあります。
水虫には白癬菌を破壊するブテナフィン塩酸塩などを配合する外用薬が効果的です。水虫の薬は、毎日欠かさず、かゆみや赤みのある患部よりも広く薄く塗ることがポイントです。

病院で湿疹について診察を受ける

湿疹が長い期間治まらない場合は、主治医に相談するか皮膚科で診察を受けましょう。アトピー性皮膚炎の疑いがあるときは、皮膚科やアレルギー科などを受診しましょう。子どもの場合はまず小児科へ。小児科をベースにしたアレルギー専門医ならさらに詳しく相談に乗ってくれます。

保湿やこまめな汗の拭き取りなどで湿疹(皮膚炎)の予防を

保湿ケアを行う

肌が乾燥するとバリア機能が落ちるため、洗顔やお風呂の後には化粧水と保湿剤で皮膚の水分を保つようにしましょう。また、加湿器で部屋の湿度を保つことも効果があります。とくに手は新陳代謝が悪く、乾燥しやすいデリケートな部分です。水仕事の後はハンドクリームを手全体にまんべんなく塗っておきましょう。

汗をこまめにふき取る

かいた汗をそのままにしておくと、皮膚に刺激を与えることになります。汗をかいたらこまめにふいたり、可能であればシャワーを浴びましょう。汗をふき取るときは、濡れたタオルやウェットティッシュを使うと汗に含まれる細菌もふき取ることができます。

足をいつも清潔にする

水虫は、足が蒸れて通気性が悪い状態や、水虫の原因である白癬菌に汚染されている床や履物を介して感染します。しかし、24時間以内にしっかりと足を洗えば白癬菌の感染を防ぐことができます。石けんで足の指の1本1本まで丁寧に洗い、白癬菌を撃退しましょう。

食物アレルギーの原因物質の制限を行う

食物アレルギーであることがはっきりしている場合は原因となる食品を制限しますが、素人判断で食事制限をすると、特に成長期では必要な栄養素やカロリーが不足するおそれがあります。医師の指示に従うようにしましょう。また、外食などでは、避けるべきアレルギーの原因物質が入っていないと思われるメニューでも、同じ器具を使って調理されていると、その成分が器具に残っていることがあります。不安な要素があればお店の人に確認しましょう。

食物アレルギーに関する記事はこちら 食物アレルギー

アレルギーの原因を避ける

特定の薬品や金属など、アレルギーの原因となる物質がわかっているときは、その物質を避けるようにしましょう。

プチメモアレルギーマーチに要注意

アレルギーマーチに要注意

アレルギー疾患にかかりやすい乳幼児がアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などを次々と発症していくのが「アレルギーマーチ」です。
乳幼児期は、まず食物を原因とするアトピー性皮膚炎を発症しやすいのですが、成長するにつれてハウスダストや花粉を吸い込む機会が増え、気管支喘息やアレルギー性鼻炎が起こるようになります。子どもが幼いうちは、食事やダニの除去にはとくに気を配ってあげましょう。