のど(喉)の乾燥は痛みや腫れの原因になる?乾燥の原因や対策も紹介

のど(喉)の乾燥は痛みや腫れの原因になる?乾燥の原因や対策も紹介

のどの乾燥が気になって落ち着かない――そんな症状に悩まされたり不安になったりしたことはありませんか?この「のどが乾燥する」という自覚症状は、「のどが渇いて水が欲しくなる」というのとは、ちょっと違った感じがしたり、味覚の変化などをともなうこともあるようです。何らかの病気の初期症状なのか、ただ単に空気が乾いているせいなのか、気になるのどの乾燥の原因と対策をお話ししていきます。
田中 裕士 先生

監修

田中 裕士 先生 (医大前南4条内科 院長、NPO法人札幌せき・ぜんそく・アレルギーセンター 理事長)

のどの乾燥を引き起こす原因

のどの乾燥を引き起こす原因をここでは大きく3つに分けて紹介します。

  1. 口の中の唾液が蒸発する速度が速いこと
  2. 唾液の分泌が少なくなること
  3. 口の中の粘膜の状態が変化すること

これらが生じる原因として、以下のような習慣や環境、病気が挙げられます。

口呼吸による乾燥

呼吸には口で行う「口呼吸」と、鼻で行う「鼻呼吸」があります。鼻は、吸い込んだ空気の中に含まれている異物を除去したり、加温や加湿をするという働きをしています。口呼吸では、このような鼻の機能が生かされずに、外気がそのまま取り込まれるため、口の中や気道が乾燥しやすくなります。口腔内が湿っているときには体を守る免疫細胞などが活動してくれていますが、乾燥することによってそれらの防御機構が働かなくなります。その結果、異物やウイルスが侵入しやすくなり、のどに炎症や痛みが起こる原因にもなるのです。

口呼吸の原因には、鼻づまりや、顔やあご周りの骨格・鼻の形状が関わっているとされており、花粉症やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻中隔(びちゅうかく)湾曲症(わんきょくしょう)などの病気が挙げられます。また、これらの病気がなく、日中は鼻で呼吸をしている人の中にも、寝ているときには口呼吸になっている人もいます。

※鼻の穴を左右に分けている仕切り(鼻中隔)が歪んで鼻づまりなどが起きやすくなっている状態

空気の乾燥

空気が乾燥しているときに、水分の摂取量が不足していると、のどが乾燥する可能性が高くなります。また、気温が低いと空気中の水分が少なくなる、つまり湿度が低くなり、これが冬に空気が乾燥しやすい理由です。そのため、冬はのどの不調やお肌の乾燥などがあらわれやすくなります。
特に冬は湿度が30%以下になることが多く、室内で暖房をつけていると加湿器を使っていても、50%を上回る湿度にするのは難しい傾向があります。

水分摂取不足による乾燥やドライマウス

口の中の水分の不足には、体全体の水分量の不足が関係している場合と、口の中だけが乾燥して感じる口渇(ドライマウス)という2つのケースがあります。前者は、水分の摂取量が、排尿や排便あるいは発汗で失われた量よりも少なかったり、塩辛いものを食べて体液の濃度のバランスが崩れたときが該当します。「水が飲みたい」という衝動は、そのような状態のサインといえます。
特に夏は発汗のために脱水傾向になりやすく、のどが渇きやすいことも、多くの方が経験的にご存じでしょう。夏場の脱水予防は熱中症対策のためにも重要です。

その一方で、冬も気をつける必要があります。冬は寒くのどが渇きにくいので、あまり水を飲まなくなる方も多いのではないでしょうか。しかし、メガネをしている方はわかるかと思いますが、冬に外を歩くとメガネが曇る現象が起こります。これは水分が体から放出されているためです。汗をあまりかかない冬は水分を失っている自覚が少ないですが、思いのほか体は乾燥していることがあります。そのため、水分の補給は1年を通してこまめに行うことが大切です。

後者のドライマウスは、シェーグレン症候群(免疫機構が自分の正常な組織に対して働いてしまう自己免疫疾患の一つ)、糖尿病で血糖コントロールが良くない状態、薬の副作用、加齢による唾液腺の萎縮、精神的な緊張やストレス、口呼吸、更年期障害などが原因となります。ドライマウスの原因については、この後解説します。

何らかの病気の影響

唾液の分泌量が減る病気として、一つ前の項目でも挙げましたが、シェーグレン症候群という病気があります。これは、涙や唾液を作っている器官を中心に炎症を起こす全身性の自己免疫疾患で、女性に多い病気です。唾液だけでなく、涙の分泌量も低下してドライアイをともなうことが少なくありません。腎臓や肝臓、肺など、全身の臓器にも影響が及ぶことがあります。

また、これも先ほどドライマウスの原因として触れたことですが、糖尿病の人が血糖コントロールが不十分で高血糖になったときの典型的な症状として、口渇、多飲、多尿が挙げられます。この一連の症状は、ブドウ糖が血中に多い(つまり高血糖)状態だと、その濃度を下げるために細胞内の水分が血液中に移動して、細胞は脱水に近づく結果、のどが渇き(口喝)、水をたくさん飲み(多飲)、尿量が増える(多尿)というメカニズムで発生します。

甲状腺機能亢進症では交感神経の働きが過剰になる影響で、唾液中の水分が少なくタンパク質が多くなりがちです。そのために口の中が乾いたり、ネバネバしたりすることがあります。甲状腺機能亢進症とは反対の甲状腺機能低下症でも、全身の新陳代謝が低下することにともなって、唾液の分泌が減って口が渇くことがあります。
この他に、鉄欠乏性貧血や腎機能の低下などによっても、口の渇きを感じられることが知られています。

薬や放射線治療の副作用

病気の症状として口が渇くことがある一方で、病気の治療のための薬の副作用で口が渇くこともあります。例えば、パーキンソン病などの治療で処方されることのある抗コリン作用(副交感神経の働きを抑える作用)のある薬などです。その他、市販の総合感冒薬(風邪薬)の成分としても抗コリン作用のある成分(鼻汁の分泌を抑える成分など)が配合されていることもあります。
また、薬とは異なりますが、のどのがんなどのために放射線治療を受けた後に、唾液を分泌する器官にダメージが生じてしまって唾液分泌が減少し、のどが乾燥しやすくなることもあります。

加齢

加齢によって唾液腺が萎縮をすると、唾液が出にくくなります。唾液の分泌量は、年齢を重ねるほど減少していくことが知られています。この加齢的な変化は、特に閉経後の女性に顕著にあらわれます。また、高齢の方は服用する薬の種類が増えがちで、それらの薬の副作用として口渇が生じることもあります。ただ、その反面で高齢の方は口の渇きを感じにくくなるといわれていて、この点は、脱水予防という点で、十分な注意が求められます。

ストレスによる乾燥

面接試験を受けるときや、大勢の人の前で話をしなくてはいけないときなどに、緊張して口が渇いたという経験のある人も少なくないと思います。これは、強い精神的ストレスのために交感神経の活性が高まった影響で、唾液の分泌が低下した結果と考えられます。

その他の原因

アルコールは利尿作用があるため飲酒後に脱水傾向になりやすくなります。また、飲酒時にはおつまみとして、塩辛いものを食べることが多いため、さらに乾燥してしまうことも。

この他に、タバコの煙の刺激(本人だけでなく周囲の人の喫煙でも)によっても、のどや気管が刺激されて炎症が起き、のどの渇きを感じることもあります。

のどの乾燥を放っておくとどうなるの?

のどが痛くなったり、イガイガやせきの原因になる

のどの乾燥が長引くと、のどの粘膜に炎症が生じてイガイガしたり、痛みを感じることがあります。加えてせきがあらわれることもあり、そうするとせきの刺激のためにのどの粘膜の腫れや痛みがひどくなるなど、悪化しやすい状態になってしまいます。
些細な症状と感じても、早め早めに対処することが大切です。

感染症にかかりやすくなる

のどが乾燥していると、微生物からの感染を守る防御機構が低下してしまいます。
例えば、のどの粘膜にあって異物の侵入を防ぐように働いている線毛が、乾燥のために十分に機能しなくなります。これは、前述の通り、湿っている場合は正常に働く免疫細胞などが、乾燥によって機能しなくなり、微生物を抑制できないためです。また、異物をからめとって排出するための「たん」が出にくくなります。それらの結果、微生物が体内に入り込みやすくなり、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなってしまいます。
風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などはのどの痛みやせきをともなうことが多くあります。

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味覚が低下する

のどが乾燥しているときは、口の中も乾燥していることが少なくありません。口の中が乾燥している状態「ドライマウス」は、先ほども解説しましたが、ストレスや薬の副作用などで唾液が少なくなったり、口呼吸のために口の中の粘膜の水分が失われたりすることで起こります。
ドライマウスによる症状として、舌のひび割れや痛み、口臭の悪化、発音障害などとともに、味覚障害も挙げられます。ドライマウスを放置していると、唾液が減った状態が続き、味覚を感じにくくなることがあります。

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ドライマウス

口臭が強くなる

のどが乾燥しているということは、口の中の残っている食べ物の残りかすを食道へと洗い流してくれる唾液が少ないということです。そのため、かすが口の中にとどまりやすく、口臭が強くなります。
また、唾液には抗菌・殺菌作用があるため、唾液が少ないと口の中の細菌が増えやすくなり、その点でも口やのどの乾燥は口臭に関係してきます。なお、朝、起きたときに口臭が強いと感じるという人もいるかもしれません。それには、睡眠中に唾液の分泌量が減少することが関係しています。

虫歯や歯周病・口内炎

前述の通り、唾液には抗菌・殺菌作用もあるため、唾液の分泌の低下によってのどが渇いているようなときには、口の中で細菌が繁殖しやすくなっている可能性があります。その影響のために、歯周病が発症・進行したり虫歯ができやすくなることも考えられます。しっかり歯磨きをしているのに、歯周病の症状、例えば歯ぐきが腫れたり血がにじんだりといった症状があるなら、その原因は口の中の乾燥かもしれません。これらの症状が思い当たるなら、一度、歯科医に相談してみましょう。
また、唾液の分泌の低下は、口内炎のできやすさとも関連があるといわれています。

のどが乾燥したときの対処法

加湿する

空気が乾燥しているときは、のども乾燥しやすいものです。加湿器を使ったりして、室内を適度な湿度に調節してください。なお、冬に加湿器やエアコンの加湿機能を使わずに室温だけを上げると、空気はより乾燥してしまいます。
快適と感じる湿度は40~60%の範囲といわれており、冬場のウイルス対策としては、室温18~28度、湿度40~70%が最適ともいわれています。湿度があまり高過ぎると不快に感じたり、細菌やカビが繁殖しやすくなってしまうことがあるので、加湿器を使う場合は手入れを適切に行って、細菌やカビが繁殖しにくい状態を維持してください。
その他に、室内の窓辺に観葉植物を置いておくと、日中は植物の蒸散という働きによって、室内の湿度が上昇します。
また、感染症予防対策としては、屋内の換気も大切です。換気の際には、対角線上にある2ヵ所の窓を同時に開けるとより効果的です。

口呼吸をしない

口呼吸の悪影響については、「のどの乾燥を引き起こす原因」の項目でも解説したように、口の中やのどが乾燥しやすくなる、微生物が体内に入り込みやすくなるといったことが起きてしまいます。その他にも、呼吸が浅くなるなどの、健康上よくない影響が生じてきます。
寝ている間は知らず知らず口呼吸をしていることもあるので、鼻で呼吸ができているか同居している人に確認してみたり、マウステープを使ったり、保湿用のマスクを着用したりすると良いでしょう。
また、風邪による鼻づまりのために口呼吸になっている場合もあり、そのようなときには鼻づまりを改善する成分の入った風邪薬を服用してみると良いでしょう。例えば抗ヒスタミン成分などを含む薬です。薬剤師や登録販売者に相談してみてください。

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マスクをつける

マスクの着用は口呼吸対策になるだけでなく、さまざまな点でのどを守るように働きます。例えば、冷たく乾燥した空気が直接、鼻やのどに到達してしまうことを防ぎ、粘膜の刺激をやわらげてくれます。それによってのどの状態が良好に保たれ、感染予防にもつながります。新型コロナウイルス感染症の教訓として、マスクは感染拡大防止対策として効果的であることがわかりました。

飴をなめたり、のどスプレー・トローチを使う

のどが渇くという症状があるときに、飴をなめると楽になることがあります。
飴の他にも、のどの炎症による痛みや腫れなどの症状がある場合は、のどスプレーやトローチを使ってみるのも良いでしょう。

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水分補給・うがいを行う

のどが乾燥するという症状の原因の一つに、体の水分が不足していることが挙げられます。このような場合、水分をとることでのどの乾燥がやわらぎます。また、うがいをしてのどの粘膜を直接うるおすのも良いでしょう。うがいには、のどの粘膜に付着した微生物が体内に侵入する前に洗い流すという感染予防の効果も期待できます。

唾液腺マッサージをしてみる

加齢のために唾液の分泌量が低下している場合などに、唾液を分泌する唾液腺の部分をマッサージによって刺激すると、分泌が高まることがあります。耳の下からあごのあたりにかけて、指で円を描くようにしたり、押しては離すといった動作を適度に繰り返してみてください。

日ごろからできる!のどの乾燥対策

のどへの刺激を減らす

のどが乾燥すると、粘膜に炎症が起きやすくなります。そのため、ふだんから、のどに負担をかけるようなことを避けることはのどの乾燥対策になります。例えば、長い時間大きな声で話したり、カラオケで大声を張り上げるのは、控えたほうが良いかもしれません。
飲食物関連では、刺激の強い食べ物、例えば辛過ぎるものやアルコール、カフェインの摂りすぎには気をつけましょう。アルコールやカフェインは利尿作用があるために、その点でものどの渇きを強めてしまいます。
湿度という点では既にお話ししましたが、乾燥によるのどへの刺激を抑えるために、特に冬は加湿器などを使って室内の湿度を40~70%程度に保つと良いでしょう。

のどや口腔内を清潔に保つ

のどが乾燥していると、ウイルスや細菌がのどの粘膜に付着し体内に侵入しやすくなります。つまり、感染症にかかりやすくなるということです。のどが乾燥しがちな人は、ふだんからのどを清潔に保つことを心がけるようにしてください。
具体的には、外出から帰宅した際などに、こまめにうがいをしましょう。また、感染症予防という観点から、換気も忘れずに。入れ歯をしている人はそのお手入れもしっかり続けましょう。また、歯ぐきの状態にフィットするように、定期的に歯科で調整してもらいましょう。

口呼吸の原因を予防する

口呼吸の多くは鼻づまりが原因と考えられるため、日常生活においては鼻の通りを良くしておくことが大変重要です。鼻づまりは、風邪や鼻炎などが原因で起こることがあります。日ごろからうがいや手洗い、規則正しい生活習慣、十分な睡眠などで予防を心がけましょう。鼻づまりや口が閉じにくいなど鼻呼吸を妨げる要因がある場合には、一度耳鼻咽喉科や(小児)歯科を受診してみましょう。

唾液の分泌を刺激する食べ物を摂る

適度な酸味のある食べ物は唾液の分泌を促してくれます。例えば、梅干しや酢昆布などです。

寝ている間の乾燥対策

睡眠中は自覚することはできないものの意外なほど汗をかいていて、体内の水分が失われていきます。そのため、睡眠中の脱水予防に、寝る前にコップ1杯の水を飲んでおくことが推奨されていて、このような習慣はのどの乾燥予防にも役立つと考えられます。

乾燥を防いでのどのうるおいを保とう!

のどの乾燥は、ただ単に不快なだけでなくて、のどの粘膜に炎症を起こすことがあり、感染症のかかりやすさにも関係してくるといったお話しをしてきました。ふだんからのどに負担をかけ過ぎないようにして、そのようなリスクをシャットアウトしたいものですね。のどの炎症による痛みや不快感がある場合は、市販薬を試してみることも考えてみてください。ただし、症状が長引いていたり、悪化していくようであれば、何か病気が隠れている可能性がありますので、きちんと医療機関を受診しましょう。

参考文献

  • 臨床と研究91(9),2014「口腔乾燥」
  • 宝島社「口呼吸をやめて万病を治す」,2017
  • 医歯薬出版「高齢者のドライマウス 口腔乾燥症・口腔ケアの基礎知識」,2017
  • NHK出版「専門医直伝! 健康のどトレのすすめ」,2023
  • 中山書店「耳鼻咽喉科 薬物治療ベッドサイズガイド」,2023