監修
関 洋介 先生 (四谷メディカルキューブ 消化器外科 減量・糖尿病外科センター 副センター長 腹部ヘルニア総合センター 副センター長 臨床研究管理部 部長 一般社団法人GERD・LPRD診療ネットワーク(Japan Foregut Society)理事長)
食べすぎてしまったというとき、その直後に、胃もたれやお腹の張り、胸やけなどの不調が現れることがあります。また、食べたものの消化には時間がかかるため、胃腸の負担は食べすぎ直後だけでなく、翌日まで続いていることも。食べすぎた次の日には胃腸を休ませながら、水分・食事・活動量を無理なく整えることが大切です。
胃腸を休ませるといっても「翌日は何も食べない」という極端な方法はよくありません。また、「摂りすぎたカロリーを激しい運動で帳消しにする」という極端な対応もおすすめできません。体調と相談しながら普段の状態に戻すことが基本です。
食べすぎた翌日の過ごし方を少し意識することが、胃腸の不快感やむくみの軽減につながります。ここでは、食べすぎた次の日の過ごし方のポイントを紹介します。
食べすぎた次の日は、まず体調を確認して、胃腸に負担をかけないことを優先しましょう。
食べすぎた後には
・胃もたれ
・腹部膨満感(お腹が張った感じ)
・胸やけ
・げっぷ
・吐き気
・下痢/便秘
などの症状が起こることがあります。
こうした症状は、胃腸に負担がかかっており、十分に回復できていないことを表していると考えられます。そのようなときには、それ以上に胃腸の負担を増やさず、休ませてあげることが重要です。具体的には、食事については食べる量を少なめにしたうえで、消化の良いものを中心に食べるようにしましょう。詳しくは「食べすぎた翌日の食事のポイント」の項で解説します。

食べすぎた次の日は、水分をこまめに補給することも大切です。
これは、食べ物の消化に必要な消化液の分泌や、胃から腸への移動などに、水分が必要とされるからです。
また、食べすぎたときには塩分も多く摂っていることが多いため、のど(喉)の渇きを潤すためにも、適量の水分摂取が必要となります。
なお、水分補給の際、冷たい水では胃腸を冷やしてしまうため、白湯として飲むほうがおすすめです。
ただし、「水分摂取が大切」とはいえ、一度に大量に飲む必要はありません。食べすぎで既にお腹が張っているときは、コップ1杯の水を一気に飲むよりも、少量ずつ分けて飲むほうが負担をかけにくいでしょう。
食べすぎた次の日に行う運動としては、激しい運動ではなく軽い運動がおすすめです。強度の軽い運動は胃腸に適度な刺激を与えて、消化を助けます。また、気分の改善にもつながります。
一方、強度の強すぎる運動は、かえって不快感を高めたり、筋肉への血流が優先される分、胃腸の血流が減って消化活動が低下してしまうことも。特に、食後すぐの激しい運動や、胃に食べ物が残っている状態での筋トレ・ランニングなどは避けたほうが無難です。
食べすぎた翌日には、散歩やストレッチなど「少し体を動かす」程度の運動が良いでしょう。
普段から食事の量を気にしている人ほど、たまに食べすぎてしまった後、それを強く後悔したりストレスを感じたりすることが多いようです。そのようなとき、さっと気分を切り替えて、明日からいつもの食生活を続ければいいのですが、食べすぎてしまったというストレスを解消するために、また食べ物に手を伸ばしてしまうこともあるようです。それでは、せっかく日々の食事に気を付けているのに、元も子もなくなってしまいます。
「そのような傾向があるのではないか」と思い当たる人は、食べすぎた後に自分を責めないことを意識すると良いかもしれません。

ここからは、食べすぎた次の日の食事で注意したいポイントを解説します。
なお、食べたものが便として排出されるまでには、通常約24~48時間かかるとされています。場合によっては、食べすぎた翌日だけでなく翌々日も含め、2~3日かけて調整することも考えましょう。
胃腸の負担を軽くするために、消化の良いものを選んで食べましょう。
具体的には、
・脂っこいものや濃い味付けの料理は避ける
・胃腸を刺激する香辛料や、極端に熱いもの、冷たいもの、食物繊維を多く含むもの、カフェインなども避ける
・焼いたり揚げたりしたものよりも、蒸したり煮たりしてやわらかくなったものを選ぶ
といったことです。
例えば、おかゆ、うどん、スープ、やわらかく煮た野菜、脂身の少ない肉や魚などは、摂り入れやすい食品の選択肢といえます。
なお、胃腸にやさしい食べ物については以下の記事も参考になります。
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胃腸にやさしい食べ物とは?胃の調子が悪い、食欲不振時におすすめの食べ物を紹介
消化の良いものを選ぶことに意識が向きすぎてしまい、栄養バランスが偏ってしまうことや、カロリーを気にして食事の量を少なめにすることにより、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素※が不足してしまうこともあります。栄養素は本来、食事から摂取するのが望ましいものの、必要に応じてサプリメントや栄養ドリンクなどを活用することも一つの方法です。
食品中に含まれる糖質や脂質から得るカロリーは、脂肪またはグリコーゲンとして体内に貯蔵できるのに対して、ビタミン類(特にビタミンB群などの水溶性ビタミン)は短時間で体外に排泄されてしまいます。また、ビタミンB群は糖質や脂質からエネルギーを作り出すときに必要とされ、ビタミンB群が十分ないと、食べすぎによる余分なカロリーがエネルギーにならずに貯蓄に回ってしまいやすくなる可能性もあります。これらの点からも、微量栄養素の不足に気を付ける必要があります。
※微量栄養素:微量ではあるが、成長過程における発達や適切な代謝機能を維持するために必要な栄養素。ビタミンやミネラルを指す
外食や会食などで塩分の摂りすぎが気になるときは、カリウムを含む食べ物を摂取するようにしましょう。
塩分(ナトリウム)は、体内で水を引き付けるような作用があるため、むくみを引き起こしたり、血圧を上げたりするように働きます。それに対してカリウムは、ナトリウムの排泄を促す作用があり、塩分過多の影響を部分的に抑制してくれます。塩分を摂りすぎていると感じたら、カリウムの豊富な野菜や果物を意識して摂ると良いでしょう。
なお、塩分を摂りすぎてしまうケースとして、塩辛い料理や味付けの濃い料理を食べたときはもちろんのことながら、このページのテーマである「食べすぎ」も該当します。なぜなら、どんな食品にも塩分は含まれているため、量を多く摂れば一緒に塩分も多く摂ることになるからです。
ただ、カリウムの多い野菜や果物は食物繊維を含むものが多く、食べすぎた後に食物繊維を多く摂ると胃腸に負担をかけてしまうことも考えられるため、体調と相談しながら、消化に負担をかけすぎないよう煮込んだり、細かく刻むなど調理を工夫してみると良いでしょう。
食べすぎた翌日は、前述した微量栄養素のなかでも、糖質・脂質・たんぱく質の代謝を支えるビタミンB群も意識したい栄養素として挙げられます。
体の中でエネルギーとして使われる糖質、たんぱく質、脂質(三大栄養素/主要栄養素)は、食べればそのままエネルギーになるわけではなく、代謝(体内で他の物質に作り変えられる過程)を経て利用されています。これらの代謝にはビタミンB群が必要とされ、食べすぎた後にはこのようなビタミンB群の役割も増えると考えられます。食べすぎの翌日には、ビタミンB群を摂り入れやすい食品を無理なく補うと良いでしょう。
・ビタミンB1 :豚肉、うなぎ、ごまなどに多く含まれる
・ビタミンB2:レバー、焼きのり、卵などに多く含まれる
・ビタミンB6:カツオ、ごま、玄米などに多く含まれる
・ビタミンB12:しじみ、味付けのり、レバーなどに多く含まれる
【プチメモ】二日酔いにもビタミン群、特にビタミンB1が重要?
ビタミンB1は「代謝ビタミン」とも呼ばれ、糖質・たんぱく質・脂質の代謝だけでなく、二日酔いになるなど、代謝しきれないような量のアルコールを分解する際に多く消費される栄養素。
ビタミンB1が不足してしまうと、アルコールに関わる代謝が円滑に行われにくくなり、二日酔いの不調に影響する可能性があります。
食べすぎだけでなく、お酒を飲みすぎた際にもビタミンB1を摂取することもおすすめです。
「食べすぎた翌日の食事のポイント」で紹介した通り、食べすぎた次の日のメニューは、胃腸に負担をかけにくいことを優先して選ぶのが基本です。ただし、栄養が偏ってしまうこともあるため、可能であれば消化しやすい主食を中心にしつつ、たんぱく質や野菜、果物も無理のない範囲で摂り入れると良いでしょう。
ここではもう少し具体的に、食べすぎた翌日の消化に良いおすすめメニューを紹介します。既に食べてしまったものを食べなかったことにすることはできませんが、数日くらい時間をかけて調整すれば、食べすぎをしなかった状態に整えることは可能です。
主食:おかゆ、やわらかく炊いたご飯、うどん、そうめんなど
主菜:豆腐、卵、白身魚、脂肪の少ない肉(ささみ肉)など
副菜:キャベツ、ホウレンソウ、小松菜、白菜、大根、かぶ、いも類などの煮物や茹で野菜
果物:りんご、バナナ、メロン、ももなど(缶詰を活用してもOK)
その他:牛乳やヨーグルトなどの乳製品など

胃もたれとは、食べたものがいつまでも消化されずに、胃の中に長時間残っているときの症状、またはそのように感じる症状のことです。胃が重く感じる、吐き気がする、膨満感(お腹の張り)なども、胃もたれに該当します。
胃痛は通常、みぞおちのあたりの痛みとして感じられます。シクシクする痛み、しめつけられるような痛みなどと訴える人が多いようです。
なお、緊急治療が必要な心臓の病気(心筋梗塞)でも似た症状が現れるため、食べすぎなどの明らかな原因がない場合は、単なる胃痛だと自己判断しないように注意してください。
腹部の膨満感とは、お腹がいっぱいで張ったように感じる状態とされ、その原因の一つに食べすぎが挙げられます。
食べすぎた後に、のどもとが熱く感じたり、ヒリヒリするような感じがしたりするといった胸やけの症状が現れることもあります。また、「呑酸(どんさん)」と呼ばれ、口の中に酸っぱいものが上がってくるような感じが起こることもあります。これらは、胃の内容物(胃液や食べたもの)が食道を逆流してきたときに生じます。
げっぷは、食べ物や飲み物を飲み込む瞬間に一緒に胃に入った空気や、胃の中に食べ物が長時間とどまっているために発生したガスが、食道を逆行して口から排泄される現象です。食べすぎた後や早食いをした後に起こりやすい傾向があります。
食べすぎが関連している上記の不快な症状は、胃酸(消化液である胃液に含まれている酸)が関係していることが少なくありません。その場合は胃酸の分泌を抑える薬によって、症状を和らげることができます。
胃酸の分泌を抑える薬の一部は市販薬としても流通しているので、薬局で相談しながら自分にあったものを選びましょう。
食べすぎを防ぐには、特別な方法を一度だけ試すよりも、日々の生活習慣を少しずつ整えることが大切です。体重や食事を振り返る習慣を持ち、食べる速さや食事中の過ごし方、睡眠やストレス対策を見直すことで、食べすぎにつながりやすい行動パターンに気づきやすくなります。無理なく続けられる方法から取り入れていきましょう。
食べすぎを防ぐ第一歩は、自分の変化を“見える化”すること。その方法の一つとして、「体重を量ること」が挙げられます。なるべく毎日体重を量り、できればその日に食べた食事の内容や量とともに記録していくと、体重が増えやすい食事パターンが徐々に浮き彫りになってきます。
空腹時に買い物をすると食べ物を多く買ってしまいがちです。明日の食事の食材は、運動を兼ねて食後にすると良いでしょう。
また、レジの横などに賞味期限切れ間近の食品が値引きされて置かれていることがありますが、食べすぎ防止という観点からは、それらにあまり手を出さないようにしたほうが無難です。

欠食をすると、次の食事の際に食べすぎてしまうことが多いものです。また、間食もしてしまいやすくなります。それらのため、結果として摂取カロリーは多くなりがちです。
古くから、健康のためには「腹八分目」が良いといわれてきています。ただ、実際にはいったん食べ始めてしまうと、結局、目の前の料理をすべて食べてしまうことが多いものです。
「腹八分目」を守るために、外食の際や料理を作りすぎた際には、食べ始める前に食べる量を決めておき、食べないと決めた分は皿の片隅に避けたり別の皿に取り分けておき、手を付けないようにすると良いでしょう。
空腹が満たされてもそれを脳が感じ取るまでに、ややタイムラグがあるといわれています。そのため、食べるスピードが速いと、満腹になったと感じたときには既に食べすぎてしまっていることも。よく噛んでゆっくり食べることを心がけると、食べすぎの防止につながります。
テレビやスマホを見ながらの食事など、何かをしながらの食事、いわゆる「ながら食い」では、気が散って満腹感を感じにくくなり、食べる量が多くなるといわれています。
食後の血糖値の上昇を穏やかにする方法として、食事の最初に野菜を食べる「ベジタブルファースト(ベジファースト)」という方法があります。このベジファーストは、糖尿病の方の食事指導で用いられています。ただし、糖尿病ではない人が実践した場合にも、人によっては満腹感が得やすくなって、食べすぎ防止につながるという効果があるのではないかという考え方もあります。
睡眠不足では、食欲を高めるホルモン(グレリン)の分泌が増え、食欲を抑えるホルモン(レプチン)の分泌が減ることが知られています。つまり、睡眠不足も食べすぎになりやすい状態を作る一因といえます。
また、睡眠不足ではカロリーの高いものを選んで食べるような変化も生じることが報告されています。実際、睡眠時間が少ない人ほど体重が増えやすいことが知られています。
ストレスも食べすぎの原因の一つです。場合によっては、食べることがストレス解消になることもありますが、健康のためにはそうではなく、趣味や散歩、ボランティアなど、食べること以外でストレス解消につながる、自分にあった方法を見つけたいものですね。
【プチメモ】本当の食欲とそうではない食欲を見極める
食事の基本的な目的は「栄養素の補給」です。ところが、それほど栄養素は不足していないのに、強い食欲を感じることがあります。
例えばストレスを抱えているときには、精神的な安心感を得ることが目的の摂食(感情的摂食/エモーショナル・イーティング)が起こりがちです。また、ストレスをあまり感じていなくても、食欲が突然に生じてきて、いても立ってもいられなくなったという経験をされた方もいるのではないでしょうか。
エネルギーを大量に消費した(例えば激しい運動をした)わけではないのに、急に何かを口に運びたくなったら、食べる前に一呼吸おいて、その食欲は本当に体が食べ物を欲しているのか、そうではなくて頭が欲しているのではないか(精神的な影響による食欲ではないか)と、考えてみると良いでしょう。
もし後者のパターンだなと思ったら、お茶を飲んだり体を動かしてみたりなど、少し別の行動をしてみると良いかもしれません。すると、例えば「やっぱり次の食事まで待とう」と思えてくるかもしれません。また、手の届きやすい所に菓子などを置いておかないことも対策になります。
なお、体の要求に基づく食欲と、そうではない食欲には、以下のような違いがあるといわれています。
・体の要求に基づく食欲
‐食後に時間がたつにつれて、徐々に高まってくる食欲
‐食べたいと思うものが、一般的な食事のメニュー
‐量を加減して食べられる
・体の要求に基づかない食欲
‐突然のように湧き上がる食欲
‐何か特定のものだけを無性に食べたくなる
‐食べ始めると際限なく食べてしまう
‐食後に罪悪感が生じることがある

1回の食べすぎによってすぐに太るわけではありません。食べすぎた後の体重増加の多くは、体内の水分が増えたことが大きな原因です。食べた直後に太ったと感じたら、それは飲み物の重さや、塩分過多によるむくみ、排泄されていない便などの影響が大きいといえます。
そもそも「太る」とは、過剰なカロリー(エネルギー)が脂肪に置き換わって溜まっていくことです。それは、1回の食べすぎよりも、毎日の少量の食べすぎが蓄積した結果として生じてくるものです。
食べた量にもよりますが、30分から1時間程度は横にならないほうが良いでしょう。食べた直後はまだその大半が胃の中にある状態であり、その状態で横になると、胃の内容物が食道を逆流しやすくなって、胸やけなどの症状が現れやすくなります。
食後の急激な血糖値の上昇を抑えるという点からも、食後すぐに休むのではなく、わずかでも軽い運動をすることが勧められます。

人間は、食べられないときに備えてエネルギーをため込むように進化してきたと考えられています。食べたいだけ食べられるようになったのは、人類の長い歴史から見れば、ほんのごく最近のことです。このような背景から、人間の体にとっては、食べすぎという事態は想定外なのかもしれません。食べすぎで、胃もたれや胸やけなどの不快な症状が現れたり、太ってきたりするのも、想定外の事態の結果といえそうです。このような事態への対策の第一は食べすぎないことですが、それが100%守れるなら誰も苦労しません。長い人生、食べすぎてしまうこともままあるでしょう。そんなときこそ今回お話しした対策を活用してみてください。
食べすぎた後は、すぐに体重が増えたように感じたり、胃もたれやむくみなどの不調が現れたりすることがありますが、その多くは一時的な変化である場合が少なくありません。翌日に無理な食事制限や激しい運動で調整しようとするのではなく、胃腸への負担を減らしながら、徐々に普段の生活リズムに戻すことが大切です。栄養バランスと共に水分補給や消化の良い食事を意識し、体調に応じて無理のない範囲で整えていきましょう。
参考文献
医学書院「目でみるからだのメカニズム 第2版」,2016