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夏を乗り切るための正しい水分補給

夏を乗り切るための正しい水分補給

〈話し手〉 谷口英喜 Hideki Taniguchi
(済生会横浜市東部病院 患者支援センター長、東京医療保健大学大学院 客員教授)

 私たちは仕事の合間にコーヒーやお茶を飲んだり、運動時にスポーツドリンクを飲んだりします。場面に応じて適すると思う水分を選んでいますが、体の状態によって補給するべき水分が違うことをご存じでしょうか? なんとなく体調が悪い人、夏ばてをする人、「最近疲れやすい」と感じている人、熱いお風呂が好きな人、二日酔いの人・・・・・・。実はすべて体が渇いているせいかもしれません。そこで、体調管理に役立つ水分補給や、夏場に起こりやすい脱水症を予防するための水分の選び方を、専門家の谷口英喜先生に教えていただきました。

水分は生きる上で必要不可欠なもの

 私たちの体は固体のように見えますが、実は体重の約60%を水分(体液)が占めています。体液とは、血液や唾液、胃液などの消化液、細胞の中などにある水分で、1日の水分の出入りは2.5Lにもなります。体の水分を維持するためには、普段の生活でも飲み水1.2Lの水分補給が必要です(図1)。
 体液には主に三つのはたらきがあります(表1)。

1日の水分の摂取と排泄(体重70kgの成人男性の場合)

図1 1日の水分の摂取と排泄(体重70kgの成人男性の場合)

出典:環境省熱中症環境保健マニュアル(2014)より

体液の主なはたらき

表1 体液の主なはたらき

●のどが渇くメカニズム ~体液は水分と塩分で成り立っている~

 体液にはナトリウム(塩分)や、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどの電解質が溶けています。臓器や筋肉を動かすには微細な電気が必要で、体が快調に動き、いろいろな臓器が活発にはたらくためには電解質が豊富な体液が必要です。
 浸透圧は電解質や糖質からなり、通常体液の浸透圧はほぼ一定に保たれています。尿、汗などで体重の1%程度の水分が失われるだけでも、血液の浸透圧が高くなり、私たちは自然にのどが渇いたと感じるようになっています。そこで水分を補給すると、体液の浸透圧が一定に保たれ、のどの渇きが和らぎます。

体調が悪い時は、体の渇きを疑う

 汗をかいたり、水分補給が少しでも不足すると、体液が減り体調に変化がみられます。なかでもふらつき、めまい、微熱などの症状が現れると、「脱水症」と呼ばれます。軽度の脱水症の場合は水分補給で回復することが多いのですが、回復しなければすぐに医療機関にかかりましょう(図2)。
 「脱水症」は夏に多いと思われていますが、冬にも起こります。皮膚や呼吸から常に水分が失われていくことは「不感蒸泄ふかんじょうせつ」と呼ばれ、その量は成人では1日約1Lです。冬はエアコンなど暖房器具の使用で屋内の湿度が下がるため、知らないうちに不感蒸泄で体内の水分が不足していることがあります。

脱水症の症状

図2 脱水症の症状

●体液の多いところから水分不足の影響が出やすい

 脱水症の症状をひと言で言えば体調不良です。夏ばてや二日酔いも体の渇きが原因の体調不良であることが多いのです。特に元々水分が多い脳、胃や腸などの消化管、そして筋肉の三つのはたらきが最初に悪くなり、様々な症状がみられます(表2)。
 また持病で薬を飲んでいる人では体液の減少により、薬の吸収や排泄が悪くなるため、薬の効果が強くなったり弱くなったり、また副作用が現れやすくなることがあります。いつもと違う症状や関係なさそうな体調不良でも、体の渇きが影響している可能性があることを覚えておきましょう。

体の渇きと関連する症状

表2 体の渇きと関連する症状

●脱水症を起こしやすいのは?

 体液が体重に占める割合は、年齢とともに変わります。生まれたての赤ちゃんは90%とみずみずしいのですが、小児は70~80%、成人は60%と、成長とともに減ってきます(図3)。
 高齢者になると50%まで減って、のどの渇きを感じるセンサーの働きが低下していて日常的に水分不足のリスクにさらされてます。そのため、失った水分が少しであっても脱水症を起こしやすいのです。
 また、乳幼児は体液の割合は高くても、不感蒸泄量が多く、また尿を濃縮する力が未熟なために尿量が多く、水分不足を起こしやすいのです。のどが渇いたことを伝えることができない乳幼児が、機嫌が悪い時や泣いてばかりいる時は水分不足が原因のことがあるので要注意です。

体の渇きと関連する症状

図3 年齢により変化する体液量

体が渇かないための水分補給

●日常できる生活の工夫

 日頃の水分補給の基本は、まず食べることです。そして、筋肉には水分が多く含まれるため、運動によって筋肉量を増やすことも脱水症の予防に役立ちます。水分を一気にたくさん飲んでも尿として出ていき、体内に貯められません。ある程度貯めることができるのは食べ物に含まれる水分であり、食事をきちんと摂ることが大切です。
 水分を摂取する時の温度は、熱中症などで体が熱い時は冷たい飲料が適していますが、日常では自分の飲みやすい温度で飲んでください。
 のどが渇いたと感じたら、体は渇き始めています。のどが渇く前にこまめに水分を補給しましょう。通常の生活環境では、コップ1杯(180~200mL)を1日8回、補給するのが目安です。
 暑い環境下や運動時は、この後紹介する電解質が含まれた水分が望ましいです。ウオーキングや家庭菜園など軽い運動も同様です。汗が出ていなくても筋肉を動かすと水分が使われ、呼吸や皮膚から出ていくため、水分補給が必要であることを覚えておきましょう。

●体が渇きやすい状況で水分補給に役立つ飲料

 体液は水分と塩分からできているので、真水だけで水分補給すると必要以上に体液が薄まることがあります。水分補給に代表的なのがスポーツドリンクのような飲料です。
 また、それは浸透圧の違いにより、アイソトニック飲料やハイポトニック飲料に分けられ、どのような時に適するか、それぞれの特徴があります。
 状況に応じて、適切な水分補給をしましょう(図4)。

①ハイポトニック飲料

 体液よりも低い濃度の糖分、電解質を含む飲料です。人間の体液と比べて浸透圧が低く、水分の吸収が速いとされています。そのため、運動中や運動後で水分補給が早急に必要な場合には、ハイポトニック飲料が適しているといわれています。

②アイソトニック飲料

 体液と同じ濃度の糖分、電解質を含む飲料です。体液と同じくらいの浸透圧であるアイソトニック飲料では、ゆっくりと水分が体に吸収されます。飲みやすくするために糖分が多く含まれるものがありますが、エネルギーも高くなりますので摂り過ぎには注意しましょう。

③その他(脱水症の時)

 経口補水液(ORS)は、脱水症の治療を簡便に行うべく開発されたものです。
脱水状態時の水分補給に重きを置いた成分設計になっており、ハイポトニック飲料やアイソトニック飲料などよりも電解質の濃度が高い(塩分濃度が高い)などの特徴があります。脱水症状が起こった場合、病院では主に点滴による水分補給が行われますが、点滴より簡便な経口補水液による治療が普及しつつあります。

状況に応じた水分補給の種類、摂取のタイミング

図4 状況に応じた水分補給の種類、摂取のタイミング

 脱水症は、私たちが思っている以上に身近に起こります。体調不良の時はまず「体が渇いているのではないか」と疑うことが大切です。
 日頃から、どのような種類の水分をどのくらい補給するのか、正しいセルフメディケーションを身に付けて夏を乗り切りましょう。

コラム

 混同している人も多いのですが、脱水症と熱中症は違います。暑さが原因で起こる脱水症の一つが熱中症で、脱水症と同様の不調がみられますが、違いは体温が38~40℃くらいまで上昇することです。
 熱中症の対策は、まず暑さを避けること、そして電解質を含んだ水分を十分に補給することです。
 高齢者は暑さを感じる神経が加齢により減少し、暑さを感じにくくなっているため、熱中症のリスクが高くなります。夏には高齢者は暑さを感じなくても、水分を定期的に摂るようにしたほうがよいでしょう。

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