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健やかで美しい肌のために~肌本来のチカラを取り戻す秘訣~

健やかで美しい肌のために~肌本来のチカラを取り戻す秘訣~

〈話し手〉 竹内 かおり Kaori Takeuchi(順天堂大学医学部附属浦安病院皮膚科 助手)

 肌が乾燥する、脂っぽい、しみやしわ・たるみが気になる。ストレスが多く、不規則な生活になりがちな現代社会に生きる私たちにとって、肌の悩みはつきません。美しい肌を保ちたいという想いは、年齢にかかわらず誰もが共通して持つ願望です。
 美しい肌を保つためには、健康な肌が本来持つ「チカラ」を十分に機能させることが重要です。
 その秘訣を、竹内かおり先生にお聞きしました。

健康な肌が本来持つチカラ

 健康な肌では、角質層の細胞が規則正しくレンガ状に積み上がっています。このような状態の時は、物理的に身体の内部を保護する、栄養や水分の代謝や調節をする、体温を維持する、異物・微生物の侵入や紫外線からのダメージを防御するなどの機能が十分に発揮できており、保湿がしっかりされていて、美しく見えます。
皮膚は、上から表皮、真皮、皮下組織の層状構造をしています(図1)。

肌(皮膚)の構造と役割

図1 肌(皮膚)の構造と役割

 表皮はさらに角質層、顆粒層、有きょく層、基底層の4層に分かれています。一番外側を覆う角質層は、1μmほどの扁平な角化細胞が10〜20層連なっています。角質層は水分を保持して肌にうるおいを保ち、皮膚から水分の蒸発を防ぎ外部の刺激から皮膚を守るバリア機能を果たしています。
 表皮の細胞は絶えず入れ替わっており、一番下にある基底層で生まれた細胞は形をかえながら有棘層、顆粒層、角質層と順番に肌の表面へ押し上げられていき、最終的に表面から剥がれ落ちます(図2)。この過程がターンオーバーです。ターンオーバーの時間は、一般に基底層から角質層までが14日間、角質層で機能して剥がれ落ちるまでに14日間、合計28日間といわれています。

表皮の細胞は絶えず入れ替わっている(ターンオーバー)

図2 表皮の細胞は絶えず入れ替わっている(ターンオーバー)

 肌の構造が乱れると水分が蒸発し、乾燥しやすくなりますので、保水機能を維持するため角質層が厚くなっていき、健康な肌本来のチカラが保てなくなり美しさも損なわれます。
 肌の構造の乱れは、日常生活における様々なことが要因となりますので、ライフスタイルにより個人差としてあらわれます。したがって、日常生活を工夫することで、健康な肌本来の美しくて機能的な状態を保つことができます。

健やかで美しい肌になるために

 健やかで美しい肌になるためには、食事、睡眠、運動や紫外線対策など基本的なことが重要となります。

(1)栄養バランスのとれた食事

 皮膚の構造や機能を支えているのは、材料となるたんぱく質、脂質の他、機能維持や代謝に関わるビタミン、ミネラルなどの栄養素です。そのため栄養バランスのとれた食事は欠かせません。
中でも微量栄養素であるビタミンは不足しやすく、不足した場合には疲れを感じやすくなったり、肌のハリが失われたり、肌あれ、にきび等の肌症状があらわれやすくなります。
 コラーゲンの生成に不可欠なビタミンCの不足は、肌のハリが失われる原因に、脂質やアミノ酸の代謝に関わるビタミンB2、B6、ビオチンなどのビタミンB群の不足は肌あれ、にきびの原因になります。これらは食事から摂取するのが基本ですが、足りないと感じる方はさらに意識して摂取するとよいでしょう。

(2)良質な睡眠

 人は、睡眠時に成長ホルモンを分泌して、身体の修復や新陳代謝を促し、皮膚の細胞の分裂や新生などを行います(図3)。成長ホルモンは入眠直後の深いノンレム睡眠の際に分泌されますので、良質な睡眠は健康な肌を保つ上でとても重要です。良質な睡眠には自律神経と睡眠のリズムを整えるメラトニンというホルモンが関与します。入眠を妨げることなく良質な睡眠をとるために、就寝前にはカフェインなどの刺激物やスマートフォンなどのブルーライトを避けてリラックスして過ごし、起床後は日光を浴びて1日のリズムを整えましょう。

*メラトニンは朝日を浴びることで分泌する時間が調整されます。

表皮の細胞は絶えず入れ替わっている(ターンオーバー)

図3 睡眠と成長ホルモン

(3)定期的な運動で血行を促進

 適度な運動は全身の血行を促進して新陳代謝を促しますので、健康な肌を保つ上で重要です。運動不足の方は、軽いストレッチやウォーキングなどでよいので、定期的に身体を動かしましょう。血流をよくすることで、栄養素を身体の隅々まで届けやすくなります。

(4)年間を通じて紫外線のケア

 紫外線を浴びると、表皮の基底層にあるメラノサイトを刺激してメラニンがつくられ、肌は黒くみえます。通常は肌のターンオーバーにより元の肌色に戻りますが、皮膚細胞のDNAに傷がつくとメラノサイトは活性化したままになり、しみになります。さらに、紫外線は真皮のコラーゲンにもダメージを与え、しわ・たるみを生じやすくします。
 紫外線を防御するために、外出する際は季節やシーンに応じ、UVカット効果のある乳液や日焼け止めなどを使用することが大切です。

(5)刺激の少ない洗顔と直後のスキンケア

 洗顔する際には、ゴシゴシこすって皮膚に刺激を与え過ぎないようにします。お湯の温度は、熱すぎると角質層にあるセラミドなどの細胞間脂質が落ちて水分が蒸発するため、ぬるま湯が適しています。乾燥肌でお悩みの方は、朝は洗顔料を使わずぬるま湯だけでやさしく洗顔するだけで十分な場合もあります。また、入浴の際に身体をナイロンタオルでこする方がいますが、長期に使用すると皮膚に炎症が起きて黒ずむことがあるので注意が必要です。
 洗顔後は、アミノ酸やセラミドなどを配合した化粧品で自分のお肌に適したスキンケアを行います。特に、冬場の環境は乾燥しがちであり、肌の水分量も自然に減少していることから洗顔後は直ちにスキンケアすることが大切です。

(6)禁煙

 喫煙は、大量の活性酸素を発生させて細胞を傷つけ、肌に対して刺激となります。刺激を避けることは肌の健康につながるため、禁煙をおすすめします。

 健やかで美しい肌を手に入れるためには、当たり前に行われるべき基本の生活習慣が重要であることがおわかりいただけたでしょうか。また、多忙でスキンケアに時間が割けない現代社会だからこそ、基本を大切にしたいものです。自分の生活習慣を振り返り、十分でないものがあるか、余分なことをしていないかを考え直してみましょう。十分な栄養、睡眠、肌に対する刺激を避けるなど基本的なことで、肌本来の「チカラ」が発揮され、美しい肌を手に入れることができます。

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