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排卵日予測検査薬で、何がわかるの?

排卵日予測検査薬で、何がわかるの?

〈話し手〉 石原 理 Osamu Ishihara(埼玉医科大学病院婦人科・生殖医療担当診療部長/
黄体形成ホルモンに関わる一般用検査薬ガイドライン専門協議委員)

 女性の高学歴化や社会進出など、さまざまな事情によって晩産化が進み、妊娠・出産を取り巻く状況も変化してきました。そのような背景から2016年12月より、これまで調剤薬局でしか購入できなかった排卵日予測検査薬がOTCとして発売されるようになりました。排卵や妊娠のしくみ、排卵日予測検査薬の適正使用について生殖医療の専門家・石原理先生に教えていただきました。

妊娠・出産の正しい知識を

 最近は、著名人の35歳以上のいわゆる高齢出産の話題も珍しくなくなりました。妊娠・出産に対するニュースの取り上げ方や風潮が変化し、いつでもすぐに妊娠できるというイメージが先行しているように思います。さまざまな理由で、妊娠分娩の時期を遅らせる場合があると思いますが、年齢を重ねるにつれ妊娠しにくくなり、出産のリスクも高まります。そもそも出産年齢に関わらず、新しい命の誕生は現代でも奇跡といえます*。
 女性には、若いうちから妊娠・出産に関わる排卵のメカニズムや月経周期などの正しい知識を持っていただき、将来的に妊娠を望むような方は、自分の健康状態を把握しておくことで、ライフイベントに役立てて欲しいと思います。

*高齢ではない女性でも1周期の妊娠率は約20%といわれる。

妊娠が成立するためのプロセス

 妊娠が成立するまでにはいくつかのプロセスがありますが、ポイントとなるのが排卵です(図1)。一般的に月経周期が28日の場合は月経開始日から数えておおよそ14日目に排卵が起こりますが、月経周期がほぼ安定している人でも体調の影響などで必ずしも決まった間隔で起こるわけではありません。排卵された卵子が受精できる時間は限られているため、妊娠の確率を高めるために排卵時期を予測することが役立ちます。また、妊娠には排卵と性交渉のタイミングだけでなく、卵管や子宮の状態などいろいろなことが関わっています。

妊娠までのプロセス

図1 妊娠までのプロセス

(石原理先生ご監修)

排卵時期は、わからない!?

 排卵がいつ起きるのかがわかればよいのですが、実は現代の医療技術でも正確なタイミングはわかりません。そこで、いくつかの指標を使って確認します。

①基礎体温を継続して記録する

 排卵後に黄体ホルモンの分泌により体温が上昇することが多いため排卵時期の予測にはなりませんが、「排卵があったこと」がわかります。
 毎朝、起床時に専用の体温計で基礎体温を測ります。正常であれば低温と高温の2相性がみられます(図2)。排卵が定期的に起こっているかどうか、排卵までの日数が遅れていないかなど、自分の状態を把握することができるため、基礎体温の記録は女性のコンディション管理の基本といえます。毎日の記録は面倒に思われるかも知れませんが、変化がわかれば医療機関へかかる際の参考にもなるため、まずは記録をつけてみましょう。

②排卵日予測検査薬で検査する

 基礎体温の「排卵があった」ことに対して、「これから排卵がある」ことがわかるのが、排卵日予測検査薬です。
 女性の体の中では、ホルモンの分泌量が周期的に変化しています(図2)。排卵が近づくと下垂体から分泌される黄体形成ホルモン(LH)が急激に増えて、高いピーク(LHサージ)となります。このLHサージから約40時間以内に排卵することがわかっていますので、LHサージを検査で確認することによって排卵の時期を予測できます。
 LHは尿中で測定することができ、月経周期から検査開始時期を設定して検査し、検査結果が陽性になれば排卵がもうすぐ起こると予測できます。
 尿を使って簡単かつ安全に検査できますし、医療機関にかからなくても薬局・ドラッグストアで購入できることもメリットです。

③超音波卵胞計測(医療機関のみ)

 前述の①と②はセルフチェックで行えるのに対し、医療機関で行われるのが超音波卵胞計測です。卵巣にある卵胞が18〜20mmくらいに大きくなると排卵することがわかっていますので、専用の器具を膣から入れて、卵胞のサイズ、頸管粘液(おりもの)、子宮内膜の厚さなどを観察して排卵時期を推定します。

一般的な月経周期とホルモンの変化

図2 一般的な月経周期とホルモンの変化

(石原理先生ご監修)

医療機関の受診が必要なケース

 妊娠が成立するかしないかは、排卵のタイミングだけの問題ではないことを覚えておいてください。妊娠(受精)が成立しない原因には卵管の通りが悪い、子宮内膜症がある、精子の数が少ないなど、原因が一つではなく、いくつもの要素が少しずつ悪く重なっていることも多いのです。排卵日予測検査薬を使用しても6カ月間妊娠しない場合は受診したほうがよいでしょう。35歳以上の女性の場合は、年齢を重ねるにつれて妊娠の可能性は低くなっていきますので、早めに医療機関を受診することをお勧めします。また、女性側だけでなく男性側にも原因がある場合も多く、精液検査を受けて精子の状態を確認する必要があるかもしれません。医療機関での検査の代わりにはなりませんが、スマートフォンを使って精液の動画を撮ると精子の状態を知ることができるアプリも開発されているそうです。
 また月経不順や、月経痛が著しく強いといった症状、子宮内膜症や子宮筋腫と診断されている人の場合は不妊症と関係する可能性がありますので、一定期間妊娠しないという不妊症の定義を条件とせず早めに相談してください。妊娠を望む時期が将来的な場合でも、月経に関することで気になることがある人は一度受診してみましょう(図3)。

妊娠までのプロセス

図3 不妊になりやすい女性の症状のセルフチェック

(石原理先生ご監修)

排卵日予測検査薬は、どこで買える?

 排卵日予測検査薬は2016年12月より薬局・ドラッグストアで購入できるようになりました。これにより排卵に対して興味を持っていただき、妊娠を望む方の後押しになることが期待されます。
 いずれの製品にも、詳細な説明書が添付されているはずですので、検査を始める時期や使い方(検査の手順、検査結果が出るまでの待ち時間など)、判定方法および注意点などをよく理解してご使用になることが大切です。
 また、判定方法が商品によって異なり、ラインの本数で判定するタイプのもの、色の濃淡で判定するタイプのものなどがありますので、自分が使いたいと思うものを選びましょう。基準と色の濃さを見比べるもの、マークの有無で判定するものなどがあります。
 また排卵日予測に限らず血圧や体重など、自分の体への関心を深めることは生涯を通しての健康の維持に役立ちます。排卵日予測検査薬を使ったセルフチェックが、健康管理を始めるきっかけになることを願っています。

コラム

●晩産化が進行中

 日本の2014年の出生数は100万3,539人で、前年より2万人以上減っており、緩やかな減少傾向が続いています。出生数の減少には晩婚や高齢出産も影響しており、2014年の平均結婚年齢(初婚)をみると男性31.1歳(対前年比0.2歳上昇)、女性29.4歳(対前年比0.1歳上昇)と、やはり晩婚化が進行中であることがわかります。

 結婚が遅くなると出産も遅くなり、2014年の出産時の平均年齢は第1子 30.6 歳、第2子 32.4 歳、第3子 33.4歳と、第1子の出産でも30代です。過去と比較すると第1子出生時の平均年齢は1980年26.4歳、1990年27.0歳、2000年28.0歳と上がってきました。この10年間で35歳以上の出産が倍増し、40歳以上の出産も増えています。晩産化は日本だけではなく世界共通の流れであり、初産年齢はまだまだ上がると予想されています。

※参考資料:平成28年版少子化社会対策白書
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2016/28pdfgaiyoh/pdf/s1-1.pdf

●不妊(症)の定義

 「不妊」とは、避妊をしていないにもかかわらず一定期間を過ぎても妊娠しないことです。WHO(世界保健機関)では不妊症の定義を「妊娠しない期間を1年間以上」としており、日本では、2015年8月に日本産科婦人科学会が、それまで2年だった期間を1年と改めました。年齢が高くなるにつれ妊娠しにくくなりますし、不妊治療にかけられる時間が少なくなるため、より早く不妊の検査と治療を開始することが一般的になってきています。
 実際、不妊治療を受ける人、保険が適用されない人工授精や体外受精を行う人も増えています。厚生労働省は、不妊に悩む人を支援しようと平成8年度に「不妊専門相談センター事業」を始めました。平成16年度には、不妊に悩む人の経済的負担の軽減を図るために高額な特定不妊治療(体外受精および顕微授精)の治療費の一部を助成する「不妊に悩む方への特定治療支援事業」も始まり、助成件数は平成16年度で約1万8,000件でしたが平成24年度には約13万5,000件と急増しています。平成28年4月からは助成対象年齢が43歳までに制限されるようになりましたが、この変更が、多くの方が早めに検査や治療を開始するきっかけとなれば良いと思います。

不妊(症)の定義

 生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない場合を不妊という。その一定期間については1年というのが一般的である。なお、妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わない。

日本産科婦人科学会

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