監修
宇井 千穂 先生 (やさしい美容皮膚科・皮フ科 秋葉原院/東京浅草院 総院長)

美しい白と書く「美白」。美白には明確な定義があるわけではありませんが、肌や歯の美しさを表現するときに使われることが多い言葉です。その意味するところを肌で考えた場合、皮膚の色合いよりもむしろ、しみやくすみのない、透明感や清潔感のある健康的な皮膚を指すことが多いようです。また、「白」という漢字も単に色を指すのではなく、清潔や純粋、無垢といった意味を併せ持っています。
美白を目指す方法を知る前に、まずは肌の美しさが損なわれてしまう原因を知っておきましょう。
美白とは反対に、肌の色が濃くなるという変化の原因として、最も身近な現象は「日焼け」です。この日焼けという現象は細かく見ると、紫外線によるやけどや炎症により皮膚が赤くなる「サンバーン」と、その後に少し時間をおいて、紫外線から皮膚を守るためにメラニンという色素の産生が増えて皮膚の色が濃くなる「サンタン」という、二種類に分けられます。

紫外線から体を守るメラニンが皮膚に溜まると、しみやそばかすになります。また、紫外線の他に、摩擦による刺激、例えば適切でないスキンケアなどでも、メラニンが作り出されます。
このような原因から皮膚に溜まったメラニンは、皮膚の細胞のターンオーバー(新陳代謝)により少しずつ減っていきます。しかし、ターンオーバーは、加齢とともに周期が長くなっていきます。そのため、歳とともにメラニンの蓄積が減りにくくなり、しみやそばかすが新たにできやすくなったり、すでにあるしみ・そばかすの色が濃くなったりしていきます。
なお、しみ・そばかすのその他の原因として、乾燥やストレス、大気汚染、女性ホルモンなどとの関連も示されています。
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くすみの主な原因は二つあり、一つは肌の色そのものが変化している場合、そしてもう一つは光の反射が変化してくすんだように見えている場合です。このうち後者は、肌の乾燥などによって、皮膚表面のきめ細やかさが失われているときに起こりやすくなります。
一方、前者のように、肌の色自体が変化してしまう原因としては、以下の二つが挙げられます。
血行が良くないと、肌の色がくすんでしまいやすくなります。血行不良の原因はさまざまなものが考えられますが、特に女性では、冷えやこりに伴って起こることが多いようです。また、腎臓や肝臓などの内臓の働きの低下も、血行不良につながります。
体内の余分な糖がたんぱく質や脂質と結合して変化する現象を「糖化」といいます。この糖化が進むと、最終的に「終末糖化産物(AGE)」と呼ばれる物質が作られます。AGEは、医学的に心臓病や脳卒中のリスク因子として知られていますが、美容面ではくすみの一因と位置づけられています。
貧血の一つの症状として、顔色が悪くなることがあります。
貧血とは、血流に乗って酸素を全身に送り届ける役割を担う赤血球中の「ヘモグロビン」の量が少ない状態です。このヘモグロビンは、食事から得る鉄を基に作られています。女性は月経のために貧血気味の人が多いものですが、それだけではなく、適切でない食生活(過度なダイエットなど)が、貧血をより悪化させてしまっていることも少なくないようです。
皮膚の加齢現象の一つとして、シワやたるみなどとともに、乾燥しやすくなるという変化も挙げられます。
皮膚が乾燥すると、ハリが失われて暗い印象の肌になりがちです。また、「くすみ」の原因の項でも示したように、乾燥にともない皮膚の細やかさが失われる影響で光の反射が変化することも、見た目の印象に影響します。

睡眠不足も肌の色が暗く見える原因の一つとして挙げられます。
良質で十分な睡眠によって、細胞が日中に受けたダメージが日々修復されています。そのため睡眠が不足していると、皮膚の細胞のダメージ修復が遅れてしまうと考えられます。
良質な睡眠を取るためには、照明や騒音はなるべく減らす、室温や湿度を調整する、就寝の少し前に入浴してその後はスマホやパソコンの操作をしないといった、一般的な習慣を守るとともに、睡眠の質を改善するように働く医薬部外品などの活用も一手となります。
届出表示:本品にはユーグレナグラシリス由来パラミロン(β-1, 3-グルカンとして)を含みます。ユーグレナグラシリス由来パラミロン(β-1, 3-グルカンとして)には、睡眠の質(眠りの深さ、すっきりとした目覚め)を改善し、起床時の疲労感を軽減する機能、作業時の一時的なストレス(イライラ感、緊張感)を緩和する機能が報告されています。

ここまで、美白を妨げる主な原因を解説してきました。ここからは、その対策について解説していきます。まずは、体の外側からのアプローチについてです。
美白の最大の敵は、日焼けとその原因である紫外線です。紫外線に当たることでメラニンが産生されたり、活性酸素という反応性が高くて細胞を傷つけやすい酸素が発生したりしてしまいます。
日焼け防止のために、日差しの強い夏はもちろんのこと、四季を通じて天候にかかわらず日焼け止めを塗り、日傘を使ったほうが良いでしょう。
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日焼け対策と並ぶ、二つ目の重要な対策は保湿です。加齢や栄養不足、適切でないメイクなどによって、肌の保湿機能が低下してしまうことがあります。そうなると、肌が乾燥してかさつき、くすみなどが現れやすくなります。
対策法としては、洗顔後に化粧水を塗ったり加湿器を使ったりして保湿することで、肌のバリア機能が整い、水分が蒸発しにくい状態になります。
美白を目指すための三つ目の対策は化粧品です。特に医薬部外品の「薬用化粧品」に分類されているものは、メラニンの産生を抑制してしみやそばかすを防ぐ効能・効果が認められているものもあります。さまざまな種類の薬用化粧品があるので、薬局・ドラッグストアなどで登録販売者に相談するなどして、自分に合ったものを選択をしましょう。
なお、美白のための薬用化粧品に使われている成分の中には、肌の状態を整えることで、しみやそばかすが目立ちにくい印象につながるものもあります。そのような製品は、基本的には予防を目的として日常的に取り入れることが推奨されます。
ここでは、美白を目指すための薬用化粧品に使われている代表的な成分をいくつか取り上げて解説します。
トラネキサム酸は、しみの元となるメラニンを作る細胞である「メラノサイト」の働きを抑えるように作用する成分です。また、既にしみができている皮膚では内部で弱い炎症が続いていて、メラニンが過剰に作られていますが、トラネキサム酸は炎症を抑えるように働いて、そのような過剰なメラニンの産生を抑制するようにも働きます。
ナイアシンアミドは、ビタミンB群の一つであるナイアシン(ビタミンB3)の一種で、皮膚のバリア機能を整えたり、炎症を抑えたりします。さらに、メラノサイトで産生されたメラニンが、皮膚の最も外側の層である表皮に受け渡される過程を抑制する働きがあります。
ビタミンCは、メラノサイトでのメラニン産生にかかわる酵素の働きを抑えます。また、メラニンの酸化反応を抑えて還元するようにも働き、美白を妨げるメラニンを抑制する作用を持つビタミンと言えます。その他、肌のハリやみずみずしさを保つために必要なコラーゲンの合成にもビタミンCが関係していて、この点はシワを防ぐ働きにつながります。
なお、ビタミンCそのものは性質上やや不安定であるため、化粧品では安定性や使用感を高めた「ビタミンC誘導体」が用いられることがあります。

美白を目指すための体の外側からのアプローチとして、主にスキンケアについて解説してきました。ここからは、体の内側からのアプローチについて解説していきます。
体の内側からのアプローチの方法とは、端的に言えば「何を食べるか」ということです。ヒトの体は、食べたものに含まれている栄養素を消化吸収して全身に送り届け、必要な成分に作り替えることで成り立っているからです。
特に皮膚は常に外界との接触によってダメージを受けているため、その修復に多くの栄養素を必要としています。栄養素が不足すると、まず最初に皮膚に影響が現れることも少なくないと言われています。
ここでは、美白を目指すために、肌を健やかに保つ上で重要な栄養素を、いくつか絞り込んで解説します。
スキンケアの項目でも取り上げたビタミンCは、食べ物の栄養素として摂取して、体の内側から働きかけることも期待できます。
例えば、コラーゲンの合成を助けたり、酸化を防いだりといった、皮膚も含めて全身の健康に欠かせない作用を持っています。また、紫外線を受けたときにメラニンが産生される過程で働く「チロシナーゼ」という酵素の働きも抑制してくれます。この働きは、しみやそばかすの緩和につながります。
ビタミンCが多く含まれている食品として、キウイフルーツ、レモン、かき、いちごなどの果物や、ピーマン、芽キャベツ、ブロッコリー、じゃがいもなどの野菜が挙げられます。なお、ビタミンCは水に溶けやすい「水溶性ビタミン」です。調理する際は茹でたりするのではなく、電子レンジを使ったり、煮汁をスープなどに生かしたりすると良いでしょう。
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ビタミンEには抗酸化作用があり、紫外線などの刺激により酸化してしまいがちな皮膚の細胞を保護するように働きます。また、毛細血管を拡張して血液循環に関与したり、細胞膜などの膜組織を保護したりする働きもあって、これらも皮膚の健康に役立つと考えられます。ビタミンEの抗酸化作用は、上述のビタミンCと一緒に摂取した場合に、協力して働くと言われています。
ビタミンEは植物油に多く含まれている他、アーモンドなどの種子類も多く含む食品です。その他、魚介類ではうなぎやサケ、野菜ではモロヘイヤなどが、ビタミンEの豊富な食品として挙げられます。なお、ビタミンEは水に溶けにくく油との相性が良い「脂溶性ビタミン」のため、油で炒めたりすることで効率良く摂取できると考えられます。
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リコピンは、トマトの赤色の成分で、カロテノイド(色素成分)の一種です。強力な抗酸化作用をもつことが知られていて、その作用の強さはビタミンEの100倍とも言われます。
また、紫外線を受けるとリコピンが大量に消費されるのですが、それが紫外線からの防御にかかわっていると考えられています。これらの他にも、メラニン産生の抑制、コラーゲン産生の促進、皮膚の角質の改善といった作用があると報告されています。
リコピンはトマトに多量に含まれる以外に、スイカやピンクグレープフルーツ、あんずなどにも含まれています。
前述のように、ビタミンCは抗酸化作用やコラーゲンの合成の促進など、肌を健やかに保つために大切な作用を持っていますが、調理の際に失われてしまいやすいという特性があります。特にダイエット中の若い女性や食欲が低下しがちな高齢の方は、ビタミンCの摂取量が少ない傾向があります。高齢者では、消化管からの吸収低下のために、しっかり食べていても血液中のビタミンC濃度が低いという報告もみられます。
このようなときは、ビタミンCを含有している医薬品を利用するのも一つの手段となり得ます。ビタミンC含有医薬品の中には、肌の健康に良いビタミンE、あるいは代謝を高めるビタミンB群も配合したもの、効能・効果としてしみやそばかす、日焼けなどによる色素沈着の緩和が明示されているものなどがあります。登録販売者に相談して、自分に合ったものを選んで使いましょう。
食事とともに「運動」も肌の健康維持に必要なポイントです。適度な運動による血行や代謝の改善を通して、肌に良い影響を期待できます。
運動は、有酸素運動と筋力トレーニングに大別できます。前者は心肺機能の向上、後者は筋肉量や筋力の向上につながり、両者ともに代謝の改善につながります。また、筋肉からは「マイオカイン」というサイトカイン(生理活性物質)が分泌されていて、このマイオカインが炎症を抑えたり、細胞の老化を抑制したりするように働いてくれることもわかっています。
具体的な運動のメニューとしては、有酸素運動の場合、ウォーキングやジョギング、サイクリングなど、筋トレの場合、自宅で自重(体重)を負荷にしてできる運動、例えばストレッチや腕立て伏せなどが良いでしょう。これらはいずれも、コストをかけず、一人で続けることができます。
美白ケアはいつ始めたとしても、始めるのが遅いということはないでしょう。
女性は初潮を迎えるころからホルモンの分泌が盛んになり、さまざまな変化が現れてきます。皮膚では皮脂腺が発達することで、皮脂の分泌が活発になるといった変化が生じてきます。やがて体の成長が止まり、ホルモンの分泌が安定してくるころから、加齢現象の中心が「発育・発達」から「老化」へとシフトしてきます。そのため、理想としてはなるべく早く、例えば20代のうちに美白ケアを始めた方が良いという考え方もあります。
一度美白ケアを始めたら、紫外線量が増える時期だけでなく、季節を問わずに続けることが大切です。何歳になっても、日々のスキンケアと紫外線対策、規則正しい生活習慣が、美白ケアの基本です。
しみやくすみの原因は紫外線によるダメージだけではなく、乾燥や貧血、皮膚のターンオーバーの乱れなど、さまざまな要素が影響しています。紫外線対策が重要なことは間違いないですが、これらの多くの要因に対応して、日々のスキンケアや生活習慣の維持・改善が必要とされます。
しみやくすみに悩んでいるときの対策として、しみ改善の有効成分を配合した薬用化粧品を使うことも、現実的な選択と言えるでしょう。
肌の乾燥が美白の妨げとなることは既に解説したとおりです。乾燥を防ぐためには、スキンケアをする際に肌をこすりすぎないことと、自分の肌に合わないスキンケア製品の使用を避けることが大切です。
スキンケアをしていてもその方法が適切でなかったり、自分の肌に合っていないと、肌への刺激により乾燥しやすくなってしまったり、メラニンの産生が増えたりする可能性があります。美白を目指すためには、自分に合ったスキンケア方法や製品を検討しましょう。
また、美白ケアの基本となる日焼け対策を気にしすぎて、日光を浴びる時間が減ってしまうと、カルシウムやリンの吸収を促進したり、骨や歯の形成に役立つビタミンDが不足してしまうことがあるため、注意しましょう。

シミができるのは、もともとは紫外線から皮膚を守ろうとしてメラニン色素を作るという、体の防御反応によるものです。しかし、その結果としてシミができてしまっては、紫外線からの影響は抑えられても美白は妨げられてしまいます。そのため、肌の健康と美白を同時に目指すためには、外側と内側のケアの両方でバランスを取る方法がおすすめです。
規則正しい食生活と適切な栄養素の摂取、そして運動による血流改善などを介して、皮膚に好ましい影響を与えることが期待できます。医薬品も同様に、皮膚に直接アプローチする外用薬と、体の中からアプローチする内服薬があります。
今回解説したことを、ぜひ肌の美白ケアに生かしてみてください。
美白ケアにおいて重要なのは、日焼け対策や保湿などの「外側からのケア」と、食事や睡眠といった「内側からのインナーケア」を両立させることです。外側からのケアでメラニンの生成や蓄積を抑えつつ、内側から肌のターンオーバー(生まれ変わり)をサポートすることで、肌本来の健やかな状態を保ちやすくなります。
どちらか一方に偏るのではなく、体の内外から継続的にアプローチすることが、透明感のある明るい肌への近道と言えるでしょう。
参考文献
南江堂2006「美白戦略 : しみ・くすみを消し、美しく白い肌をめざす」
南山堂2021「美容のヒフ科学 改訂10版」
高橋書店2021.3「正しい知識がわかる美肌事典」
高橋書店2012.3「正しいエイジングケア事典 : 一生ものの美肌をつくる : 「しくみ」から丁寧にわかる、基礎知識完全バイブル」
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