アズキ
マメ科(生薬名:赤小豆) Vigna angularis Ohwi et H.Ohashi (Fabaceae)
本種については、野生型が発見されていないものの中国、韓国、日本で広く栽培されていることから、中国を中心とした東アジアが原産地と推測されている。草丈30~60cmの一年生草本で、葉は長柄のある3小葉からなっている。夏に開花する黄色の蝶形花は、虫媒花としてハチなどが容易に受粉できるような独特の形状をしており、豆果(果実)は円柱形で中に10個前後の種子があり9月下旬に熟する。種子の形状が似通った同属のササゲ(V. unguiculata)はアフリカが、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)は中南米がそれぞれ原産となっている。
多くの品種が存在し、栽培上は夏型アズキ、秋型アズキおよび中間型アズキの3型に分けられる。夏型アズキは春に霜の害がみられない時期に種子を播くもので北日本に多い。一方、秋型アズキは夏に播くことから、秋の長い暖かい地方で栽培される。日本各地で栽培されるが、とりわけ北海道はその主産地として有名である。アズキの中で、特に大粒の品種群を「大納言」と称する。
完熟種子を「赤小豆」と称し、神農本草経の中品に収載されており、消炎、利尿、解毒、排膿などの目的で用いられる。宋代の『済生方』には水腫を治す「赤小豆湯」に配合される。また、小豆にはビタミンB1が含まれており、江戸時代には脚気の薬とされていた。味は甘酸っぱく、薬性は平で、餅や甘納豆、饅頭などの原料として主に食用に供される。成分としては、フラボン配糖体のロビニン(robinin)のほか、パルミチン酸(palmitic acid)、ステアリン酸(stearic acid)、アラキドン酸(arachidic acid)などがある。その他、外皮にはアズキサポニンや赤色色素のアントシアニンなどが含まれる。
本種は日本の農耕文化が始まった頃から栽培された作物と考えられ、日本人の生活に深く溶け込んでおり、特に日本人に好まれる豆として世界的に特異な存在である。食用としては、汁粉、赤飯、羊羹、饅頭、おはぎ、餅、甘納豆などが知られている。赤飯のルーツは赤米であり、古い時代に伝来され主食となり、神に供え、祝い事に用いられていた。
その後、白米が生産の主流となる江戸時代には、白米に小豆で色付けしたものを、赤米の代用としたのが今日の小豆を用いた赤飯と考えられる。また、小豆粥を食べる風習は全国各地で見られ、特に正月15日に食する風習がある。これは小豆の解毒作用を期待して、無病息災を祈願する行事として行われている。
解説:尾崎 和男(京都薬用植物園) 撮影場所:京都薬用植物園