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カンサイタンポポ

キク科(生薬名:蒲公英ホコウエイ) Taraxacum japonicum Koidz(Asteraceae)

カンサイタンポポ
カンサイタンポポ

 本種は近畿以西から北九州に分布する多年草で、根はゴボウの形状に似ており、羽状に切れ込んだ葉を地面に展開する根出葉(ロゼット)の形態で生育する。黄色の頭花は3~5月頃に直径3cmほどの大きさで早朝に開花して夕方閉じる。果実は紡錘形で白色の長い冠毛カンモウがあり、パラシュート形の瘦果ソウカが風によって運ばれる。和名の語源については諸説あり、果実の冠毛が綿を丸めた「タンポ」に似ているからといわれる。また民俗学者の柳田国男は『野草雑記ヤソウザッキ』(1940 年)に「タンはツヅミの音、ポポはその共鳴で、もともと鼓を指す幼児語であった」と述べている。花の形が鼓に似ていることから転用されたものらしい。
 全草を乾燥したものを生薬「蒲公英ホコウエイ」と称し、味は苦・甘く、薬性は寒で、健胃、利尿、解熱、解毒、消炎、催乳などを目的に用いられる。漢方処方としては、江戸時代の漢方書『方輿輗ホウヨゲイ』に記載され、産科の奥劣斎オクレッサイによって考案された蒲公英湯(蒲公英、当帰トウキ香附子コウブシ牡丹皮ボタンピ山薬サンヤク)があり、出産後の基本処方の一つとして母乳の出を良くする目的などで用いられる。成分としては、全草に苦味質のタラクサステロール(taraxasterol )、タラクサシン(taraxacin)などが含まれる。
 タンポポの仲間は花の外側にある葉(総苞片ソウホウヘン)の形で在来種と帰化種を判別する。在来種は本種を含め白花、黄花合わせて20種ほどで、いずれの総苞片も反り返らないのが特徴である。また、在来種の大半は別の株の花粉を虫に運んでもらわないと結実しない有性生殖をする二倍体で、関東から北九州まで広く分布する。それらの種子は高温により発芽が抑制され、一定期間休眠した後、自然条件下では9月下旬~10月上旬に発芽する。その後、光条件の良い秋から春にかけて生育し、他の草に被われる夏は葉を枯らして休眠する。
 一方、花を裏返して基部の総苞片がくるりと反り返っていれば帰化種のセイヨウタンポポ(T.officinale)または小型で実が赤いアカミタンポポ(T.laevigatum)である。帰化種は受精を経ずにそのまま遺伝的に同一な「クローン」種子を結実する。すなわち、「無融合生殖」によって無性的に種子をつくる特殊な増殖能力を持っている。帰化種の種子は在来種に比較して軽くて飛び易く、季節を問わず発芽し、成長が早いことから裸地での生育に適した性質を備えているため、全国的な広がりを見せている。なお、近年は在来種と帰化種の雑種が次々と見出されている。セイヨウタンポポはサラダ菜として食用されている。また、刻んだ根を炒めたものはカフェインを含まないコーヒーの代用品として飲用されている。

解説:尾崎 和男(京都薬用植物園) 撮影場所:京都薬用植物園

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